Lahat ng Kabanata ng 水の精霊 ~もっと光り輝いて~: Kabanata 11 - Kabanata 20

39 Kabanata

第10曲 酒は飲んでも飲まれるな

「ぎぼぢわるーい」 言わんこっちゃない。 壮絶に二日酔い中のより姉。他の姉妹は平気な顔をしてるのに。「ほら、これでも食べてもう少し横になってて」 そう言ってラムネを渡す。「なんも食べたくない」「そんなこと言わないで食べてみて。アルコール分解で不足した糖分を補ってくれるから。頭痛や吐き気がマシになるよ」 顔の前に差し出すと、もそもそと動いてラムネを数粒、口に放り込んだ。お布団の中でそんなことするのは行儀悪いけど、かなり辛そうだから目を瞑ってあげよう。「そんな様子じゃ朝ごはんは食べられないね。糖分を補給したらマシになると思うから、お腹が空いたら下りてきて」 万が一に備えて嘔吐袋を横に置いて、より姉の部屋を後にする。 こんな状態になるまではしゃいでいたんだね。それだけ喜んでくれたというのも嬉しかったりするから、ついつい甘くなってしまう。 他の人と飲んできてこんな状態になってたら、もっと冷たくしてるかもしれないけど。 飲んだくれの旦那を持った奥さんの気持ちが分かってしまう。って誰が奥さんだ。 心の中でノリ突っ込みをしながらリビングに下りると、他の姉妹が心配そうな顔で待っていた。「依子さん、大丈夫でした?」「今は死んでる。でもラムネを渡してきたからそのうち復活すると思う。あんな姿をあまり見られたくないと思うから、今はそっとしておいてあげようと思って」 かの姉の問いかけに応えながら、みんなのご飯をよそっていく。ひよりが運ぶのを手伝ってくれたから、すぐに全員分をよそい終わった。おかずはすでに作ってある。「より姉いない。ゆきが言って」「わかったー。それじゃあ、いただきます」「「「いただきます」」」 いつも声掛けをしてくれている長女がいないから、長男であるわたしが声掛け。 こう見えても長男坊なんです。長男坊。「食べないの?」 長男を噛みしめていたら箸が止まってしまっていた。最近妄想癖が強くなったのかな。「食べるよー。うん、今
last updateHuling Na-update : 2026-04-26
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第11曲 想いは秘めてちゃ伝わらない

「わぁ、すごいオシャレなお店」 ひよりが感嘆の声を上げている。 イタリア・エミリア・ロマーニャの料理をコンセプトにしたレストラン。 イタリアを思わせるお洒落な空間で、エミリア・ロマーニャ州とフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の郷土料理をワインと共に楽しめる、割とカジュアルなレストラン。 より姉と行ったようなコース料理のお店も考えたけど、人数が多いから少し賑やかになっても大丈夫なお店を選んだ。「生ハムと微発泡のワインがおススメだよ」 コース料理ではないので、それぞれメニューを見て思い思いの料理を注文。 誰も同じ料理を頼まないのは言わなくても分かる我が家の不文律。違う料理を頼んでシェアした方がいろんな味を楽しめるしね。 カプレーゼ、カルパッチョ、生ハムメロン、パーニャカウダにクロスティーニといった代表的なイタリア料理が所狭しとテーブルに並ぶ。ワインの苦手なひより以外はワイングラスを片手に料理を楽しんでいる。 ちなみにひよりは甘いカクテルを注文。この辺の子供っぽさも可愛いんだよなぁ。「さすがゆき。作るだけじゃなくて選ぶお店も美味しいよな」「一流は一流を知るというやつですね」 料理の味に満足してもらえたようで良かった。このお店、来たことなかったんだけどね。「この後は散歩デートするんだから飲みすぎないでよ」「お酒は嗜むものだからな」 どの口が言ってんだ。 さっきまで二日酔いで死にかけてたくせに。「迎え酒はいいなぁ!」 おっさんか。「ゆきとのデートを控えて無茶飲みなんてしねーよ」 最初のデートのことを忘れてしまってるんだろうか。「公園のベンチで伸びてたのはどこの誰だったっけ」「あん時は初デートで緊張してただけだ。もうあんな失態は演じねーよ」 お酒好きなくせに弱いからなぁ。 気持ちよくなる程度ならまぁいいか。二日酔いにも懲りてるだろうと信じたい。 この後大事な話をする予定だから、せめて正気でいて欲し
last updateHuling Na-update : 2026-04-27
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第12曲 本当に大切なもの

 指輪を渡したからといって生活が激変するわけではない。 もともと一緒に暮らしているのだから、それは結婚という形を取っても同じかもしれない。 だけど、気分的な問題ならまた別の話だ。 婚約という形を取ることによって、姉妹たちに絶対的な自信が生まれた。端的に言うと、琴音ちゃんや五代さんに対して寛容になった。「もうあたしらは婚約を交わした身だからな。わははは!」「むきー!」 今日も遊びに来た琴音ちゃんに対して正妻マウントを取っている。 あの日からずっと、姉妹全員婚約指輪を肌身離さず持っている状態。さすがに普段から指にはめたりはしていないけど、それを見せびらかされた琴音ちゃんがわたしに詰め寄ってきた。「わたしも愛人指輪ほしいー!」 なんだ愛人指輪って。 新しいジャンルを作りだすんじゃない。「琴音ちゃんには悪いけど、わたしは愛人を公認した覚えはないんだよ?」「押しかけ愛人でいいもん!」 押しかけ女房みたいに言ってるけど、そんなジャンルもないからね。 それにしても諦めずに食らいついてくるよなぁ。大阪でカッコよく去っていったあの時の哀愁はなんだったんだろう。「琴音ちゃんもめげないよねー。暖簾に腕押しなのに」 ひよりも琴音ちゃんには何気にえぐいよね。「ひとり相撲ですね~」「無駄」 いや、みんな酷かった。「どうしてわたしと五代さんとで待遇が違うんですか!」 当の五代さんは姉妹たちと一緒に食卓でわたしの淹れた紅茶を優雅に飲んでいる。 確かに格差があるよね。「一号と二号では立場が違って当然じゃない」 当然か?「それにわたしは琴音ほどがつがつしてないし。心の愛人で十分に満足してるもの」 心の愛人ってなんだろう。今日はいろいろ新しい言葉が生まれる日だ。 「だってわたしはゆきちゃんともっと触れ合いたいもの!」 なんか生々しいからやめてくれ。「それが贅沢だ
last updateHuling Na-update : 2026-04-28
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第13曲 さらなる飛躍への布石

 会社というのも設立して終わりじゃない。 姉妹たちの雇用手続きは社労士さんに、税金関係は税理士さんにお任せして全部済ませたけど、他にもホームページの作成やら銀行口座の開設、関係各社へのご挨拶など各方面でやることはたくさんある。 本当なら同行するのは秘書兼副社長であるひよりの役目のはずなんだけど、そこは話し合ってるのか四人が順番についてくる。 これじゃ、全員が兼任秘書みたいなものだな。「これだけ従業員から愛されてる社長もゆきくらいだろうな!」 今日の同行役であるより姉がご機嫌な様子で言うけれど、従業員が全員正妻という特殊企業だからでは?「社長がこれだけ従業員を愛してる企業も、うちくらいだよ」「言うようになったじゃねーか」 より姉の男前ムーブを一番近くで見てきたからね。少しはあやからないと。 そんな軽口を叩き合いながら歩いていると、前方に大きなビルが見えてきた。「あそこだね」「あぁ」 そのビルが近づくにつれて口数が少なくなっていくより姉。「緊張してるの?」「全然! と言いたいところだがそういうわけにもいかないみてーだ。やっぱり最重要取引先の上層部と直接会うんだからな」 今日伺うのは五代さんの働く芸能事務所。 いくつかの会社が入ったテナントビルに入り、エレベーターで目当ての会社が入っている五階に向かう。『トラフィック・ハブ株式会社』と書かれた扉の前に立った。『交通の要所』って意味なんだろうけど、それを言うならA transportation hubなんだよなぁ。これも和製英語ってやつかな。 ノックをして扉を開くと、小さなエントランスに電話が一台置かれている。隣に各部署と担当者の内線番号の書いた表が置いてある。 ピラミッド状に校正された、社内ヒエラルキーを感じさせるその表の上の方を探すと五代さんの名前があった。さすが敏腕プロデューサー。内線番号を押し、数コール待つと聞きなれた声が受話器越しに響いてきた。「こんにちは。ゆきです。少し早いけど到着しました」「お待ちし
last updateHuling Na-update : 2026-04-29
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第14曲 婚姻届けは誰のため?

 さすが敏腕社長と言うべきか、記者会見の手筈を整えるのが敏速だった。 顔合わせをしてから数日後、五代さんから連絡があって日時と場所、そこに集まる記者たちまで決まっていたのだから。 記者会見は三日後と決まった。 だけど、その前にやっておくべきことがある。「それじゃ行こうか、ひより」「はい」 借りてきた猫のように大人しくなってしまっているひより。 これから向かう先を考えると仕方がないのかもしれないけど、妙にしおらしくなっているのが愛おしい。「緊張してるの?」 優しく顔を覗き込むと、真っ赤になって慌ててしまう。「そそそ、そりゃそうでしょ! だって、だって。だってこれから向かうのは市役所だよ!?」 ひよりの言うとおり、これから向かうのは市役所だ。「逆にどうしてゆきちゃんはそんなに冷静なのさ!」「市役所なんて住民票を取りに行ったりで何度も行ってるからね」 会社を設立するにあたって印鑑証明や住民票などいろいろ取得するものがあったので、慣れてしまっているんだもの。「それとこれとは話が違うでしょ! 今日は、こ、こ、こここここ!」 コケー?「鶏の真似してどうしたの?」「違うわ! 絶対分かってて言ってるでしょ! 今日は婚姻届けを出しに行くんだから緊張だってするよ!」 言われなくても分かってるよ。「ごめんごめん。ちょっとからかっただけだってば。わたしだって嬉しいに決まってる。いろんな想いが交錯してるけど、不思議と緊張だけはしないんだ」「慣れてるとか?」 慣れるかバカ。 わたしは×いくつなんだよ。一個もないっての。「そうじゃなくってね。小さいころからずっと一緒だったひよりと籍を入れるというのがなんだか不思議で。まだちょっと実感が湧いていないのかもしれないね」「そっか。ゆきちゃんはいろいろ諦めていた時期もあったもんね。わたしは小さいころからの憧れだったからなぁ」 小さい頃と言われて
last updateHuling Na-update : 2026-04-30
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第15曲 記者会見

「さすがに緊張しますね」 五代さんの会社が用意してくれたのは渋谷にある中規模ホール。 百人程度の人数が収まる比較的大きな会場だけど、聞いたところによると収まりきらないくらいの記者が訪れているらしい。「さすがにこれだけの人数が集まるのは想定外でしたね。その割には余裕そうに見えますけど」 そこは培ってきたものがあるので、人数が多いからと言って緊張したりはしないけど、今日だけは特別だ。「これでも十分緊張してますよ。普通の記者会見と違って結婚報告ですからね。それに多数の記者が押し寄せてると聞けばなおさらです」 日本記者クラブの記者はもちろん、ネットニュースや週刊誌、果ては海外の情報記者までいるというのだから、今更ながらに自分の注目度の高さに驚いてしまう。「一配信者にすぎないわたしの結婚報告にこれだけの人が集まるというのも前代未聞ですね」「何言ってるんですか。ゆきさんはもうただの配信者ではありませんよ。日本全国どこに行っても会場を満席にできるほどの人気を誇る立派なミュージシャンです。しかもその名声はとっくに海外にまで届いているんですよ」 確かにわたしの配信のファンの中には海外の人も多い。以前からポツポツと増えてきてはいたが、劇的に増えたのはやはり脳の障害で倒れて入院したときらしい。 わたしは意識がない状態だったので知らないのだけど、イギリスの有名なニュース番組に取り上げられるほどのグローバルな話題になったそうだ。回復した後にひよりが誇らしげに語っていた。 日本縦断のツアーをした以上、次は世界も視野に入れているわたしにとっては追い風と言っていい。今日でバッシングを受けるようなことにならなければ……。「そろそろ時間ですけど、準備はいいですか?」「はい、いつでも大丈夫です」「それでは向かいましょう」 * * * テレビの前、お姉ちゃん達と一緒に記者会見が始まるのを待っている。 画面にはすでに会場の映像が映されていて、たくさんの記者さん達が今か今かと待っているのが伝わってくる。 やがてゆ
last updateHuling Na-update : 2026-05-01
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第16曲 披露宴はどこででもできる

「ただいまぁ」 記者会見は昼間だったので、今日は泊りにせず東京から直行で帰ってきた。 今からなら晩御飯を作るのも間に合うだろう。「おかえり」 そう思っていると玄関口に愛する四人が出てきた。 ついさっき、全国放送で愛の言葉を告げたその当人達だ。 もともと心に決めていた事だったので、何も悪びれることはないのだけど、心なしか四人の表情が険しい。 あれぇ?「ゆ~き~」 より姉がゆらりと近寄ってきた。 え。 ひょっとして怒ってるの? より姉がガバっと両手を広げたので、思わず体に力が入ってしまったが、気が付くとわたしは抱きしめられていた。「バカやろ」 耳元でささやくような声。口は悪いけど、その声は少し震えている。「ほんとバカです。あんなことをファンの前で言うなんて」 かの姉がそっと右手を握ってくる。「単細胞」 あか姉が毒を吐きながら左手を取った。「わたし、ひょっとして怒られてる?」 みんな行動と言葉が一致しないので戸惑ってしまったわたしはひよりに助けを求める。「ゆきちゃんなら分かるでしょ。みんな嬉しいんだよ。世界中にあれだけ堂々と愛を叫んでくれたんだもん。ただ照れ隠ししてるだけだよ」 ひよりが笑いながら暴露すると、三人の方がぴくっと震えた。「いや、あたしらは怒ってる! せっかく計画を立てて、ゆきの将来のために覚悟を決めたのに、全部台無しにしやがったんだからな!」「そうです! わたし達がどんな思いで日陰者になろうとしたと思ってるんですか!」「朴念仁」 あか姉毒舌すぎん? でも一見本気で怒ってるような口ぶりだけど、みんな顔が真っ赤だし、頬が緩みっぱなしだよ。「ごめんね。でも覚悟を決めたってことはやっぱり断腸の思いだったんじゃない。わたしがそんなことを許すとでも思った?」 今度はこちらから反撃だ。「みんなただでさえわたしにべったりなの
last updateHuling Na-update : 2026-05-02
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第17曲 二人だけの時間

 少し心配だったメディアの反応だけど、数日後に発売されたいくつかの雑誌の誌面を見ると、意外にも好意的な論評が並んでいて驚いた。「家族愛の究極形」「いつまでも支え合う家族」「切れない絆を永遠に」「愛に正解はない」「最も長い愛のカタチ」 などなど、倫理観にうるさい日本のマスコミにしては随分と肯定的な意見ばかりが並んでいる。 一部のスポーツ新聞などは面白おかしく「ハーレム」なんて言葉を使っているけれど、それすらも非難するものでなく、羨ましいけどそれだけの深い愛情を持っているなら愛される方も幸せだろうという論調で締められている。「なんか拍子抜けだよね」「もっと叩いてほしかったのか?」「別にそういうわけじゃないけどさ。ってほとんど読んでないでしょ」 隣に座って一緒に読んでいるのだけど、より姉は雑誌など見ずわたしの方を見て終始ニコニコしている。「そんなの最初の数行を読めば大体どんなことが書いてあるか分かるだろ。そんなことよりお前のことを見ていたいんだよ」 今日はかの姉とあか姉、ひよりの三人は新しく立ち上がる配信者事務所のアドバイザーとして五代さんに呼ばれ、留守にしている。 わたしはいらないのかと聞いたら、今日は技術的なことを聞きたいからと返されてしまった。わたしも自分で編集してたんだけどなぁ。そりゃかの姉の作ったもののクオリティには遠く及ばないけどさ。 そういうわけで今日はより姉と二人きり。 みんなが出かけてからは片時も離れず、わたしにくっついたまま上機嫌で鼻歌なんかも歌ってる。 甘えてるというかめっちゃ懐いているというか、とにかくべったりだ。「二人きりになれたのがそんなに嬉しいの?」「そんなの当然だろ。ゆきは嬉しくないのか?」 わたしの質問に口を尖らせる。なんだかいつもと雰囲気が違うよなぁ。「わたしだって嬉しいよ。みんなと一緒ってのもいいけど、たまには二人きりになりたいこともあるよね」 そう答えると、花が咲いたような笑顔になった。「だよなだよな! あたしも別にみんなといるのがイヤってわけ
last updateHuling Na-update : 2026-05-03
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第18曲 人を越えた反応速度

 こうして姉妹達との距離感もどんどん縮まっていく中、わたしの中にもある変化が生まれていた。 日々の業務は上手くいっている。作詞作曲をし、ダンスの振り付けを考え、綺麗な衣装をまとって唄い踊って録画する。 モデル業では何度も雑誌の表紙を飾り、テレビCMでの露出も増えてきた。 仕事面もプライベートでも、これ以上ないほどに充実した毎日を過ごしている。だって全ての業務に誰かが関わっているのだから。 撮影ではあか姉と話し合いながらスタイリッシュに映るにはどの角度がいいかを話し合い、何台ものカメラで撮った映像を複数のモニターで確認しながら、かの姉とベストショットを選んでいく。 次に着る衣装の打ち合わせをより姉と行い、外に出る仕事ではひよりがついてくる。 今も五代さんとの打ち合わせのため、トラフィック・ハブに向かうところをひよりに付いてきてもらっている。 いつも愛しい人達に支えられながら行動することに、多大な安心感と喜びを感じている。 今までのように一人で動くのではない。常に誰かに支えられながらどんどん距離が縮まっていく中、心の中に頭をもたげるある想い。 それは決して不満ではない。もっと光り輝きたいというわたしの野心だ。 特にわたしの中でこだわっているのはアメリカ。 いくら若くて言語も不完全だったとはいえ、一度アメリカでは痛い目に遭っている。 わたしとしてはなんとしてもその雪辱を晴らしたい。「どうしたの? ゆきちゃん、怖い顔しちゃって。何か怒ってる?」 いかんいかん。愛する妻を不安にさせるような表情をしていてはダメだ。「何も怒ってないよ。ちょっとアメリカの事を考えていただけ」「アメリカ? 戻りたいの?」「別に住みたいってわけじゃないよ。ただね、アメリカでも曲を出したのに、全然売れなかったことは覚えてるでしょ?」 かつての屈辱。 まだ英語が覚束なかったからというのは言い訳にならない。音楽はフィーリングだ。 言語じゃなく感性で訴えかける分野である以上、全く売れなかったというのはわたしの感性がア
last updateHuling Na-update : 2026-05-04
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第19曲 サムライガール

 今日はひよりと一緒に考えた企画の配信日。「ゆきちゃん、本当に大丈夫?」 ひよりが心配そうに聞いてくる。当たり所が悪ければ大けがをする可能性もあるだけに、見てる側としては心配してしまうのはよく分かる。わたしも姉妹の誰かがこんなことやるって言ったら止めるし。 だけどわたしの態度は余裕そのもの。「ダイジョブダイジョブ! 何度か練習してるし、万が一にも失敗はないよ」 一応体に当たっても怪我をしないように生地の分厚い道着を着てるけど、顔は特段何もせず、ゴーグルもはめてはいない。 そんなものをつけたら視界が遮られて逆に危ないからね。 リラックスした状態で配信時間まで待機。 今日のカメラマンは急遽代打としてより姉が担当。あか姉は射撃主としてスタンバイしているからだ。 試射の時にみんなやりたいというから順番に撃たせてみたんだけど、あか姉以外はみんな背筋が凍り付くような結果だった。 誰一人的に当てることが出来ないのは良いけれど、デッドボールどころではない位置にバンバン撃たれては安心して任せることなんて出来やしない。わたしは犯人役のパネルじゃない。 圧倒的なエイム力であか姉にお任せすることが決まったから、代わりのカメラマンとして以前の仕事でモデルを撮影したこともあるより姉に代役をお願いしたわけ。射撃役はひどかったからね。 あか姉もすっかり乗り気になって、銃を肩に構えてサングラスをかけている。それが妙に似合うから逆に面白い。 さっきかの姉が後ろを通ったら銃口を向けられていた。「わたしの後ろに立つんじゃない」 あんたは超A級スナイパーか。 わたしの事は生かしておいてくださいよ。 Now Loadingの画面が終わり、いつもの挨拶を済ませると、そのまま今日の企画の説明。「今日はね! わたしの運動能力と反射神経、動体視力の限界に挑戦してみたいと思います! 題して、『エアガンの弾をキャッチできるのか』企画です~! なに? 相変わらずのネーミングセンス? うるせーよ。 名前はともかく、すっごく危険なこと
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