All Chapters of 夫の初恋が帰国。身代わりの私は対テロ部隊へ: Chapter 21

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第21話

それから、海斗はヘリの送迎を頼み、翌日の昼にはX国を発つことにした。怜奈を連れ出すこともできず、彼女が他の男と幸せそうに過ごす姿を見届けることなど、耐えられなかったからだ。出発の前夜、海斗は一人、かつての結婚指輪を握りしめ、何度も何度も指でなぞっていた。昔、結婚したとき、あまりの苛立ちにこの指輪を庭の花壇に投げ捨てたことがあった。だが、帰国してから庭を一昼夜かけて探し回り、ようやく取り戻したものだ。これこそが、自分と怜奈をつなぐ唯一の証のように思えた。その時、轟音が静寂を突き破った。爆発音に続き、連続する砲撃でテントが激しく揺れた。海斗は飛び起きると、指輪をはめ、テントの外へと駆け出した。「襲撃だ!すぐ撤収しろ!」鋭い警報音が夜の空気を切り裂く。テントの外はパニックに陥り、皆が四方へ逃げ惑っていた。久しく聞いていなかった悲鳴が再び響き、サーチライトが夜空で交差する中、敵のヘリが低空飛行していた。凄まじい爆発の中、海斗は怜奈の姿を見つけた。彼女は爆風に飛ばされ、倒れ込んでいた。その少し先では、敵のスナイパーが赤い光を怜奈に合わせていた。「怜奈!伏せろ!」その声と共に見覚えのある影が覆いかぶさり、怜奈を身を挺して守った。バンッ!銃弾が肉を貫く鈍い音が、はっきりと響く。怜奈は目を見開いたまま、海斗の胸から赤い花が咲くのを目の当たりにした。重い体が覆いかぶさり、温かい血が怜奈の戦闘服に染み込んでいく。「海斗?海斗!」怜奈は震える声で手を伸ばすと、指先がどろりとした感触に濡れた。海斗は血を吐き、激痛に顔をしかめたが、怜奈が無事であることを見てかすかに微笑んだ。「これで……ようやく……君を守れた……」瞳が虚ろになっていく中、それでも海斗は怜奈の袖を最期の力で掴み離さなかった。「いや……海斗しっかり……」怜奈は海斗の傷口を必死に押さえたが、血は指の間から溢れ出していた。「誰か!助けて!」弾雨を掻い潜り駆けつけた哲也だったが、海斗の傷を見た瞬間、立ち尽くした。海斗は心臓を的確に貫かれていた。海斗の呼吸は次第に弱まっていたが、視線は固執するように怜奈を追い続けているのだった。彼は震える手を持ち上げ、怜奈の顔に触れようとしたが、途中で力尽きた。その左手には、かつて捨て
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