私は三枝麗奈(さえぐさ れいな)。ある日、フリマアプリで中古のノートパソコンを購入した。届いた箱を開け、何気なく電源を入れる。すると、立ち上がった画面の壁紙に映し出されたのは――婚約者の手塚有博(てづか ありひろ)の、全裸の無修正写真だった。頭の中が、一瞬で真っ白になる。どういうこと?まさか神様のいたずら?有博の持ち物が巡り巡って、また私のところに戻ってきたってこと?混乱したまま、有博に電話をかけようとスマホを手に取った、そのときだった。知らない番号から、着信が何度も続けざまに入る。恐る恐る出ると、受話器の向こうから若い女の声が飛び込んできた。「すみません!彼氏のパソコンを間違えて送っちゃいました!そのパソコンの中に大事な仕事のファイルが入ってるんです。絶対に触らないでください!すぐ本来送るはずだったパソコン、送り直します!送料も全部こちらで負担しますので、中のファイル、本当に触らないでくださいね!」電話越しに響くその言葉が、胸の奥に重く沈んだ。甘ったるい声が、やけに耳に残る。有博には――いつから、私以外の彼女がいたの?電話を切ると、私は無理やり気持ちを落ち着けようとして、震える指でマウスを動かした。壁紙以外には何もない。不気味なくらい整然としたデスクトップに、「My Treasure」と名付けられたフォルダが一つだけ置かれていた。有博も昔、同じ名前のフォルダを私のために作ってくれたことがある。そこには、子どもの頃からの二人の写真がぎっしり保存されていた。心臓が「どくん」と嫌な音を立てる。あり得ないはずの考えが、不意に頭の中に浮かんだ。――有博が、浮気?その考えは一瞬だけよぎって、私はすぐに首を振って打ち消した。だって私は知っている。たとえ世の中の男がみんな裏切ったとしても、有博だけは違う。私たちは近所のみんなに見守られて育った、幼なじみなのだから。有博は私を愛していた。毎月の生理の時期をちゃんと覚えていて、前もってカイロや温かい飲み物まで用意してくれるくらいに。スマホも、パソコンも、SNSも――どれも私の誕生日をパスワードにしてしまうくらいに。それに、結婚式はもう半月後に迫っている。だからこれはきっと、何かの間違いに決まっている。私は深く息を吸い込み
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