溺愛御曹司の恋愛指南♡ ~初恋女子はお坊っちゃまから愛されすぎる~ のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

47 チャプター

カミングアウトと初めての大きな仕事 Page3

 二重丸のついた必要経費の項目の中にも、どこか金額を抑えられる部分があるはずだ――。 会場の賃貸費用と設営費、人件費はどう考えてもムリ。それならグッズ発注のコストは?  「……これ、ちょっと高すぎるかも」  その金額に違和感をおぼえたわたしは、試しにイベントやライブなどのグッズにかかるコストの相場を調べ、その相場での発注費の見積もりを取ってみる。その金額と資料にあるグッズ発注費の金額の差を計算してみると、資料の金額は相場より二割ほど高いことが分かった。  美緒に一度確認してもらおうと思ったけれど、彼女も自分に割り振られた仕事で忙しそうだ。ここは寛斗さんに直接報告した方がいいだろうと思い、わたしはパソコンと、自分が作ってみた手書きの見積もりのメモを手に立ち上がって彼のデスクへ向かう。デスク自体はすぐ側にあるのだけれど、衝立があるので直接は話しかけられないのだ。 「――寛斗さん、ちょっとこれを見て頂いていいですか?」 「どうした、佐々本さん?」 「この、グッズの発注費の項目なんですけど。一般的なイベントなどのグッズ発注費の相場を調べて見積もりを取ってみたら、こちらの方が二割くらい高くコストがかかることが分かったんです。これがその見積もりです」  わたしはパソコンの画面を開き、見積もりのメモを彼のデスクの上に広げた。 「これが絶対に必要な経費だということは、美緒から聞きましたけど。この数字で試算を出すと、想定より低い金額の純利益しか出ないことも分かってます」 「なるほど……。俺はそこまで気づかなかったな。さすがは元経理部のエースだ」  寛斗さんはお世辞なのか本心からなのか、わたしをそんなふうに褒めた。そりゃ、好きな人を褒めたくなる気持ちは分からなくも
last update最終更新日 : 2026-05-29
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カミングアウトと初めての大きな仕事  Page4

「――お忙しいところを失礼致します。わたくし、連城ホールディングス経営戦略部の佐々本と申します。弊社が七月に開催しますイベントで販売するグッズを、御社に発注させて頂きたいのですが――」 もうすぐ終業時間という頃、わたしはネットで検索して見つけ、三十軒ほどリストアップしてあったメーカーさんに片っ端から電話をかけていた。 「……はい。……そうですか……。分かりました。……いえ、お時間を取らせてしまい、申し訳ございませんでした。失礼致します」 断られたのもこれで二十七軒め。――ため息をつきながら受話器を置き、リストに赤ペンでバツ印をつけた。 次は二十八軒め――。ここでも断られたら、最悪全滅かもしれない。どのみち、今日はこれで終わりだろう。 ……いや、まだ希望は捨てちゃいけないと思い直し、また受話器を取り上げてボタンを押した。 「――はい。……えっ、本当ですか!? はい! では明日にでも、見積もりと発注書を持って弊社にお伺いします。――はい。ありがとうございます! 失礼致します」 二十八軒めに電話した吉田商店さんからいいお返事を頂くことができ、わたしは大きな喜びの中で受話器を置いた。 「…………はぁー、よかったぁ」 まだ「一度話を聞きたい」と言われただけで、受けてもらえることが決まったわけじゃないけれど。わたしの中には小さな達成感が生まれた。リストの吉田商店さんの欄に丸印をつけ、寛斗さんのところへさっそく報告に行く。 「――寛斗さん! グッズの新しい発注先が決まりそうです」 「えっ、もう!? 佐々本さん、仕事が早いな」 「はいっ! こちらの吉田商店というメーカーさんが、一度話を聞きたいって。明日にでも見積もりと発注書をお持ちしますってお伝えしました」 「明日にでも……って、これから書類作るのか? 残業になってしまうけど」 間もなく夕方五時。もう終業時間だ。今からやったら間違いなく彼の言うとおり残業になってしまうけれど、彼は基本的に部下には残業をさせない主義みたいだ。 「明日の朝イチでやります。お約束の時間は十一時なので、それには絶対に間に合わせますから」 「……分かった。それなら大丈夫だな。君は仕事が早いから」 「…………ありがとうございます」 彼はただ上司としてわたしを褒めてく
last update最終更新日 : 2026-05-30
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カミングアウトと初めての大きな仕事 Page5

 ――翌日の朝。いつもより早く出社したわたしは、さっそくデスクのパソコンで吉田商店にお持ちするための見積もり書と発注書を作成し始めた。 寛斗さんからアドバイスのあったとおり、一般的な相場の範囲内でいちばん高い金額で見積もりを取ってみると、やっぱりアイワ商事に出そうとしていた発注書の金額よりも低くなった。 実は昨夜、家で簡単なメモ程度のものを作ってあったので、今はそれをまとめるだけでいい。「……よし、できた!」「――おはよう、佐々本さん。今日は早いな」 ちょうど書類が出来上がったタイミングで、寛斗さんが出勤してきた。「あ、おはようございます。書類、できました」「えっ、もうできたのか!? 若菜ちゃん、シゴデキすぎだろ!」「いえいえ、そんな! ……実は昨夜、家に帰ってから見積もりだけ簡単なメモ程度に作ってあったんです。だからそんなに時間はかかりませんでした」「そうかそうか。じゃあ、出来上がった書類、さっそく俺に見せてくれ。社長からも決裁もらって来ないといけないから」「はい。こちらが見積もり書、こちらが発注書です」 わたしは二枚の書類を寛斗さんに手渡す。彼はそれに目を通し、満足そうに頷いた。「ありがとう。……うん、やっぱり俺の見立てどおり、アイワ商事に出そうとしてた金額より少なくなったな」「そうですね。ウチの会社、今まであのメーカーさんからどれだけ高い金額ふっかけられてたんだって、わたしも計算しながらビックリしてました」「今回、発注先を変更することにして正解だったよ。それじゃ俺は、社長からこの見積もり書の決裁をもらって来るから。あと、吉田商店さんのウェブサイトか何かあったらプリントアウトしてくれないか」「そう言われると思って、今印刷してます。……はい、これですね」 ちょうど今プリンターから吐き出されてきた資料をわたしはクリップで閉じて、寛斗さんに渡した。 そういえば、彼は社長であるお父さまのことを会社では「父さん」とは呼ばない。そういう点でも、仕事にプライベートを持ち込まないということを実践していると言えるのだけれど。じゃあどうして、わたしのことは会社でも平気で「若菜ちゃん」と名前で呼ぶのだろう? それだけが不思議で仕方ない。「ありがとう。じゃ、行ってくる」「行ってらっしゃい。お願いします」 彼は発注書だけをわたしに返
last update最終更新日 : 2026-06-01
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カミングアウトと初めての大きな仕事 Page6

 ――そして約束していた十一時前、わたしは寛斗さんと一緒に吉田商店さんのある人形町にいた。 最初はわたし一人で行こうとしていたのだけれど、寛斗さんが「俺も一緒に行くよ」と言って下さったのだ。そして、車だと交通事情で約束の時間に遅れるかもしれないと思い、電車でここまで来たのだった。「――で、吉田商店ってどの辺りなんだ?」「ええと、ナビによれば……この辺りだと……」 スマートフォンのナビを頼りに、わたしは歩きながら寛斗さんに説明する。「……あ、ここですね」 吉田商店は、そこそこな規模の町工場だった。アイワ商事ほど大きな会社ではないけれど、町工場の中では大きい方だと思う。  インターフォンを押すと、五十代くらいの社長さん自ら わたしたちを出迎えて下さり、社長室の応接スペースに通されてお茶まで出して下さった。「吉田さん、本日はお時間を割いて頂いてありがとうございます。昨日お電話を差し上げた、連城ホールディングスの佐々本です。そしてこちらが――」「彼女の上司の連城と申します」「これはご丁寧にどうも。吉田です」「お名刺、頂戴致します」 名刺交換を済ませると、出された緑茶を頂くのもそこそこにさっそく仕事の話に入った。「――吉田さん、昨日お電話でもお伝えした件なのですが。こちらが、そのイベントの資料です。このイベントで販売予定のグッズを御社に製造して頂きたいんです」 わたしは資料のコピーを吉田さんに手渡し、目を通し終えた頃に見積もり書と発注書をローテーブルの上に置いた。「こちらが見積もり書です。一般的な相場の範囲内でもっとも高い金額で材料費や人件費、その他コストなどを計算して弊社がご提示できる金額がこちらになりましたが、よろしいでしょうか?」「弊社と致しましては、このイベントの収益の何割かを御社にも分配したいと社長が申しております。御社とはこの先も末永いお付き合いをしたいと。よろしくお願い致します」「……この仕事、納期は?」 わたしと寛斗さんの話に耳を傾けて下さっていた吉田さんの口から、「納期」という言葉が出てきたので、わたしたちは目を見合わせた。「イベントの初日が七月十日ですので、その前日までに納品して頂ければ。二ヶ月ほどしかありませんが、大丈夫でしょう
last update最終更新日 : 2026-06-02
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彼はニセモノの御曹司? Page1

 ――あれから二週間が経ち、イベントの準備は着々と進んでいる。今はわたしも次の仕事に取りかかっていて、やっと経営戦略部の正式な一員となれたようで嬉しい。 そして、恋愛の面でも変化があった。寛斗さんがあれから〝本気〟になったらしく、わたしに対して溺愛モード全開になったのだ。 毎日「おはよう」と「おやすみ」のメッセージは欠かさないし、会社でも事ある毎にキスやスキンシップをするようになった。もちろん、わたしも彼のことが好きだから拒まないけれど、もうちょっと時と場合を考えてほしいなぁとは思う。 昨日のデートでは(今日はちなみに月曜日だ)、彼はわたしに洋服やコスメ、アクセサリーなどをドッサリ「プレゼントだ」と言って買ってくれた。決してわたしからねだったわけではなく、彼がそうしたいと言って。前にもらったコロンもそうだったけれど、服やコスメはともかくアクセサリーも自分で買ったことはなかったし、自分で買うという選択肢もなかったので嬉しかった。「……よし、こんな感じかなぁ。可愛いじゃん」 朝、メイクと着替えを終えた後、自分の部屋でドレッサーの鏡に向かってイヤリングをつけていたわたしは、「うん」と満足げに頷いた。 今日着ている服一式も、このイヤリングも寛斗さんから昨日プレゼントされたものだ。あと、靴も。値段の張るジャケットにスカート、ブラウスはボタンを二番目まで開けて着るのがオシャレだというデザインのもの。胸元が少し開きすぎかなぁとドキドキする。「――若ちゃん、支度できた? もう朝ゴハンできてるわよ」「うん、今行く!」 部屋の外から呼んでいる母に答え、わたしは通勤用のバッグとスマートフォンを掴んでダイニングへ向かった。 ウチの朝ゴハンは毎朝和食で、テーブルの上にはお茶碗に盛られたごはんと具だくさんのお味噌汁、そして玉子焼きが並べられている。「おはよ、お母さん」「おはよう、若ちゃん。あら、そのイヤリングいいじゃない」「えっ、ホントに? これね、昨日寛斗さんからもらったの。可愛い?」「うん、可愛い可愛い。……さ、朝ゴハン食べよう?」「はぁい。いただきます」 わたしはテーブルに着き、朝ゴハンを食べ始めた。 母が作ってくれる玉子焼きは甘い方ではなくしょっぱい方で、幼い頃からこの味に慣れているのでわたしは甘い玉子焼きが苦手である。「お弁当も作ってお
last update最終更新日 : 2026-06-03
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彼はニセモノの御曹司? Page2

「――おはよ、美緒!」 母が用意してくれた二人分のお弁当を持って、いつもどおりの時間に出社予定したわたしは一階のロビーで美緒と落ち合った。「おはよ、若菜。あれ? 今日はなんか大人っぽいね。服とか靴もそうだし、イヤリングしてるのも初めて見たよ」「えへへっ♡ これ全部、昨日寛斗さんが買ってくれたの。ね、胸元開きすぎじゃないかな?」「ううん、それくらいなら大丈夫なんじゃない? 可愛いよ。でも、若菜は最近部長の色にドップリ染まってる気がするなぁ」「うん、自分でもそう思う。今の寛斗さんは溺愛モード全開だからね。でも、それが全然イヤじゃないの。むしろ、わたしもそれが心地よくてね。大好きなんだ」「あらまぁ、ごちそうさま。で、その二人分のお弁当? もう一つは部長の分でしょ?」 美緒はわたしが持っている二つの保冷バッグを指さした。「そうだよ。って言っても、作ったのはわたしじゃなくてお母さんだけど。寛斗さんね、お母さんの玉子焼きがお気に入りみたいなの。まあ、わたしも同じ味付けで作れるけどね」「そうなんだ? 部長、〝おふくろの味〟ってヤツに憧れてるのかなぁ。少なくとも、お母さまの手料理は食べさせてもらったことないとか」「そうかも。セレブってなんか淋しいよね」 お金を出せばいくらでも美味しいものは食べられるけれど、〝おふくろの味〟だけはお金をいくら払っても代わりのものが食べられるわけじゃないのだ。「そういえばわたし、寛斗さんのお母さまのこと何も知らないんだけど。美緒は聞いたことある?」「いや、あたしもないなぁ。っていうか、彼女の若菜にも話さないこと、ただの部下であるあたしに話すと思う?」「……ううん、ないよね」「でしょ?」 それもそうだ。彼は基本的に、仕事にプライベートを持ち込むような人じゃない(わたしとの恋愛は別にして)。家族の話題なんて、部下にペラペラしゃべるわけがないのだ。それはわたしも分かっているけれど、せめてわたしくらいには話してくれてもいいのになぁと淋しい気持ちになる。 わたしはまだ、そこまで彼に心を許してもらってはいないんだろうか……?「――あら、藤崎さんに佐々本さん。おはよう」 と、そこにやたら険を含んだ女性の声が。振り返ると、やっぱり声の主は美咲さんだった。今日もケバケバしく、寛斗さんからも注意されたのに相変わらず香水の匂
last update最終更新日 : 2026-06-05
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彼はニセモノの御曹司? Page3

「――おはようございます、寛斗さん」「連城部長、おはようございます」「ああ、おはよう。……おっ? その服、昨日俺がプレゼントしたヤツだよね? イヤリングも。よく似合ってるよ。うん、可愛い」 オフィスに入って美緒と一緒に寛斗さんに挨拶すると、彼は開口一番にわたしの服装を褒めてくれた。「ありがとうございます。寛斗さん、これ。寛斗さんのお弁当です。……って言っても、今朝は母が作ってくれたんですけど」「おお、ありがとう! そうだ、今日は二人で一緒に食べないか? たまにはいいだろ?」「えっ? そのお誘い、すごく嬉しいんですけど……。お昼は美緒と社食に行く約束をしてて――」 お弁当を持ってきていても、二人で一緒に社員食堂でお昼を食べるのがわたしと美緒の日課みたいになっていたのだけれど……。「たまにはいいんじゃない? あたしのことはお構いなく♪」「ほら、藤崎さんもこう言ってくれてるしさ」「……そうですね。じゃあ、今日のお昼休みは一緒にお弁当を食べましょう」 美緒のことを気にしていただけで、お誘い自体はイヤじゃなかったので、わたしは笑顔で頷いた。 お付き合いを始めてから夕食は一緒することが多くなったけれど、お昼ゴハンを一緒に食べるのは今日が初めてだ。時々はイチャイチャしながらお昼休みを一緒に過ごす機会も、職場恋愛の恋人同士には必要かもしれない。「ああ、約束な」「はい!」 彼はいつもお弁当をキレイに平らげてくれるので、母もわたしも作り甲斐がある。彼がいかに美味しそうに食べてくれるのか、今日初めて目の当たりにできるのだ。 美緒も言っていたけれど、寛斗さんはやっぱり〝おふくろの味〟が恋しいのだろうか? どうしよう。今、すごく訊いてみたい……!「……あの、寛斗さん。ちょっとお訊きしたいことがあるんですけど」「ん? なに?」「えっと……」 本題に入りかけたところで、他の人たちもゾロゾロと出勤してきた。周りの目も気になるし、プライベートな話題なので職場で訊くようなことでもないだろう。「……ごめんなさい、やっぱり今はいいです。またお昼休みに」「…………そうか。分かった」 わたしは彼がプライベートでどんな問題を抱えていても何の問題もないけれど、他の人たちはどうか分からない。それに、いちばん気にしているのは寛斗さん本
last update最終更新日 : 2026-06-06
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彼はニセモノの御曹司? Page4

 ――午前の仕事はわたしにしては珍しく、小さなミスがいくつかあった。寛斗さんが抱えているであろう、プライベートな問題が気になって仕方がなかったからだ。それでも致命的なミスではなく、「次から気をつけてね」と寛斗さんから注意を受けただけで済んだ。  そしてお昼休みのチャイムが鳴り、他の人たちは社外や社員食堂でランチを摂るためにオフィスを出ていく。美咲さんもその中にいた。 残ったのはわたし、寛斗さん、美緒の三人だけ。 「――じゃあ、あたしも社食行ってきますんで。二人で仲よくお弁当食べて下さい。部長、若菜のことよろしくお願いしますね」 「うん、分かった。じゃあ、俺たちはここで食べる?」 「そうですね、誰もいませんし。美緒、行ってらっしゃい」  美緒を見送ると、わたしは自分のキャスター付きの椅子を寛斗さんのデスクまで転がしていき、そこでお弁当を広げることにした。 「いただきます」 「いただきま~す。――おっ、今日のメインはミニハンバーグか。美味そうだな」  彼はお弁当箱のフタを開けると、子供みたいに歓声を上げた。きっと、いつもこんなふうに一人で(……かどうかは分からないけれど)喜んでいるんだろうな。何だか可愛い。  わたしのお弁当の中身も同じで、メインのおかずはハンバーグ。その他にもフライドポテトやウィンナー、ほうれん草のソテーにマカロニサラダなどが入っている。もちろん、母特製の玉子焼きも。 「……うん、今日も美味い。それに栄養バランスもバッチリだな」 「ですね。美味しい。わたし、まだまだ母には敵わないな
last update最終更新日 : 2026-06-07
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彼はニセモノの御曹司? Page5

「養父と養母には子供ができなかったらしくてね。俺は二歳の頃に施設から引き取られたんだって。それからは養父の――連城家の跡取りとなるべく厳しく教育された。俺も養父の期待に応えようと思って、常に完璧であろうとしてたんだ。そんな俺にとっての癒しが若ちゃん、君だったんだよ」「それじゃ……、領収書に日付を書かなかったのはわざとだったんですか? わたしに会いに来るために」 寛斗さんは完璧主義だと周りの人たちは言っているのに、わたしの知っている彼はそうじゃなかった。でも、わたしだけが知っている姿が、本当の寛斗さんという人なのかもしれない。「うん。元々の俺は多分、そんなに完璧主義なんかじゃないんだ。君と話してる時だけは背伸びせずにいられるから、それがガス抜きというか、息抜きになってたんだよ。……幻滅した? 俺が完璧主義の御曹司じゃなくて」「いえ、そんなのわたしには関係ないです。社長と血の繋がりなんてなくたって、あなたは立派な連城家のお坊っちゃまで跡取りであることに変わりはないじゃないですか。それに、わたしはあなたのこと、お坊っちゃまだから好きになったんじゃありません。連城寛斗さんっていう一人の男性を好きになったんです。だから、そんなことじゃ幻滅なんてしませんよ」 彼の身分なんて関係なく、わたしはきっと好きになっていた。これがわたしの本心で、これだけでも彼に伝わてほしい。「……ありがとう、若ちゃん。俺、君に嫌われたら多分生きていけないからさ。よかった」「わたしが寛斗さんのこと嫌いになるなんてあり得ませんよ。DVとか平気でしてきたり、騙されたりしたらあるかもしれないですけど。寛斗さんはそういうことするような人じゃないですもんね」「ないない! 俺に限ってあり得ない! だって俺、君のこと大好きだからさ」「ですよね。分かってますよ」 わたしのことを大好きじゃなければ、ここまで甘々に溺愛することもないだろう。独占欲もたまには見せるけれど、あんなのはまだ可愛いものだ。「――あの、寛斗さん。そういえばわたしへの恋愛レッスンってまだ続いてるんでしたっけ? なんか今、普通にお付き合いしてるような気がするんですけど」 そもそも、わたしたちが付き合い始めたキッカケはわたしへの恋愛レッスンという名目だったはずだ。ここ数週間で、それがどこかへ行ってしまっ
last update最終更新日 : 2026-06-08
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彼はニセモノの御曹司? Page6

「「――ごちそうさまでした」」  その後も楽しくおしゃべりをしながら二人でお弁当を食べ、気がついたら十二時半ごろに二人同時に食べ終わっていた。でも、まだ誰ひとり戻ってくる気配はないので、もうしばらく二人きりの甘い時間は続きそうだ。 「あー、美味しかった! 満足満足♪」 「……寛斗さん、なんかオジサンみたいですよ」  満足そうにお腹をポンポン叩いている寛斗さんが面白くて、わたしはついつい笑ってしまった。彼はまだ二十代なのに。 「俺もそろそろアラサーだからな、オジサン予備軍」 「いやいや、まだ若いですって。わたしと二つしか違わないじゃないですか。太ってないし、むしろ筋肉質だし」  太っていても、それはそれで多分魅力的だとは思うけれど。マスコットキャラみたいで可愛いというか。 「そういう美咲ちゃんも細いよなー。もうちょっとふっくらしてても可愛いと思うけど、……ってごめん。これ、セクハラになっちまうかな」 「いえいえ! 寛斗さんに言われたらハラスメントにはなりませんから大丈夫です」  彼は絶対に、部下に対してのハラスメント発言はしない。さっきの発言だって、わたしへの愛から出た言葉だとちゃんと分かっている。 「――そういえば、寛斗さんって今もご実家で暮らしてるんですか?」  二人して給湯室へ行き、シンクでお弁当箱を洗いながらわたしは彼に訊ねてみた。彼が「自分の食べた分は自分で洗うから」と言っていたからだ。 「いや、南
last update最終更新日 : 2026-06-09
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