《放課後、女の子になった僕は、恋とカラダに戸惑っている》全部章節:第 51 章 - 第 52 章

52 章節

Ep.51 星降る夜の決断

『私は翼を愛してる』 理子先輩のその真っ直ぐな言葉が、僕の心の最も深い場所に、静かに、けれど確かに響き渡った。 愛してる。 この完璧で、大人の余裕があって、でも本当は不器用な理子先輩が、こんな僕を。 胸の奥がじんわりと熱くなって、また視界が滲みそうになる。でも今度の涙は、恐怖や悲しみから来るものじゃない。 「理子先輩……」 「翼、急いで答えを出さなくてもいいのよ。翼の気持ちが固まるまで、何年かかっても、私はずっと待ってるから」 理子先輩は、僕のすべてを包み込むような優しい大人の微笑みを見せてくれた。 でも、僕はゆっくりと、けれどはっきりと首を振った。 「いえ……僕は、今、決めないといけない気がします」 「今?」 「はい……これは僕の人生なんですから。僕自身の口で、ちゃんと決めないと」 僕は理子先輩の手を握ったまま、満天の星空を見上げた。 無数の星が瞬いている。その一つ一つが、まるで僕のこれまでの記憶の破片のように見えた。 「少しだけ、考えさせてください」 「ええ、もちろんよ」 僕は夜の冷たい空気を深く吸い込み、自分の心の中を整理し始めた。 男性に戻る薬を飲むということ。 それは、元の安全な人生に戻るということ。もしかしたら、今のこの息の詰まるような男性恐怖症の問題も、男の身体に戻れば解決するかもしれない。 でも……僕は本当に元に戻りたいのだろうか? 女の子になってからの、この怒涛の三ヶ月間を思い返してみる。 確かに、逃げ出したいほど辛いこともたくさんあった。男性からのいやらしい視線、生理の絶望的な苦痛、そして今回の海での恐ろしいトラウマ。 でも、それと同じくらい……いや、それ以上に、奇跡みたいに素晴らしいこともたくさんあった。 可愛い服を着て鏡の前に立つ楽しさ。リップを塗って自分が綺麗になっていくメイクの喜び。あかりちゃんや美月ちゃんとの、女の子同士の甘くて楽しい友情。 そして何より……理子先輩と一つ屋根の下で過ごした、かけがえのない毎日。 「理子先輩」 「何?」 「僕……女の子になってからのこの三ヶ月間、理子先輩と一緒に過ごした時間が、これまでの人生で一番幸せでした」 「翼……」 「最初は、女の子にされたことが受け入れられなくて、戸惑ってばかりでした。でも、理子先輩がい
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Ep.Final 永遠に続く家族の形

「おはよう、翼」 大好きな、優しくて落ち着いた声で目が覚めた。 僕ははち切れそうに大きなお腹を大事に抱えながら、ゆっくりと目を開けた。 「おはようございます、理子先輩」 隣で愛おしそうに微笑んでいる理子先輩を見て、僕も自然と笑顔になる。 あの星空の下で、僕が女の子として生きていくことを決めてから、もう八年もの月日が経っていた。 ひと足先に高校を卒業した理子先輩は、理系の名門大学へと進学し、今では新薬開発の界隈で名の通った若き天才化学者となった。 一方の僕は、大学で教育学を学び、念願だった保育士として働いている。そして今は、都内の日当たりの良いマンションで、二人で穏やかな同棲生活を送っていた。 「お腹の調子はどう? 蹴ってない?」 「うん、今日も元気にぽこぽこ動いてるよ」 僕は自分のお腹を愛おしく撫でた。臨月を迎えて、もうパンパンに大きくなっている。 男だった僕が、自分のお腹の中で新しい命を育み、お母さんになろうとしている。今でも時々、夢なんじゃないかと思うくらい奇跡みたいな毎日だ。 「もうすぐ会えるのね。私たちの赤ちゃんに」 「そうですね……楽しみだけど、初めてのことだから、ちょっと不安もあります」 「大丈夫よ。陣痛の時も、出産も、私がずっと手を握ってついているから」 理子先輩が僕の手を、あの頃と変わらない温かさで強く握ってくれた。 この人と一緒なら、どんなことでも乗り越えていける。 「朝ごはん、作るわね。翼の好きなフレンチトーストでいいかしら」 「ありがとう、理子先輩」 すっかり板についたエプロン姿でキッチンに向かう理子先輩の後ろ姿を見ながら、僕は胸いっぱいの幸せを噛み締めていた。 * * * 僕の妊娠が分かったのは、半年前のことだった。 その少し前に、僕たちは夜のベッドで真剣に話し合ったんだ。 「翼、私たちの将来について、話したいことがあるの」 ある夜、理子先輩が私の髪を撫でながらそう切り出した。 「将来って?」 「結婚のこと……そして、家族のことよ」 理子先輩の真剣な表情に、僕も背筋を伸ばした。 「僕も、理子先輩とずっと一緒にいたいです。おばあちゃんになっても」 「私も同じ気持ちよ。それでね……翼は、子どもは欲しい?」 その質問に、僕は少し考えた。保育士とし
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