二重丸のついた必要経費の項目の中にも、どこか金額を抑えられる部分があるはずだ――。 会場の賃貸費用と設営費、人件費はどう考えてもムリ。それならグッズ発注のコストは? 「……これ、ちょっと高すぎるかも」 その金額に違和感をおぼえたわたしは、試しにイベントやライブなどのグッズにかかるコストの相場を調べ、その相場での発注費の見積もりを取ってみる。その金額と資料にあるグッズ発注費の金額の差を計算してみると、資料の金額は相場より二割ほど高いことが分かった。 美緒に一度確認してもらおうと思ったけれど、彼女も自分に割り振られた仕事で忙しそうだ。ここは寛斗さんに直接報告した方がいいだろうと思い、わたしはパソコンと、自分が作ってみた手書きの見積もりのメモを手に立ち上がって彼のデスクへ向かう。デスク自体はすぐ側にあるのだけれど、衝立があるので直接は話しかけられないのだ。 「――寛斗さん、ちょっとこれを見て頂いていいですか?」 「どうした、佐々本さん?」 「この、グッズの発注費の項目なんですけど。一般的なイベントなどのグッズ発注費の相場を調べて見積もりを取ってみたら、こちらの方が二割くらい高くコストがかかることが分かったんです。これがその見積もりです」 わたしはパソコンの画面を開き、見積もりのメモを彼のデスクの上に広げた。 「これが絶対に必要な経費だということは、美緒から聞きましたけど。この数字で試算を出すと、想定より低い金額の純利益しか出ないことも分かってます」 「なるほど……。俺はそこまで気づかなかったな。さすがは元経理部のエースだ」 寛斗さんはお世辞なのか本心からなのか、わたしをそんなふうに褒めた。そりゃ、好きな人を褒めたくなる気持ちは分からなくも
最終更新日 : 2026-05-29 続きを読む