妹を殺された兄が、偽りの聖女候補になって王弟に溺愛されるまで~妹を殺した奴らに、ハッピーエンドなど与えない~

妹を殺された兄が、偽りの聖女候補になって王弟に溺愛されるまで~妹を殺した奴らに、ハッピーエンドなど与えない~

last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-29
Oleh:  あおはなTamat
Bahasa: Japanese
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故郷の国で騎士副団長・ヨシュアは、妹・リリスの急死の報せを受ける。 ヨシュアはすぐに気づく――これは、仕組まれた事だと。 妹の死の直後、王都では「神に選ばれた聖女」として一人の少女・クララが現れる。 彼女はまるで物語の筋書きを知っているかのように振る舞っていた。 実はクララが転生者であり、妹リリスを殺して『聖女』としてなり替わったのである。 彼女が妹を殺したと確信したヨシュアは、ある禁術を用い、妹と同じ顔を持つ「双子の妹・アリス」へと成り代わる。 復讐のために、舞台に立つために、そして、クララの『物語』をぶち壊すために。 このお話は、転生者である少女をぶち壊し、殺された妹の無念を晴らす兄の話

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Bab 1

第01話 死の報せと、焼け焦げた花

 メイヴの国境を、冷たい風が常時蹂躙していた。

 灰と砂を巻き上げる風は、金属の匂いを纏い肌を容赦なく刺す。

 荒涼とした大地に築かれた砦は、凍てつくような孤独と、いつ果てるとも知れない戦いの匂いに満ちている。

 その最奥、簡素な執務室で、俺は報告書に目を滑らせていた。

 壁の蝋燭がわずかに揺れ、筆跡の影が意味もなく蠢く。

「……副団長。王都からの急使です」

「急使?」

 部下の声は、いつもより幾分か硬く、焦りを滲ませていた。

 顔を上げれば、砂にまみれた黒いマントの使者が疲労と使命感に苛まれた顔で、やや躊躇いがちに封書を差し出す。

 その所作の一つ一つが、ただならぬ事態を告げていた。

 蝋封には、他でもない王国神殿の紋。

 神聖にして不可侵、その厳かな印がこの荒れた国境の砦に届くこと自体が異常だった。

 胸に、不快なざわめきが走った。

 それは予感というにはあまりに冷たく、重く、底知れない不吉を伴う。

 血潮が逆流するような、全身が凍りつくような感覚。

 俺は黙ってそれを受け取り、ゆっくりと、しかし有無を言わせぬ所作で封を切った。

 紙の硬質な感触が指先に鈍く伝わる。

 わずかに震える指先は、まるで己のものでないかのように。

 否、この世の全てが突如として現実味を失い、遠い幻覚のように感じられた。

 ──リリス=グレイヴ、急性肺疾患により死去。

「……は?」

 目の前の文字に、俺は思わず声を出してしまった。

 あまりにも鮮烈な現実の暴力として、網膜に焼き付いた、たった十数文字。

 簡潔にして無味乾燥、だがその羅列が告げる事実は俺の認識を根本から破壊する。何度読み返そうと、その事実は変わらない。

 妹の名がそこにあり、「死」の文字が記されている。

 それは、冷たく、乾いた、ただの報告書。

 しかし、その報告書は俺の全存在を嘲笑うかのようにそこに存在していた。

「……病気、だと?」

 俺は椅子を蹴り飛ばし、轟音を立てて報告書を机に叩きつけた。

 木製の天板が軋み、蝋燭の炎が激しく揺らめく。

 怒りでも、混乱でもない──ただ、ただ信じられなかった。

 信じたくなかった。理解することを拒絶した。

(……あの子が病気で死んだ?まさか、そんなはず)

 リリスは幼い頃から病一つせず、その清らかな魂は常に奇跡に寄り添っていた。

 神官すら目を見張るほど、彼女の存在そのものが神に祝福された証。

 僅かな傷すら、翌日には癒えていたほどに。

 彼女の身体は、誰よりも神に愛されていたはずだ――だからこそ、聖女候補として王都に召し上げられたのだ。

 その彼女が、突然の『急死』?

 しかも死因はありふれた『急性肺疾患』?

 そして極めつけはこの内容。

 ――遺体の返還は『事情により不可能』」

 と言う言葉であり、不自然極まりない追記。

 ふざけるな。それは「殺した」と告げているに等しい。

「ふ、副団長!?」 

 俺は無言で執務室を飛び出す。

 部下である男が自分を呼び止めたが、そんなのどうでも良かった。

 扉が壁に叩きつけられる鈍い音が、その声が、遠く響くだけ。

 耳鳴りのように、遠ざかる世界の音として。

 夜、砦の裏庭に出る。

 冷たい風が、乾いた砂埃を巻き上げ、俺の熱を帯びた頬を撫でていく。

 リリスが好きだった白花──メイヴローズが、風に揺れていた。

 その白い花弁は、この星のどんな宝石よりも純粋で、穢れを知らなかった。

 ――私、この花大好きなの。

 乾いた土地に、彼女が幼い頃「白が好き」と植えつけた花。

 その小さな命は、彼女自身のようにこの不毛な環境で奇跡的に咲いていた。

 まだ、咲いている――俺の心臓が止まったかのように、世界が凍り付いたかのようなこの夜に、まだ。

 細く、儚いその茎を、俺は握り締めた。

 指の力が、意志とは無関係に強まっていく。

 花弁が指の間で潰れ、きしりと──鈍い音がした。

 その音は、俺の心臓の奥底で、何かが決定的に砕け散る音と重なった。

「……お前は、病気なんかで死ぬような子ではなかっただろう」

 声は、風に掻き消える。

 その言葉が、誰に届くはずもない虚空へと吸い込まれていく。

 ふと、頬を伝うものがあった。

 肌に触れる冷たさに、涙かと思えば、違う。

 汗でもない――ただ、夜気に冷え切った空気が、俺の右目の火傷を刺しただけだ。

 右目の周りが、じんと灼けるように痛んだ。

 その痛みは、記憶の奥底に封じ込めていた鮮烈な炎の記憶を呼び覚ます。

 昔、火事の中でリリスを庇い、負った火傷。

 あの時、俺は彼女の命と引き換えにこの醜い傷と、そして彼女を守り続けるという誓いを得た。

 醜い傷――だが鏡に映るたび、思い知らされる。

 あれは、あの子の命と引き換えに得た、俺の生だ。

 その痛みが、俺が兄である証。

 唯一の、家族の証。

 何よりも尊い、俺とリリスを繋ぐ絆の証……それを、殺された?その絆を、引きちぎられた?

 その瞬間、俺の中で何かが音を立てて、砕け散る。

 もう元には戻らない。

 俺という存在を構成していた全てが、復讐というたった一つの感情に塗りつぶされる。

 焼け焦げた花の匂いが、風に乗り掻き消されていく。

 リリスの生きた証が、この世界から、そして俺の記憶から消え去ろうとしているかのように。

 たった一枚の報告書が、この世で最も愛しいモノを『死者』に変えたのだ。

 俺は静かに、しかし、その内側に鋼鉄の意志を宿して拳を握り潰した。

 指の骨が軋む音は、誓いのようだった。

「世界中が許しても……俺は、絶対に、許さない」

 俺の言葉は、もはや風には掻き消されない。

 俺自身の魂に刻み込まれる、絶対的な命令だった。

 夜空を見上げた。広がる星々の向こうにもし神がいるというのなら、連れ戻せ。

 さもなくば、俺がすべてを奪い返す。

 お前が選んだ『聖女』を──この俺が、この手で、殺す。

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第01話 死の報せと、焼け焦げた花
 メイヴの国境を、冷たい風が常時蹂躙していた。 灰と砂を巻き上げる風は、金属の匂いを纏い肌を容赦なく刺す。 荒涼とした大地に築かれた砦は、凍てつくような孤独と、いつ果てるとも知れない戦いの匂いに満ちている。 その最奥、簡素な執務室で、俺は報告書に目を滑らせていた。 壁の蝋燭がわずかに揺れ、筆跡の影が意味もなく蠢く。「……副団長。王都からの急使です」「急使?」 部下の声は、いつもより幾分か硬く、焦りを滲ませていた。 顔を上げれば、砂にまみれた黒いマントの使者が疲労と使命感に苛まれた顔で、やや躊躇いがちに封書を差し出す。 その所作の一つ一つが、ただならぬ事態を告げていた。 蝋封には、他でもない王国神殿の紋。 神聖にして不可侵、その厳かな印がこの荒れた国境の砦に届くこと自体が異常だった。 胸に、不快なざわめきが走った。 それは予感というにはあまりに冷たく、重く、底知れない不吉を伴う。 血潮が逆流するような、全身が凍りつくような感覚。 俺は黙ってそれを受け取り、ゆっくりと、しかし有無を言わせぬ所作で封を切った。 紙の硬質な感触が指先に鈍く伝わる。 わずかに震える指先は、まるで己のものでないかのように。 否、この世の全てが突如として現実味を失い、遠い幻覚のように感じられた。 ──リリス=グレイヴ、急性肺疾患により死去。「……は?」 目の前の文字に、俺は思わず声を出してしまった。 あまりにも鮮烈な現実の暴力として、網膜に焼き付いた、たった十数文字。 簡潔にして無味乾燥、だがその羅列が告げる事実は俺の認識を根本から破壊する。何度読み返そうと、その事実は変わらない。 妹の名がそこにあり、「死」の文字が記されている。 それは、冷たく、乾いた、ただの報告書。 しかし、その報告書は俺の全存在を嘲笑うかのようにそこに存在していた。「……病気、だと?」 俺は椅子を蹴り飛ばし、轟音を立てて報告書を机に叩きつけた。 木製の天板が軋み、蝋燭の炎が激しく揺らめく。 怒りでも、混乱でもない──ただ、ただ信じられなかった。 信じたくなかった。理解することを拒絶した。(……あの子が病気で死んだ?まさか、そんなはず) リリスは幼い頃から病一つせず、その清らかな魂は常に奇跡に寄り添っていた。 神官すら目を見張るほど、彼女の存在そのものが神に
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