「隊長!この度認識番号を引き継ぎ、国際対テロ特殊部隊として任務に参加することを申請させていただきます!」広い会議室に村上怜奈(むらかみ れいな)の声が響く。目の前には亡き兄・藤原蓮(ふじわら れん)の戦友たちが制服姿で並び、胸部の部隊章や国旗が輝いて見えた。隊長は、蓮の認識番号が刻まれたプレートを怜奈に渡す際、少し手を震わせていた。「村上、本当にこの道を行くのか?」かすれた声で隊長が問う。「君のお兄さんは……」「覚悟はできています。あの時、兄が成し遂げられなかったことを、今、私が最後までやり抜くつもりです!」壁の国旗を見つめながら、怜奈は幼い頃に蓮から敬礼を教わった記憶がフラッシュバックする。蓮はいつも言っていた。「怜奈、もう少し手を高く上げるんだ」と。隊長は背を向けて涙を拭う。「いいだろう。ようこそ、国際対テロ特殊部隊へ。2週間後のX国への派遣、君も同行してくれ!」怜奈は大きく頷き、警察署から出ると、ちょうどスマホが鳴った。村上家本家の執事からの電話だ。「怜奈様、お戻りください!海斗様が大旦那様に呼び出されて……酷くしつけられてます」一瞬の迷いの後、怜奈はタクシーを拾い、村上家本邸へと急いだ。別室のドアを開けると、村上勲(むらかみ いさお)が持つ竹刀が村上海斗(むらかみ かいと)の背中を容赦なく叩いていた。バシッ――静かな空間に響く竹刀を振り下ろす音はやけに耳についた。海斗は正座のまま背筋をピンと伸ばし、背中で竹刀が振り下ろされるのを受け止めるが、声をひとつも上げなかった。「内緒であの岩崎家の小娘を連れ戻すなど、お前の亡き両親に合わせる顔があるのか!?」勲は声を震わせ、再び竹刀を振り上げる。「長年経ってもまだあの女が忘れられんのか?」海斗は沈黙を貫いた。「返事をしろ!」勲は激昂し、さらにもう一発食らわせた。「まだ忘れていないんだな!?」海斗はそれでも無言を続けた。一方、ドアの前で固まる怜奈は、指先が掌に食い込むほど強く拳を握りしめていた。海斗の背中を叩かれる乾いた音が、そのまま怜奈の胸にも響き、彼女の息を詰まらせた。海斗は最後まで何も語らなかった。その沈黙こそが、どんな言葉よりも残酷だった。否定しないということは、認めざるを得ない事実だからだ。こうして打撃が止むことはな
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