「ははっ! 若ちゃんってホントに可愛いなぁ……」 もうすぐ三十一階に着く、というところで彼はそう言いながら、わたしにキスをした。 「……あ、ごめん。口紅――」 「大丈夫ですよ。寛斗さんにかってもらった落ちにくい口紅つけてますから」 「そっか、よかった」 そう安心したように言う彼に、今度はわたしからキスを返した。 「……若ちゃん、なんか最近積極的になったな」 彼がそんな感想を漏らしたのと、エレベーターの「ピンポン♪」という到着音が鳴ったのはほぼ同時だった。 「そうですか? ……あ、着きましたよ」 「……えっ?」 「エレベーター。着きましたって」 「ああ、なんだそっちか」 彼は何に戸惑っていたんだろう? 「そっちか」って? ……もしかして「つきました」がエレベーターのことじゃなくて、「やっぱり口紅が付きました」の方だと勘違いしたのだろうか? 「寛斗さんって、けっこうおっちょこちょいなんですね」 「ん? 何か言った?」 「いいえ、何でも~♪」 聞き咎めた寛斗さんに歌うように答え、わ
Leer más