氷室朔也(ひむろ さくや)の策略によって、私・七瀬舞音(ななせ まね)が二度と踊れない体になってから七年。偶然にも、私は彼がずっと想いを寄せていたかつてのパートナー、祝華怜(いわい かれん)の結婚式に参列していた。視線が交差した瞬間、私たちは互いに息を呑んだ。どうして相手の隣に朔也がいないのかと、二人して驚いていたのだ。「朔也ったら、昔とは別人のようよ。今じゃ名門オペラ座で、エトワールを務めているんだから」華怜はどこか残念そうに目を伏せた。「今日の式にも彼を呼んでるの。もし二人の間に何か誤解があるなら、ちゃんと顔を見て話した方がいいわ。最近、世界中で新しいパートナーを探しているらしいの。トップクラスのダンサーを何人もオーディションしたのに、誰も彼のお気に召さなかったとか。――きっと、彼はあなたを待っているのよ」私はふっと笑みをこぼした。心は凪いだ海のように静かだった。「私?私はもう、とっくの昔に踊れなくなっているのに」ステージの上で彼の魂の伴侶になりたいと願い、どうにかして彼の世界に足を踏み入れようとしていた、あの頃の痛ましいほどの執着。それもとうの昔に、跡形もなく消え去ってしまったのだから。……華怜は、入室時に私が控え室のドアの傍らに立てかけておいた松葉杖に気づいていないようだった。おそらく私の言葉の真意にも気づいておらず、ただ笑ってこう言った。「奇遇ね、私ももう踊っていないのよ。歳も歳だし、今は劇団の脚本家に転身したの」いくつか言葉を交わした後、彼女のスマートフォンが鳴った。「ごめんなさい、少し外すわね」私はこくりと頷き、花畑のように美しく飾り付けられた宴会場を見渡した。そして、ウェルカムボードに写る見知らぬ男性へと視線を落とす。――華怜の新郎。なんでも、留学先で知り合ったらしい。長身で男らしく、精悍な顔立ちをしている。朔也とはまったく違うタイプの男性だ。時の流れはまるで無数に枝分かれする小径のようで、思いもよらない現在へと私たちを導いていく。「朔也からの電話だったわ」戻ってきた華怜は、どこか複雑な目をしていた。「今から急いでこっちに向かうって」「きっと新しいパートナー探しで忙しいのね。プロとしての技術は問わない、ただ相性だけを見るって、朔也本人が言っていたらしい
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