「もう雪乃は追い出した。鍵も替えたから、二度とあの子を家に入れることはない。だからまた三人で仲良く暮らそう。なあ、いいだろう?」私はそっと手を引き抜いた。「結構よ」「柚菜!」母は目を赤くし、私の腕を掴んで離さなかった。「あの家はあんたの家なのよ。どうして帰りたくないの?私たちにはあなた以外に娘はいないわ。一緒に帰ってくれなかったら、もうどうしようもないの……」「私の家?」私は淡く笑った。その笑みには嘲りと悲しみが滲んでいた。「あの時、二人は何も言わずに鍵を替え、私の部屋を雪乃に明け渡した。『出ていけ』『この家の者じゃない』って突き放したのもそっちだよね。あの時、私の家だなんて一度も思わなかったくせに、今さら何を言ってるの」「それは……」母は言葉を詰まらせ、涙が溢れ落ちた。「あれは頭に血が上って言っただけなの。柚菜、私たちは心から反省してる。年を取って、頼れるのはあんたしかいないの。見捨てないで……」「私に頼る?」私は冷めた瞳で二人を見つめた。「前に親戚みんなの前で言ったよね。実の娘は頼りにならないって。雪乃を養女に迎えて、家を譲って、老後はあの子に看取ってもらうんだって。その時、私を頼るなんて考え、微塵もなかったでしょ。雪乃に騙されて困窮した今になって、やっと思い出したわけ?」私の態度を見て、父は感情的に責め立て始めた。「柚菜、俺たちはお前を産み育ててきたんだぞ。親がいなければ今のお前はなかった。だから、お前には面倒を見る義務があるんだ。許してくれないなら、ここから動かんぞ。ずっと待ち続けてやる。いずれ世間に晒されるのはお前のほうだ」「お好きにどうぞ。ただし、会社が迷惑だって警察を呼んでも、私は知らないから」通りがかる同僚たちが、好奇な視線を向けていた。父は世間体を気にしたのか、母の腕を引くと、意気消沈したまま背を向けて立ち去った。その後ろ姿はひどくみすぼらしく、どうしようもなく惨めだった。私は遠ざかる二人の背中をしばらく眺めた後、その場を離れた。一方、その頃。雪乃は買い物から戻り、鍵を差し込んだ。しかし、鍵は回らなかった。何度試しても同じだった。彼女はようやく鍵が交換されたことに気づいた。雪乃の顔が怒りに歪んだ。彼
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