あの恐怖、あの焦燥、そして深く、どうしようもないほどの愛……雷星はこれまで、自分にはまだチャンスが残っていると思い込んでいた。この手さえ離さず、遥をそばに縛りつけておけば。来る日も来る日も一緒に過ごしていれば、いつかきっと、あの冷え切った心をもう一度温め直せるはずだと――そう、信じていた。けれど、遥が一片の迷いもなく拘束を振りちぎり、吹きすさぶ風の舞う虚空へとその身を投げ出した、あの瞬間――雷星は、ようやく芯から思い知らされた。遥を、もう二度と取り戻せないのだと。何をしようと。どれほど哀願しようと。どれほど狂って見せようと。遥の視線がもう一度自分の上で止まることは、今後一秒たりとも、ない。遥が自分に向ける感情は――もう、憎悪と冷たい拒絶だけだ。そしてそのすべては、雷星自身が招いた結末であり、どうあがいても取り返しがつかない。ふいに、生ぬるいものが雷星の目尻から頬を伝い落ちた。――ああ。心が死ぬというのは、こういうことか。背後から、慌ただしい足音が近づいてくる。雷星は、振り返らなかった。蒼の声が耳に届く。その声には、長きにわたる疲労と、隠しきれない痛惜が滲んでいた。「雷星……もう、終わりだ」暗色の制服を纏った軍の捜査官数名が雷星の前に進み出ると、身分証と一枚の令状を提示した。「菅野雷星。複数の重大な容疑により、ただちにあなたの身柄を拘束する――抵抗はするな」カチャリと乾いた音を立てて、無機質で冷たい手錠が雷星の手首に嵌められた。蒼は、紙のように色を失った雷星の顔を見つめ、低く絞り出すように言った。「……どうして、こんなことに。あんたはもう二度と、雲の上には戻れない。七歳のあの日からずっと追いかけてきた、たった一つの夢だったじゃないか」雷星はゆっくりと顔を上げ、窓の向こうに重く垂れ込めた鈍色の雲をただ見つめた。ふ、と雷星の喉から、空虚で掠れた笑いが零れた。「……そんなものは、とっくの昔に失っていたさ」……あっという間に数ヶ月が過ぎ、遥の日常は、研究所と病院の集中治療室を行き来するだけの、ひどく単調なものになっていた。そして、ある穏やかな午後のこと。ベッドに横たわる蒼淵の指先が、誰にも気づかれないほど微かに動いた。傍らで付き添っていた遥の身体が、弾かれたように固まった。
Read more