All Chapters of 私の子が拉致犯の子?なら堕ろすのでさようなら: Chapter 21 - Chapter 23

23 Chapters

第21話

日が沈むと同時に、街中から飛び立ったドローンが夜空に巨大な光の絵を描き始めた。高田家のバルコニーでは、真理子が招待客たちに囲まれ、ひときわ注目を集めていた。離れた場所に停めた車の中から、裕司は真理子の笑顔をかすかに見つめていた。その笑顔は相変わらず周りを明るくする力を持っていて、見ている彼まで思わず笑みをこぼしてしまったほどだ。「誕生日おめでとう……真理子」最後のドローンが消えると、客たちは次々と帰路についた。高級車の列が、遠くへと走り去っていく。やがて高田邸は再び静まり返り、使用人たちが後片付けに追われていた。それでも、裕司の車だけはその場を動こうとしない。高田家の最後の灯りが消えたのを見届けてから、ようやく裕司は車を出すよう指示した。しかしその瞬間、隣の窓が軽く叩かれた。現れたのは高田家の執事だった。裕司が窓を下ろすと、執事は朝届けたはずのプレゼントを静かに差し出した。二人は言葉を交わさず、ただ無言で向き合う。やがて裕司が先に折れ、手を伸ばしてそれを受け取ったが、その手はかすかに震えていた。……誕生日パーティーが終わると、真理子はすぐに離婚後初となる個展の準備に取りかかった。久しぶりの開催に、真理子は内心少し不安を抱いていた。この5年間、個展を開いていなかったうえ、新しい才能ある人々が次々と現れ、優れた作品を世に出していた。5年もの長い空白を経た自分に、果たして関心が集まるのか――そう考えていた。しかし、前売りチケットの販売開始当日、わずか3秒で完売した。完売となった画面を見つめ、真理子はしばらく呆然とした後、飛び上がるほどの喜びの声を上げた。その声に、家族も喜びのあまり涙ぐみながら真理子を抱きしめた。5年ぶりとなる個展当日、会場には真理子の名を慕う人々が大勢押し寄せた。普段は静かな南区も、この日は珍しく渋滞が起きるほどだった。だが、そんなことで人々の熱狂が冷めることはなかった。裕司もまた、その場に足を運んでいた。前回の一件は裕司に大きな打撃を与えなかったが、父の健太郎から与えられた期限はもう残りわずかだった。だからこそ、裕司は焦りを感じていた。本来ならすぐに真理子を探すはずだったが、ふと彼女の作品が目に入った瞬間、足は自然と止まった。真理子が
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第22話

個展が終わるまで、裕司は真理子と一言も話すことができなかった。裕司が真理子を追って外へ出ようとしたとき、突然彼のスマホが鳴った。画面に表示された「父」の文字を見て、裕司は意を決して電話に出た。どちらも口を開かず、ただ静かに互いの息遣いだけが流れる。やがて、電話の向こうで健太郎が口を開いた。「もう時間がない。まだ戻るつもりはないのか?」裕司と健太郎の関係は決して親密とは言えず、幼い頃から共に過ごす時間も少なかったため、共通の話題もほとんどなかった。加えて、健太郎は厳格な性格で、自ら歩み寄ることもなかった。そのため親子の溝は深まる一方で、こうして父親から声をかけられることに、裕司はどこか戸惑いを覚えていた。しばらく沈黙したのち、裕司はようやく口を開いた。「戻るつもりはあるけど、その前に俺なりの答えを見つけたいんだ」真理子が今も自分を愛しているのか、もう一度やり直す機会をくれるのか――それを確かめたかった。電話の向こうで健太郎は小さくため息をついた。「お前なら分かっているはずだろう」第三者である父親にさえ見えている答えを、裕司自身が分からないはずがない。それでも裕司は何も言わず、静かに通話を切って外へ目を向けた。その先では、真理子が最後の客に別れを告げているところだった。さらにその遠くで、制御を失った一台の車が、真理子に向かって猛スピードで突っ込んできた。裕司の手からスマホが落ちたが、彼はそんなことを気にしている余裕はなかった。裕司は全速力で真理子に駆け出しながら叫んだ。「危ない、避けろ!」真理子は反射的に振り返り、その瞬間、微笑みは恐怖へと凍りついた。しかし、恐怖で体が硬直し、一歩も動くことができなかった。ドンッ。車が激突する直前、背後からの衝撃で真理子の体が大きく突き飛ばされた。飛び散った鮮血が、真理子の視界を真っ赤に染め上げた。一瞬で頭が真っ白になり、助けてくれた相手を確かめようと振り返ろうとしたが、視界が暗転し、そのまま意識を失った――病院の一室で、裕司は悪夢から目を覚ました。「真理子!」次の瞬間、彼は勢いよく起こし、荒い息を繰り返した。しばらくして呼吸が落ち着くと、自分が病院にいることに気づいた。事故の凄惨な光景が脳裏をよぎり、彼は痛みも忘れてベッドから降
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第23話

しばしのざわめきのあと、克哉の慎重に探るような声が流れた。「本当に、もう吹っ切れたのか?」その一言に、病床の裕司の体は一瞬で強張り、息を詰めた。一語たりとも聞き逃すまいと、神経を研ぎ澄ませる。やがて、真理子の迷いのない、はっきりとした声が耳に届いた。「ええ」その短い肯定の言葉は雷に打たれたような衝撃を与え、裕司の全身の血を凍りつかせた。無意識にシーツを握りしめる指関節は白くなり、まるでベッドに縫い付けられたかのように身動き一つとれなくなった。頭の中は真っ白になり、思考はすべて吹き飛んだ。世界そのものが崩れ落ちたかのようだった。耳鳴りが次第に激しくなり、真理子のその後の言葉がよく聞き取れない。だが、聞くまでもなかった。その一言で、すべての答えは示されていたのだから。真理子は本当に、自分のことをふっきれたのだ。それはつまり、真理子はもう裕司を愛してはいないということ。そして、二度と裕司のもとへ戻ることはないということだった。裕司がこの1ヶ月間抱いてきた想いは、すべて彼の独りよがりに過ぎなかった。だが、録音機からはなおも真理子の声が流れ続ける。「これまでの数年、好きだったことも、恨んだこともあった。でも、全部もう過去よ。このまま二度と関わらず、それぞれの人生を生きる――それが一番いい結末だと思う。今の私たちは、ただの他人なんだから」長い言葉を、真理子は静かに言い切った。その声音には、わずかな揺らぎもなかった。「……ふっ」長い沈黙ののち、裕司はようやくかすかな笑いを漏らした。胸の奥に溜め込んでいた言葉のすべてが、その自嘲の一声に変わっていた。その様子を見て、克哉は裕司がもう二度と真理子に近づくことはないと確信した。彼は黙って立ち上がり、静かに部屋を後にした。裕司はそのまま病床に崩れ落ちた。両腕は力なく垂れ、虚ろな目で宙を見つめていた。胸の奥に重たい何かがのしかかり、呼吸は苦しく、浅くなっていく。脳裏には過去の光景が次々とよみがえる。かつて真理子と過ごした日々が、今は鋭い刃となって心をえぐるようだ。ついに、彼は彼女を完全に失ったのだ。裕司は絶望のまま目を閉じ、目尻から一筋の涙をこぼした。一方その頃、克哉の帰りを待っていた真理子は、身を乗り出して尋ねた。「どうだった?」克哉は微笑み、
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