All Chapters of 咲く前に、愛は枯れた: Chapter 11 - Chapter 12

12 Chapters

第11話

看護師が保管庫を開けると、中は空だった。看護師の顔から、さっと血の気が引いた。「何かの手違いかもしれません。すぐに記録を確認してまいります」けれど湊は、そこでようやく息をついた。心春も、それにつられるようにほっとした顔をした。湊は腕を組み、医師の説明を冷ややかに聞いていた。「東雲さんは、ご本人が手配されていた葬儀社の方に引き取られました。つい先ほどのことです。信じられないのでしたら、防犯カメラを確認していただいて構いません」「もういい。芝居はやめろ。千夏に伝えろ。二日後、結婚式は予定どおり行う。彼女が来なければ、俺は心春と結婚する」湊は医師の言葉を乱暴に遮った。心春は喜びを隠しきれない顔をして、危うく声を出して笑いそうになっていた。二日後、私はやはり現れなかった。湊も嘘はつかなかった。本当に心春の手を引いて壇上に上がり、彼女と結婚式を挙げた。ただ、指輪をはめるときだけ、彼の手はなぜか震えていた。どうしても、心春の指に指輪を通すことができなかった。参列者たちは誰も、新婦が途中で入れ替わるなど思ってもいなかった。戸惑いながらも、どうにか祝福の言葉を贈った。招待客がすべて帰っても、私の姿はどこにもなかった。湊は身支度を直してくると言った。けれど控室に入ると、彼はただぼんやりと立ち尽くした。やがて、彼はスマホを取り出し、珍しく弱気なメッセージを私に送った。【もういいよ、千夏。隠れるのはやめてくれ。出てきてくれたら、すぐに君と入籍する。だから、な?】私は少し呆気にとられた。彼は本当に、私と入籍する気になったのだろうか。今はもう、入籍しようとするたびに心春に悪いことが起きる、なんて思わないのだろうか。湊は心春に何か話があるようだった。けれど思いがけず、彼女が感情をむき出しにして誰かと電話している場面に出くわした。「まだ私から金をせびるつもり?一条湊が私と結婚したって知らないの?これから一条グループは私のものなのよ。あなたに渡した2000万円じゃ、まだ足りないっていうの?」かつて湊の前で優しく、無邪気でか弱そうに振る舞っていた女は、今や目に凶暴な光を宿し、口調まで下品になっていた。電話の向こうから、軽い笑い声が聞こえた。それは、湊の専属医の声だった。「お前は東雲
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第12話

湊は、まばたきすらできなかった。遺体搬送のスタッフが私を運び出していく映像を、ただ見つめていた。すべてを見終えると、医師はため息をついた。「一条さん、これでご納得いただけましたか。当院は本当に、不正な請求などしておりません」その瞬間、湊は何かを思い出したように、私が生前入院していた病室へ駆け込んだ。病室には、すでに別の患者が入っていた。湊が引き出しを乱暴に開けて探り始めると、患者は驚いた顔で声を上げた。「誰ですか、あなた!」湊にはもう、以前のような冷静さはなかった。目を真っ赤にして、声を荒らげた。「薬はどこだ!」そこへ患者の家族が入ってきた。取り乱した湊を見るなり、患者を背後にかばい、怒鳴った。「何なんですか、あなた!何をするつもりですか!」「薬はどこだ……」湊は正気を失ったように、同じ言葉を繰り返すことしかできなかった。家族は「ああ」と思い出したように声を上げ、ポケットから白い薬の瓶を取り出して床に放った。「あんた、前にここに入ってた人の家族?痛み止め一つくらいで騒がないでくださいよ。大した金額でもないでしょうに、そんな立派な格好して、ずいぶんケチなんですね」薬の瓶が、湊の足元へ転がった。彼はそれを拾い上げた。次の瞬間、湊の目から涙がこぼれた。「本当だったんだ……」私は、湊が魂を抜かれたように自宅へ戻り、丸一日閉じこもるのを見ていた。一睡もしていない彼の前に、心春が媚びるような笑みを浮かべて現れた。湊は何も言わず、彼女の頬を叩いた。「誰か、この女を連れていけ」心春は目を見開き、湊の足元にすがりついた。「湊さん、私が何をしたっていうの?」湊は少しの情けも見せず、彼女を階段から蹴り落とした。心春が額から血を流しても、その目は少しも揺れなかった。「心春、お前が千夏を殺したんだ。お前は最初から、千夏のための血液の保険でしかなかった。千夏がいなくなった今、お前を生かしておく意味がどこにある?」心春の目に恐怖が広がった。彼女が何か言うより先に、湊は鞭を取り出した。999回。彼は心春を打ち続けた。最初のうち、心春は泣き叫び、床に額をこすりつけて許しを乞うていた。けれど最後には、もう声すら出せなくなっていた。それから湊は、大型犬を連れてこ
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