看護師が保管庫を開けると、中は空だった。看護師の顔から、さっと血の気が引いた。「何かの手違いかもしれません。すぐに記録を確認してまいります」けれど湊は、そこでようやく息をついた。心春も、それにつられるようにほっとした顔をした。湊は腕を組み、医師の説明を冷ややかに聞いていた。「東雲さんは、ご本人が手配されていた葬儀社の方に引き取られました。つい先ほどのことです。信じられないのでしたら、防犯カメラを確認していただいて構いません」「もういい。芝居はやめろ。千夏に伝えろ。二日後、結婚式は予定どおり行う。彼女が来なければ、俺は心春と結婚する」湊は医師の言葉を乱暴に遮った。心春は喜びを隠しきれない顔をして、危うく声を出して笑いそうになっていた。二日後、私はやはり現れなかった。湊も嘘はつかなかった。本当に心春の手を引いて壇上に上がり、彼女と結婚式を挙げた。ただ、指輪をはめるときだけ、彼の手はなぜか震えていた。どうしても、心春の指に指輪を通すことができなかった。参列者たちは誰も、新婦が途中で入れ替わるなど思ってもいなかった。戸惑いながらも、どうにか祝福の言葉を贈った。招待客がすべて帰っても、私の姿はどこにもなかった。湊は身支度を直してくると言った。けれど控室に入ると、彼はただぼんやりと立ち尽くした。やがて、彼はスマホを取り出し、珍しく弱気なメッセージを私に送った。【もういいよ、千夏。隠れるのはやめてくれ。出てきてくれたら、すぐに君と入籍する。だから、な?】私は少し呆気にとられた。彼は本当に、私と入籍する気になったのだろうか。今はもう、入籍しようとするたびに心春に悪いことが起きる、なんて思わないのだろうか。湊は心春に何か話があるようだった。けれど思いがけず、彼女が感情をむき出しにして誰かと電話している場面に出くわした。「まだ私から金をせびるつもり?一条湊が私と結婚したって知らないの?これから一条グループは私のものなのよ。あなたに渡した2000万円じゃ、まだ足りないっていうの?」かつて湊の前で優しく、無邪気でか弱そうに振る舞っていた女は、今や目に凶暴な光を宿し、口調まで下品になっていた。電話の向こうから、軽い笑い声が聞こえた。それは、湊の専属医の声だった。「お前は東雲
Read more