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第3話

مؤلف: ちょうどいい
今振り返ってみれば、朔也はきっと後悔しているはずだ。

私の人生をまるごと犠牲にしてしまったことを。

あの日、彼は腹いせに深夜のスタジオの床に石鹸水を撒いた。

おそらく、私を転ばせて少しばかり痛い目を見せ、鬱憤を晴らすだけのつもりだったのだろう。

結果として、彼は望み通り怪我から完全復帰した華怜を隣に取り戻した。

二人は見事にコンクールの優勝トロフィーを手にした。

華怜はその場で海外の著名な教授の目に留まり、以前から憧れていた名門大学への切符を手に入れた。朔也もまた、早々に国立バレエ団への入団を内定させていた。

二人の前途はどこまでも眩く、洋々だった。

――私一人を除いて。

誰も予想していなかったのだ。私自身の怪我が、想像を絶するほど深刻だったなんて。

膝蓋骨の脱臼に加え、靭帯の断裂。治療とリハビリを重ねても、一向に良くならないどころか、後遺症は深刻になっていくばかりだった。

私は出場予定だった若手向けのコンクールをすべて辞退し、母に連れられて実家の地方都市へと帰ることになった。

新幹線に乗る直前、見送りに来た指導教員は力なくため息をつき、残酷な事実を口にした。

「あれほど酷い怪我では、仮に日常生活が送れるまで回復したとしても、以前のようにはもう二度と踊れないでしょう。

舞音、あなたはまだ若い。これからは勉学に励んで、大学受験を目指しなさい」

私はすでに十八歳になっていた。

これまでの人生のすべて――あの輝かしい日々は、突然弾けたシャボン玉のように消え去り、飛び散った石鹸水が顔をぐっしょりと濡らした。

顔が濡れているのを感じてそっと触れると、それがすべて自分の止めどない涙なのだと気づいた。

私自身の血の滲むような努力も、母が注ぎ込んでくれたお金も、そして……あと少しで手が届きそうだった夢も。すべて無に帰したのだ。

抜け殻のように虚ろな状態のまま帰郷した私を待ち受けていたのは、朔也だった。

彼もまた、どこか遠くから急いで駆けつけてきたらしく、その姿にはひどく疲労の色が滲んでいた。

喧騒に包まれた駅のコンコースを抜け、彼は私を追いかけてきた。

いつも高みに立っていた彼が、珍しくひどく取り乱していた。私を見下ろしていたはずの傲慢な目尻は、今は赤く泣き腫らしたように充血している。

彼は私の手を強く握りしめ、何かを言おうとしては口ごもり、最後には唇を震わせてこう言った。

「すまなかった……君の人生には、僕が一生責任を持つ」

その年、華怜は海を渡った。

私はバレエをきっぱりと諦めて本を開き、学生としての生活をやり直した。

そして朔也は入団が決まっていたバレエ団を辞退し、しばらく表舞台から姿を消した。

その時、私は初めて知った。朔也のようにプライドの高い天才が、人混みに紛れ込んで頭を下げ、通学路の屋台で私のために温かい焼き芋を買ってきてくれることを。

私がかつて着ていたレッスンウェアを丁寧に畳み、トウシューズのリボンを甲斐甲斐しく結んでくれることを。

周囲の人々は口々に噂した。孤高の天才だった朔也は、私によって神の座から俗世へと引きずり降ろされたのだと。

そして誰もが首を傾げていた。朔也と華怜という完璧なペア、魂の結びつきすら感じられたパートナーの絆を、私が一体どんな手を使って引き裂いたのかと。

大学の入学式の日、朔也はキャンパスまで私を送ってくれた。

周囲からの好奇の目を気にも留めず、私は朔也の手をぎゅっと握りしめ、ルームメイトたちに「私の彼氏なの」と紹介した。

別れ際、私は彼の目を真っ直ぐに見据えて問いかけた。

「朔也、あなたが私と一緒にいるのは、罪悪感から?私の一生を台無しにしたっていう、罪滅ぼしのつもり?」

私はあえて残酷な事実を言葉にして突きつけた。

彼は何も言い返せず、ただ押し黙っていた。私はふっと低く笑い、わざと悪戯っぽい笑みを浮かべてみせた。

「それでもいいわ。でも、覚悟しておいてね。私の人生はまだまだこれからなんだから。いつか絶対に、あなたのパートナーになってみせる」

くるりと背を向けると、吹き抜ける風が、瞳に溢れそうになっていた涙を散らしていった。

私はまだ、悔しかったのだ。かつて朔也に言い放たれた「君には才能がない。ふさわしくない」というあの言葉が。

どうしても手の届かない彼がいる世界、どうしても越えられない険しい山に対する執着を、どうしても捨てきれずにいた。

私は卑屈にも、朔也が向けてくれるかりそめの優しさに甘く溺れ、この関係が単なる罪悪感という鎖で繋ぎ止められているだけだという現実から目を背けていた。

胸の奥で燻り続ける少女のひたむきな恋心を、私は一度たりとも手放せたことなどなかったのだ。

朔也は二十歳という若さで、バレエ団のエトワールに昇格した。

ただ、正式なパートナーだけは頑なに決めようとはしなかった。

私の足の怪我は日常に支障がない程度には回復していたが、ダンスの腕前は以前とは比べ物にならないほど落ちていた。

それでも朔也は約束を守って自ら私にダンスを教え、私の機嫌を取ることすら覚えて、心にもないお世辞を言ってくれるようになった。

「すごくいいよ。うちのバレエ団の連中より、ずっと上手く踊れてる」

「本当?じゃあ、あなたのパートナーのオーディション、受けに行ってみようかな」

私がそう返した途端、朔也の顔がサッと曇った。

ここ数年、彼は以前のような鋭い棘や傲慢さをすっかり潜めていた。

私と一緒にいる時の空気も、どこからどう見てもごく普通の恋人同士のそれだった。

私のちょっとしたわがままを笑って許してくれたし、ふとした瞬間に心からの気遣いを見せてくれることもあった。

冗談めかして「早く私をお嫁さんにしてよ」と迫ると、彼は優しく頷いて「ああ、いいよ」と答えてくれた。

――ただ、「パートナー」という特等席だけは別だった。

そこは、私が決して足を踏み入れることを許されない絶対的な聖域だった。

過去も、現在も、そして未来永劫、ずっと。

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أحدث فصل

  • もう二度と、あなたの隣で踊ることはない   第9話

    結局、彼の必死の警告も空しく、私の日常はすでにかき乱されていた。朔也の存在自体が、今の私にとっては迷惑以外の何物でもなくなっていた。学校では生徒たちが「先生、やっぱりね!」と面白がって冷やかし、管理職からは暗に「私生活の人間関係にはくれぐれも気をつけるように」と釘を刺される始末だ。朔也からは何通もの長文メッセージが届いていたが、どれもこれも「すまない」とかつての行いを謝罪するものばかりだった。私がすべて完全に無視していると、彼はついに学校の門の前にまで押しかけてきた。生徒や教師が行き交う放課後の校門前。私が人目のある場所で揉めるより、渋々でも彼の車に乗る方を選ぶだろうと、彼は初めから計算して待ち伏せし、強引に私を乗せたのだ。けれど、車が向かった先は落ち着いて話ができるようなカフェなどではなかった。到着したのは、この町にある小さな市民劇場の裏口だった。彼は有無を言わせず私を引っ張り、劇場内にあるバレエスタジオへと連れ込んだ。四方を鏡に囲まれた無機質な空間には、異常なまでに切羽詰まった、彼のヒステリックな姿がいくつも映し出されていた。「舞音、お願いだから、一度だけでいい、試してみてくれ。絶対に大丈夫だ、君なら踊れるから……!」彼がスマホを操作すると、スタジオのスピーカーから聞き覚えのあるメロディが流れ出した。それは――私が十七歳だったあの年、華怜の代役としてコンクールに出場できるかもしれないと、血を吐くような思いで必死に練習していた曲だった。当時の朔也は、私を一瞥するなり「君の実力では到底相応しくない」と、はっきり全否定してみせた。その彼が今、激しく狼狽した顔で必死に弁解している。「舞音、君のために僕が振付を全部手直ししたんだ。ここの第二楽章の部分なんて、君は一歩も動かなくていい……!」そう言いながら、彼は私に手本を見せるように自らそのパートを踊り始めた。何年経っても、朔也の舞い姿は変わらず優雅で、息を呑むほど美しい。私には一生かかっても到底手の届かない、隔絶された絶対的な高み。「朔也。……そんな振付、もうとっくに全部忘れちゃったよ」「お願いだ、頼むから、お願いだから……!」曲に合わせて自身の手を動かしていた彼は、女性を上空へとリフトする態勢をとったまま、動きをピタリと止めた。パート

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  • もう二度と、あなたの隣で踊ることはない   第5話

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  • もう二度と、あなたの隣で踊ることはない   第4話

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