【オーレリア視点】オリオンの瞳の奥に宿る深い恐れを見て、私の胸はきゅうと痛くなった。「オリオン……」私は両手で、彼の頬を優しく包み込んだ。「どうして、そんなことを考えるの?」「君が彼を、どれほど深く愛していたかを知っているからだ」オリオンはひどく静かに言った。その声には、長年の痛みが滲んでいた。「自分の全てを捨てるほど、あいつを愛していた」私はしばらく黙っていた。それから、ゆっくりと口を開いた。「あなたに一つ、打ち明けなければならないことがあるの」私は彼の手を強く握った。「七年前のことよ」オリオンが私をじっと見つめ、静かに続きを待っている。「あの卒業の夜、私があなたのプロポーズを断ったのは、あなたのことが嫌いだったからじゃないわ」声が、少しだけ揺れた。「むしろ……あなたのことを、誰よりも大切に想っていたから」オリオンの瞳に、明らかな驚きの色が走った。「じゃあ、なんで……」「家同士の政略の駒にされることが、どうしても嫌だったのよ」私の口元に、苦い笑みが浮かんだ。「父が私の人生の全てを、まるで血の通わない取引のように勝手に決めてしまうことが、私にはどうしても受け入れられなかった」「政略結婚ではなく、私自身で選んだ愛が欲しかった」彼の目を真っ直ぐに見つめた。「だからヴィットリオと出会ったとき、彼こそが私がずっと探していた運命の人なのだと錯覚した。誰かにあてがわれた相手ではなく、自分が選び取った相手なのだと」オリオンが、私の手を強く握り返してきた。「私はヴィットリオを、ただの逃げ道にしていた。あなたから逃げるための、そして父の決めた人生から逃避するための口実だったの」目頭に熱い涙が込み上げた。「あなたを深く傷つけてしまって、ごめんなさい、オリオン。本当にごめんなさい」「オーレリア……」オリオンの声が、感極まって詰まった。「でも、今ははっきりとわかるの」私は涙のまま彼に微笑んだ。「本当の愛とは、運命から逃げることじゃなく、自分の意志で選び取ることだって。そして私は今、あなたを選ぶ。家の取り決めで仕方なくだからじゃない。どんなに私が惨めなときでも、無条件で私を愛してくれるのは、世界中であなただけだから。私が一番辛かったとき、あの地獄から連れ出してくれたのはあなただった。深い絶望の淵にいた私に、光という希望をくれ
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