瑠璃ってほんと、緊張するとすぐしどろもどろになるんだよな。「わかった。明日は自分がいちばん気に入ってる服を着ていく。安心しろよ、君が気にするようなことは何も考えてないし、俺だって変に意識したりしてないから」翌朝、クローゼットを開けた俺は、中にある服がどれも瑠璃にもらったものだと気づいて、思わず苦笑した。彼女がいちばん気に入るのは、いったいどれなんだろう。これまで贈り物を渡してくれたときの彼女の表情を思い返してみても、どうしても一着には絞れなかった。たぶん彼女は、どれが好きかなんて気にしていない。俺が気に入ってくれるかどうか、それだけを見ていたんだと思う。三時間後、ようやく俺は最終的に一着を選び出した。淡い水色の上品なシャツだった。彼女がくれた腕時計にもよく合っている。瑠璃は迎えに来るつもりだったらしいが、俺は断った。一人で向かって、こっそり驚かせたかったのだ。彼女の贈り物がどれだけ嬉しかったか、どれもちゃんと大事にしていると、言葉じゃなく行動で伝えたかった。だが釣り場の敷地に入る直前、そこで綾乃の姿を見つけた。そのまま足早に通り過ぎようとしたが、彼女に手首をつかまれた。俺は反射的にその手を振りほどき、警戒しながら彼女を見た。「どうしてここにいるんだ」綾乃は、俺のその反応にひどく傷ついたようだった。「悠斗、ずっとあなたを探してたの。やっと居場所がわかったのよ。お願い、許して。もう一度だけ私に機会をちょうだい。前は全部、私が悪かった。蒼の言葉に乗せられて、私たちの関係をめちゃくちゃにしてしまったの」「いい、もういい。そこまでだ」俺は彼女の言葉を遮った。「言い訳なんか聞きたくない。もう君の顔も見たくないんだ。昔のことがどうだったかなんて、もう全部終わったことだろ。だからこれ以上、俺の前に現れるな」綾乃はなおも諦めきれない様子で、背中から小さなボックスを取り出した。中身が何かは見なくてもわかった。富裕層の男たちがこぞって欲しがるような、高級ブランドの腕時計だ。若かった頃の俺も、頑張って働いて、いつかはこういうものを手に入れたいと思ったことがあった。それが、たった二日のあいだに、二人の女から贈られることになるなんて。綾乃はそのボックスを大事そうに持ち、真剣な顔で言った。
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