『私は翼を愛してる』 理子先輩のその真っ直ぐな言葉が、僕の心の最も深い場所に、静かに、けれど確かに響き渡った。 愛してる。 この完璧で、大人の余裕があって、でも本当は不器用な理子先輩が、こんな僕を。 胸の奥がじんわりと熱くなって、また視界が滲みそうになる。でも今度の涙は、恐怖や悲しみから来るものじゃない。 「理子先輩……」 「翼、急いで答えを出さなくてもいいのよ。翼の気持ちが固まるまで、何年かかっても、私はずっと待ってるから」 理子先輩は、僕のすべてを包み込むような優しい大人の微笑みを見せてくれた。 でも、僕はゆっくりと、けれどはっきりと首を振った。 「いえ……僕は、今、決めないといけない気がします」 「今?」 「はい……これは僕の人生なんですから。僕自身の口で、ちゃんと決めないと」 僕は理子先輩の手を握ったまま、満天の星空を見上げた。 無数の星が瞬いている。その一つ一つが、まるで僕のこれまでの記憶の破片のように見えた。 「少しだけ、考えさせてください」 「ええ、もちろんよ」 僕は夜の冷たい空気を深く吸い込み、自分の心の中を整理し始めた。 男性に戻る薬を飲むということ。 それは、元の安全な人生に戻るということ。もしかしたら、今のこの息の詰まるような男性恐怖症の問題も、男の身体に戻れば解決するかもしれない。 でも……僕は本当に元に戻りたいのだろうか? 女の子になってからの、この怒涛の三ヶ月間を思い返してみる。 確かに、逃げ出したいほど辛いこともたくさんあった。男性からのいやらしい視線、生理の絶望的な苦痛、そして今回の海での恐ろしいトラウマ。 でも、それと同じくらい……いや、それ以上に、奇跡みたいに素晴らしいこともたくさんあった。 可愛い服を着て鏡の前に立つ楽しさ。リップを塗って自分が綺麗になっていくメイクの喜び。あかりちゃんや美月ちゃんとの、女の子同士の甘くて楽しい友情。 そして何より……理子先輩と一つ屋根の下で過ごした、かけがえのない毎日。 「理子先輩」 「何?」 「僕……女の子になってからのこの三ヶ月間、理子先輩と一緒に過ごした時間が、これまでの人生で一番幸せでした」 「翼……」 「最初は、女の子にされたことが受け入れられなくて、戸惑ってばかりでした。でも、理子先輩がい
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