トップ女優である彼女と、僕はある約束をしていた――公開生配信で、彼女に派手なプロポーズを99度仕掛けること。そうすれば、100度目のプロポーズで正式に付き合ってくれる。そんな約束だった。なのに、その100度目。彼女は駆け出しの若手男優と、プライベートヨットの上でキスシーンの「練習」に興じていた。その笑顔はどこまでも甘く、心の底から幸せそうで。僕は、完全に笑いものになった。後日、彼女から申し訳なさそうにメッセージが届いた。【101度目は、ちゃんと受け取るからね】そう言って彼女は、まるで天女のように、僕の配信ルームへと降り立った。だけど僕は、彼女の目の前で、彼女に宛てて書き溜めた100通のプロポーズレターに火をつけた。その中に隠していた、胃がんの診断書も、一緒に燃やした。「101度目は、もうないよ」富樫汐(とがし うしお)は、燃え上がる手紙の束をただ見つめていた。次の瞬間、危険も顧みず、自分のジャケットで必死に炎を叩き消そうとした。彼女は目を真っ赤にして、何万人もの配信視聴者が見守る中、白いバラの花びらが敷き詰められたソファに僕を押し倒した。「余崎成輝(よざき なるあき)、どういうつもり?私をバカにしてるの?」マネージャーが慌てて配信を切った。僕はただ黙っていた。汐との距離が、これほどまでに近い。近すぎて、彼女の体から、白河信悟(しらかわ しんご)と同じブランドのオーデコロンの香りが漂ってくるのがわかるほどだった。ふと、大学を出たばかりの頃、彼女がまだ撮影所でエキストラをしていた時に、僕の手を握って真剣に言った言葉が蘇る――「成輝、私、女優としてトップを取れたら、結婚するからね」そして実際にトップ女優へと駆け上がった彼女は僕と、こんな約束を交わした――配信で彼女に派手なプロポーズを100度仕掛けること。そうすればトップ女優の肩書きを下ろして、僕たちの関係を世間に公表する、と。僕がライブ配信で必死にプロポーズしているそのたびに、彼女はいつも、様々な若手イケメン俳優を連れて、世界中の高級ホテルやヨットで、気ままに一夜を共にしていた。しまいには海外の結婚の文化を体験したいなどと言って、電撃結婚と即時離婚までしてみせたのだ。僕が喉から手が出るほど欲しかったものを、他人はいつも、いとも簡単
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