「久しぶりだねぇ」 ひよりが感慨深そうにつぶやく。さっきまでわたしと一緒に震えてたくせに。 空港へと降り立ち、入国ゲートを通り過ぎるとそこはアメリカ。 かつてわたし達家族が住んでいた第二の故郷だ。 エアガンの弾をキャッチするという神業動画をアップしてすぐにアメリカのテレビ番組から五代さんに出演オファーがあった。 それから一か月、交渉のまとまったわたしは仕込みやロケハンの必要性もあってオンエアーのひと月前に現地へとやってきた。「国によって空気の匂いが違うって言うけど、ほんとアメリカって感じだね」 わたしも若干フラフラしているけど、なんとか元気を取り戻してひよりの隣に立つ。 後ろでは三人の姉が何やらヒソヒソ話をしているけれど。「飛行機で怯えるゆきちゃん、愛らしかったですね」「ほんと、抱きしめたくなったよな」「癒し」 そろそろそのことは忘れて欲しいんだけど。 想像していたようにいじられはしなかったものの、ひより以外は過剰なほどに心配してあれやこれやと世話を焼いてくれた。 嬉しいけど、恥ずかしいんだよね。嘔吐袋をもらったけど、意地でも使わなかったよ。 会話に参加すると巻き込まれて話が膨らむことは経験則で知っているので聞こえないフリ。 ひよりと並んでアメリカ特有の甘ったるい匂いと揚げ物の匂いが混じったような空気を胸いっぱいに吸い込んでいる。空港だから機械的なにおいも混じっているけど、アメリカに到着したんだと実感できる匂いだ。 ちなみに外国人から言わせると、日本は醤油と味噌の匂いがするそうだ。「より姉、今回は番組衣装、どんなのを用意してくれたの?」 背後の会話が終わりそうになかったので、仕事に関わる話題を降って強制終了させた。「ん? そりゃもちろん、ジャパニーズテイストを出すために和装だぞ」 和装と聞いていやな姿が思い浮かんだ。「まさか振袖でやれとか言わないよね?」「そんなことするかよ。お前はもう既婚者なんだから振袖じゃなくて留袖だぞ」
Huling Na-update : 2026-05-06 Magbasa pa