Semua Bab 妹を殺された兄が、偽りの聖女候補になって王弟に溺愛されるまで~妹を殺した奴らに、ハッピーエンドなど与えない~: Bab 31 - Bab 40

49 Bab

第31話 歪み【クララ視点】

 神殿の祈祷場から戻ったとき、空はすでに藍色に染まりかけている。 かつて私が【選ばれた】日と、同じような空の色――ひどく寒くて、ひどく美しい、あの日の空。 私は部屋の扉を静かに閉じ、ゆっくりとベールを外し、そして髪が肩に落ちるのを確認する。息を吐くと、ほんの少し白くなる。 広場での祈りは、決して成功とは呼べなかった。 けれど、私ははっきりと見た。老女の震える手、子どもの澄んだ瞳、誰よりも純粋な信仰のかたち。 あれだけで、私には十分だった。 【あの女】――アリスに見せてやりたかった。 これが【本物】の祈りだと。嘘で塗り固めた顔では届かない、祈りの本質を。 私は鏡の前に立ち、自分の顔を見つめる。 ――美しい。 目元にはかすかに疲れがあるが、それもまた神に選ばれた者としてふさわしい。「ねぇ、神様……あなたは、まだ私を見てくれているのよね?」 部屋の奥にある小さな祭壇に、そっと祈りの言葉を投げる。 その瞬間、扉の下から――何かが、するりと滑り込んできた。「……?」 一枚の封書。 差出人の名前はない。 宛名すら、書かれていなかった。 けれど――私の名を呼んでいる気がした。 私はその手紙を拾い、慎重に封を切った。 中にあったのは、ほんの数行の、震えるような筆跡。 ――聖女クララへ あなたの祈りに、涙を流した者がかつていました。 けれど、その祈りは一人の少女を焼き尽くし、命を奪った。 リリス=グレイヴ。 あの子は死んでいない。 そして――【あなた】も、選ばれてなどいなかった。「……は?」 喉奥から、震えるような声が漏れる。 指先がかすかに震えている。今、自分の心がどんな形で揺れているのか、すぐには分からなかった。「嘘……よね?」 誰かの悪戯
Baca selengkapnya

第32話 愚か者の隣にて

 祈りの場を後にした直後、俺はルーカスから声をかけられた。「……少し、話をしよう。ここではない場所で」 断る理由はなった為、俺は頷いた。 そのままルーカスの後をついていくことにする。  ▼ ▼ ▼ 案内されたのは、王宮の裏庭だった。 広くはない。だが、見事に手入れされた薔薇の庭園。夜の空気はひんやりと冷たく、星一つない空が静かに世界を覆っていた。 ルーカスは庭の中央、石造りの小さな東屋に佇んでいた。蝋燭一つと、蒼白い月の光だけが、その輪郭をかろうじて照らしている。「なんていうか、とても……静かですね」 俺が口を開くと、彼は振り返らずに答えた。「静寂はいい。嘘も、祈りも、そして怒りも……全ての【声】が消える」「祈りまで、ですか?」「祈りもまた、人の【声】だ。そして声には必ず、欲望がある」 彼の言葉には、断罪も拒絶でもない。 ただ、あまりにも澄みきった現実だけがある。 ルーカスにベンチまで案内されたので、俺はそのままそのベンチに座ると、その隣にルーカスが座った。 まるで当たり前のように座ってくる姿に、俺は何も言えなかった。 そして、そのまま話を続ける。「それでも、あなたはクララ様を止めなかった」「止めなかったが……許したわけでもないぞ、俺は。君の言う通り、あの祈りは【偽り】だ。けれど、偽りであっても――民を救うなら、無価値とは言えない」 その声音には、わずかな寂しさがあった。「……あなたの考える【真実】とは、何ですか?」「アリス、君の【痛み】だよ」 突然【アリス】の名を言われた事に、ぴたりと、言葉が止まった。「君は、誰よりも【正しさ】にこだわっている。クララ嬢が偽りの聖女であること。君の姉であるリリスの死が不自然だった事――それを訴えるために、君はこの世界に立った」「それは&hel
Baca selengkapnya

第33話 月下の会話

「……もし俺が、リリスを殺した黒幕だったら、どうする?」 その言葉は、夜の冷気よりも深く、俺の胸の奥に突き刺さる。 まるで、血の気が引く音が聞こえた気がした。 ほんのわずかに開いた距離。俺の手首は、まだルーカスの手の中にあった。 拒むことも、振り払うこともできずに。 ――その問いは、あまりにも静かで。あまりにも残酷だった。 月の光が、彼の黒い髪に銀の縁を落とす。 その瞳は、やはり穏やかだった――まるで問いの意味すら問うていないように、ただ俺の目の奥を見ている。 俺は……笑った。笑うしかなかった。 かすかに口元を歪める。 ――それでも、あなたは――リリスを【見殺し】にした。 静かに、あの言葉を思い出す。 間違いなく、目の前の男はどんな理由であれ、どんな事であれ、【見殺し】にしたんだ。   ルーカスは――笑っている。 あまりにも小さく、あまりにも静かに。 その笑みには、否定も後悔もなかった。 何かを認めるでもなく、何かに抗うでもなく。 まるでそれが【当然】であるかのように。 俺の背に、冷たいものが走る。 この男も、信じられない――そう、改めて思った。 どんな優しさも、どんな言葉も、この男の本性がわからない。 この世界に、【本物】など存在しない。真実は、ただ静かに嘘の下に埋もれているだけ。 けれどそれでも、問いを返さなければならなかった。「……なぜ、それを今、私に言うのですか?」 問いかける声は、自分でも驚くほど静かだった。 ほんの一拍の間のあと――ルーカスは、ためらいもなく言った。「【もしかしたら】……そうかもしれないと思ったからだ」「もしかしたら……?」「君に問いを投げかけただけだよ。それが真実かどうかは俺の口からは言えない。本
Baca selengkapnya

第34話 真実の序曲【クララ視点】

 私は神殿の高台から、広場を見下ろしていた。 今日は朝から空が澄んでいて、陽の光もやわらかくて。本来なら、それだけで人々の顔は自然とこちらへ向けられるはずだった。 聖女が祝福の言葉を授ける日には、神殿の前は民で埋め尽くされる――少し前まで、そうだった。 ――でも、今は違う。 あの広場に立つのは、私ではない。 まるで笑顔の仮面を被るかのように、柔らかな声で祈りを捧げる【誰か】が、そこにいる。 そこにいるのは、【アリス】。 彼女は聖女候補として相変わらず近くにいる。そして、私より輝いているように見えた。「どうか、失われた命に、眠りの安らぎを……その名が、誰の記憶からも消えることのありませんように……」 風に乗って届いた声は、驚くほど静かで――でも、あたたかい響きだった。 小さな子を抱いた母親が、祈りの声に合わせて目を閉じていた。古びた杖をついた老女がその場で膝を折り、地に額をつけた。まるでその女が【本当の聖女】かのように。 おかしい、でしょう?選ばれたのは、私なのに。 神の啓示を受けたのは、私。 私だけがこの国の【救い】であると、王も、神官も、民も――そう言ってくれていた。 それなのに、どうしてこんな、どこの誰とも知れない女の前で、人々は祈り始めているの? 唇が、強張る。この感情は、怒り? 嫉妬? それとも……不安? わからない。 わからないけれど、胸の奥がひどく冷えていく。 私は回廊を離れ、自室へと戻る。陽の光が眩しすぎて、なぜか頭痛を覚えた。 扉を閉めて、鏡の前に立つ。 鏡の中には、白衣に身を包んだ【聖女】がいる。 けれど、その目は虚ろだった。焦点が合わない。 まるで、何かを思い出しそうで――思い出したくないような顔。「リリス……」 その名を口にした途端、背筋に冷たいものが走った。 あの子は、死んだ。炎の中で――確かに、神殿の奥
Baca selengkapnya

第35話 歪んだ天秤【ルーカス視点】

 神殿の回廊に立ち、冷たい柱に背を預けながら、俺はその足音を聞いていた。 ――コツ、コツ、コツ。 白い礼服をひるがえしながら、クララが足早に歩く音。 石の床に吸い込まれるようなその音は、妙に軽く、それでいて落ち着きがない。 足元が揺れているのが、音にすら表れていた。 ……焦っているな、クララ。 無理もない。 民の視線が、静かに、確実にアリスへと傾きつつある。 もはや熱狂や歓声ではない。【救い】という名の現実が、少しずつ彼女から離れていく音だ。(まったく、因果なものだ……) クララは、聖女になりたかった。 だからなった。ただそれだけの話だ。 リリスがいなくなった今、空席を埋めるように【座った】だけ。――だが、その【座】は、ただ座ればよいというものではない。 誰かを踏み台にして立った者は、いつかその土台に揺さぶられる。 俺は廊下の影からクララを見送った。 肩に刻まれるような緊張。目が泳ぎ、顔色が蒼白く、手はベールを強く握りしめていた。 まるで、亡霊に追いすがられているかのように。 いや――実際、彼女は見てしまったのだ。 炎の中で、自ら背を向けた少女の顔を。リリスという名の、罪の影を。「やめて……っ」 廊下に響いたその小さな声に、俺は目を細める。問いかけられてもいない。だが、思い出してしまった。 ――もし、俺がリリスを殺した黒幕だったら、どうする? あの夜、薔薇園でアリスに投げかけた言葉だ。 もちろん、ただの挑発だった……と言い切れるのだろうか。 あのときのアリスの目。睫毛の奥で揺れた、疑念と恐れと、それでも向けてくる【視線】。(君は、俺のことをまだ信じていない……だが、目を逸らせてもいない) それが、あの問いを口にさせた理由だったのだろう。 俺自身、リリスの死の真実を知らぬわけではない。 それでも、真相を語ることはできない。 なぜなら、語った瞬間にこの秩序は壊れる。 あるいは――俺とアリスの関係すら。 彼が【祈る者】として舞台に立ち続けるためには、未だ明かしてはならない真実がある。 クララが小部屋へと逃げ込む音がした。 扉が閉まり、足音は途切れる。 息を殺すような沈黙が、神殿の奥に沈んでいく。 ……さて。 俺は踵を返すと、神殿の南廊へと歩き出す。 そこに、従者のカイが静かに現れた。いつもの黒の制
Baca selengkapnya

第36話 裁判の布石と決定

 王都の空は、いつにも増して重苦しかった。 空気が湿り、風が止まり、遠くで鐘の音が微かに鳴っている。 神殿の塔の上から見下ろせば、民衆の集まる広場にはもうざわめきが広がっていた。 誰もが、何かが起こると知っている。それでもその【何か】の正体を、はっきりとは知らない。 けれど、それはすでに始まっている。 聖女裁断の儀――誰が神に選ばれし者か、民の前で問う最後の審判。 それは俺が仕掛けた【舞台装置】であり、復讐の刃のようなものだった。 姉を喪い、祈りの意味を見失った俺が唯一できること。(……これでいい) 淡い風が衣を揺らしている中で、神官たちが王宮からの書状を手に神殿へと戻ってくる様子が見える。 王も、神殿長も、そしてこの国の民も――今や俺の仕掛けた儀式から目を逸らせなくなっていた。 ふと、塔の石段を降りようとしたところで、白銀の影が視界に入った。 視線を向けた先に居たのは、ルーカスだった。 王弟としての威厳をまとうその姿は、相変わらず感情を見せない。けれど、どこか俺の前に現れる時だけは、微かに言葉の端がやわらかくなる気がする。「……王宮から、承認が下りた。裁断の儀は三日後。広場で、民衆の前で行われる」 そう言って、彼は俺の肩に目を落とした。そんな俺に、彼は何を見ているのだろう。「君の勝負が、始まる……後戻りはできないぞ?」 その言葉を聞いた俺は、静かに笑いなが頷いた。 ふと、風の向こうから祈りの歌声が聞こえる――クララの声だ。 神殿の庭で、信徒たちを前に【聖女の祈り】と言うモノを続けているのだろう。声は張り詰めていた。まるで、崩れそうな塔の壁を支える支柱のように。「……クララは、まだ自分が選ばれたと信じている。いや、信じなければ壊れるのだろうな」 ルーカスがぼそりと呟いた。 その返事に対し、俺は返事をしなかった。 ただ、その祈りの音を
Baca selengkapnya

第37話 前夜祭 ― それぞれの沈黙【後半・クララ視点】

【前半:ヨシュア視点】 朝から、王都はざわめいていた。 誰もが口々に囁いている――それはきっと、【聖女裁断の儀】のことだろう。 王宮前広場には、すでに人の波が押し寄せ、広場を囲む街道では露天が並び始めている。そして冷たい空気の中に、肉を焼く香り、焼き栗の匂い、子供の笑い声と大人たちの噂話が混ざっているのが聞こえてきた。 ――まるで祭りのようだった。(いいや……これは、祭りなんかじゃない) これは、ある意味でひとつの【処刑】のようなものだ。 神と民と王の前で、誰かを突き落とす――それだけの【祭壇】に過ぎない。 俺は神殿の奥の私室で、一枚の衣を広げていた。 白地に、銀糸の刺繍がほどこされた祈祷衣。これはリリスが生前に最後に身につけていた正式な祈りの装束――と、ルーカスがそのように言いながら、それを渡してくれた。 今では倉庫のような場所に押し込まれていたが、どうしても、これだけは取り戻したかった。 指先で布を撫でる。 ほつれも、血の跡もない。「……リリス、俺はこれを着るぞ、良いな?」 たとえ誰が否定しようと。 この国が、姉を忘れようと。 俺は、リリスの【祈り】を、この身で証明してみせる。 そんな事を考えていると、その時、扉の外に誰かの気配を感じた。振り返ると、ほんの一瞬だけ、廊下の先にルーカスの姿が見えた。 黒い外套を翻し、足を止めることもなく、こちらを見ずに歩き去っていく。 ――彼は、何も言わなかった。 でも、知っている。あの背は、俺のの覚悟を見ていたのかもしれない。 だからこそ何も言わず、背を向けたのだろう。 俺たちは、もう互いに言葉を交わす段階を超えている。 今はただ、舞台に立つだけだ。 この衣を身に纏い、姉の祈りを、真実として告げるために。  ▽ ▽ ▽ 夜――部屋の中は、肌を刺すように冷たかった。 窓には厚手の布をかけた。 隙間
Baca selengkapnya

第38話 開廷 ― 聖女裁断の儀

 鐘の音が、王都の空を震わせていた。  低く、重く、まるで祈りとは逆の方向へ人々を導くようなその音はまるで【始まりの合図】として、街に染み込んでいく。じわじわと、侵食していくかのように。  王都の中心――神殿前の広場は、すでに民衆で埋め尽くされていた。貴族、騎士、平民、物売りの子供、農夫の娘、王の配下、そして――神官たち。ありとあらゆる立場の者が、ひとつの【答え】を求めて集っていた。  俺は、火傷の痕を隠すようにしながら、ベールををつけてその壇上に立っていた。(今日で全てを流してやる……リリス、お前がどうしてそのような運命に会わなければならないのか。それを全て……) ずっと目指してきた場所だった。  失ったものを、暴かれたものを、偽られた記憶を、すべて晒す場所。  大切な妹であるリリスを奪ったこの国に、【真実】という裁きを下す舞台だ。 正面には、もう一人の【聖女】――クララがいた。  彼女は白い礼服を纏い、金色の祈祷石を胸に、あくまでも神に仕える者の姿で立っていたのだが――その肩は微かに震えていた。  その視線は俺を見ているようで、見ていなかった。焦点の合わない目にこわばった口元。冷たく塗り重ねられた信仰の化粧。 ――クララ、お前は、まだ自分を【|選ばれし者《聖女》】だと思っているのか? ざわ……と風が抜けた。  群衆がざわめくたびに、空気の密度が変わっていく。  この場に漂っているのは祈りではない。信仰でもない。それは、不安と恐れと、誰かを断罪したいという名もなき衝動だった。 ――この国は、何かを裁きたがっている。 壇上に立つのは、王宮から派遣された特使。  王に仕える老齢の神官であり、この国の象徴的な【公正】を担う者の一人。  彼が、重々しく巻物を広げると、空気がぴたりと止まった。「本日ここに、『聖女裁断の儀』を開廷する」 その一言が、雷のように響いた。 誰かが息を呑み、誰かが首元を押さえる。  そして全ての視線が、再び、俺とクララに集中した。「神の御名において問う
Baca selengkapnya

第39話 ヨシュアの告白

 俺は――祈祷衣の前を、両手で裂く。 破けた布が風に舞い、俺の上半身が晒される。 ベールの下で、一生懸命声を張る。「俺は――ヨシュア・グレイヴだ」 その名が、広場に投げ込まれた石のように響いた。 群衆がざわめく。神官たちが顔を見合わせ、また壇上にいる王族たちでさえ、ざっと立ち上がった。 ざわざわとした中で、俺は声を張り出す感じで続けた。「【アリス】なんて偽名であり、そして俺は男で女ではない。そして――あの【聖女】リリス=グレイヴの、双子の兄だ!」 禁術で体を作り替えているので、あえて双子として声をあげると同時に広場が静まり返る。 鐘の音すら止まったかのように、世界が凍りついた。「リリスは……確かに神に選ばれた。だが、この国は、それを認めなかった」 俺の声が震える。けれど、それは恐れではない。怒りでもない。 それは、祈りのように静かで、だが確かな【叫び】でもあった。「神殿は……王族は……!」 声が、思っていた以上に大きく響いた。 喉の奥が、ひりつく。「お前たちは、民を導く【聖女】という“枠”を先に決めて――そこに、都合のいい女を当てはめただけだ!」 指先が、震えている。 怒りなのか、寒さなのか、自分でも分からない。「俺の妹は、その枠に合わなかった。ただ、それだけの理由で――!」 息を吸う。 胸が、焼けるように痛む。「だから、見殺しにした。記録から消した。最初から――いなかった事にしたんだ!!」 最後の言葉は、俺自身の【心】だった。 風が吹き抜ける――裂いた衣の隙間から、冷たい空気が肌に突き刺さる。 汗が一気に冷え、背筋を這い落ちた。 それでも、止まらなかった。「……俺は……!」 一拍、喉が詰まり、声が震えそう
Baca selengkapnya

第40話 クララの精神崩壊【クララ視点】

 誰かの声が遠くで響いていた。 あれは、誰?誰が、あんな悲鳴をあげていたの? ――違う。あれは、私の声だ。 私は、叫んでいた。「違う、違う、違う……わたしは……聖女よ……っ!」 声が、喉を切り裂くほどに響いた。 頭の中で、何かが音を立てて崩れていく。 瓦礫のように、次々と思い出す。 あの日のことだ。 リリスが――あの優しくて愚かだった【|女《リリス》】が聖堂で神託の光に包まれた、あの瞬間。 空から光が差し、すべての者がひざまずいた。神官が、民衆が、そして王までも。 でも、私だけは、理解できなかった。 なぜ彼女なの? なぜ【|私《ヒロイン》】じゃないの? だって、私は知っていた。 これはゲームの世界だ。 私は転生者で|ヒロイン《クララ》に生まれ変わった。 この国の結末も、攻略対象も、聖女の役割も、すべて知っているはずだった。 この世界の【真の聖女】は、私のはずだった。 リリス=グレイヴは私を邪魔する、ただの平民の女だったはず。哀れで、嫉妬深くて、報われない役回りの女のはずだった。 なのに――違った。 ゲーム通りになんて、進まなかった。 リリスは微笑んでいた。 祈っていた。神に、救いを乞わず、人々の幸せを願っていた。 その祈りが、神に届いた瞬間――私は、すべてを失った。 【転生者】だという優位も、知識も、使命も、あの光の前では無意味だった。 私は――【選ばれなかった】んだ。 その痛みが、いまだに胸に突き刺さっている。 嫉妬じゃない。違う。これは【正義】だった。神の名のもとに、自分こそが世界を導くはずだったのに……! ――そして、あの夜。 リリスが神殿の奥に閉じ込められたあの日。 そこから火の粉が舞っており、天蓋が崩れ、光が揺れていた。 誰も助けに来な
Baca selengkapnya
Sebelumnya
12345
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status