《放課後、女の子になった僕は、恋とカラダに戸惑っている》全部章節:第 11 章 - 第 20 章

52 章節

Ep.11 痛みの告白

僕が女の子になってから――つまり、理子先輩との同居生活が始まってから、一週間ほどが経った。 朝、僕が朝食とお弁当を作り、学校に行って授業を受ける。放課後は部活で元に戻る方法を研究して、帰宅する。 そこから僕が夕食を作って、一日を終える――そんな疑似同棲のような日常のリズムが、少しずつ出来上がっていた。 でも、一つだけ、誰にも言えない深刻な問題があった。 「うっ……」 体育の授業中、持久走で走っている最中に、胸のあたりに鋭い痛みが走った。 「翼ちゃん、大丈夫?」 隣を走っていたクラスメイトが心配そうに声をかけてくれる。 「だ、大丈夫……っ」 僕は苦笑いを浮かべて手を振った。でも、実際は全然大丈夫じゃなかった。 走るたびに重い胸が上下に激しく揺れて、それがキツいブラジャーのカップに擦れて痛む。アンダーのワイヤーが肋骨にギリギリと食い込んでいるような感覚で、息も苦しくなってくる。 しかも、この痛みは今日だけじゃない。ここ数日の間、ずっと続いているのだ。 体育館から教室に戻る途中、階段を上がるときにもズキッと痛んだ。 「っう……」 思わず胸元を押さえてしまう。 教室に着いて席に座るとき、前かがみになった瞬間にも鋭い痛みが走った。大きすぎる胸が腕と机に挟まれて、下着の形に沿って圧迫されるような不快感があった。 「翼ちゃん、顔色悪いよ?」 隣の席の桜井さんが、心底心配そうな声で覗き込んでくる。 「あ、大丈夫。ちょっと疲れてるだけだから」 僕は慌てて誤魔化すように笑顔を作った。 でも、桜井さんの表情を見ていると申し訳ない気持ちになる。本当のことを話したいけど、中身が男の僕が胸が痛いなんて相談するのは、あまりにも気恥ずかしくて言えなかった。 「……何か困ったことがあったら、遠慮しないで言ってね。更衣室での約束、忘れてないからね」 「うん、ありがとう」 一緒に買い物に行こうと言ってくれた桜井さんの優しさが身に染みる。 でも、どうしても自分からは言い出せなかった。 * * * 夜、家に帰ってからも、痛みは続いていた。 夕食を作っているときも、まな板に向かって前かがみになるたびに、胸の谷間のあたりが擦れてヒリヒリと痛む。 「翼、大丈夫? なんだか動きがぎこちないし、痛そうに見えるけど
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Ep12. ランジェリーフロアへようこそ

土曜日の午前十時。僕たちは最寄り駅の改札前で桜井さんを待っていた。 理子先輩から借りた、少し大きめの白いニットワンピースに身を包み、足元は慣れないローヒールのパンプス。 休日のお出かけなんて、男だった頃は適当なシャツとジーンズだったのに、今は準備をするだけで一苦労だった。 「おはよう、翼ちゃん」 桜井さんが手を振りながらやってきた。今日はベージュのニットにデニムのロングスカートという出で立ちで、いつもの制服とは違った大人っぽい魅力がある。 「おはよう、桜井さん」 ちなみに、理子先輩も普段の学校でのかっちりした服装とは違って、ふんわりとした白いブラウスにカーキのフレアスカートを合わせている。休日用のべっ甲フレームの眼鏡もかけており、とても知的で素敵だった。 「それじゃあ、行きましょうか」 三人で電車に乗り込む。隣町の大型ショッピングモールまでは、電車で三十分ほどの距離だった。 「翼ちゃん、今日は楽しみね」 向かい合わせのボックス席で、桜井さんが嬉しそうに言った。 「うん……でも、正直ちょっと緊張もしてる」 僕は苦笑いを浮かべる。 「女性の下着を買うなんて、男だった時には想像もできなかったし、そもそもお店に入ること自体が犯罪みたいな気がして……」 「大丈夫よ。私たちがついてるから、堂々としていればいいの」 理子先輩が安心させるように微笑んだ。 「そうだよ――女の子の買い物は楽しいものなんだから」 桜井さんが明るく言う。でも、その表情に少しだけ、複雑なものが混じっているような気がした。 「ありがとう。二人がいてくれて、本当に心強いよ」 電車が隣町の駅に到着すると、僕たちは駅に隣接する巨大なショッピングモールへと向かった。 * * * このショッピングモールは男だった時にも、大輔たちと何度か来たことがある。吹き抜けの天井が高くて、たくさんの店が並んでいるお馴染みの場所だ。 でも、今日行くのは全くの未知の領域だった。 「まずは下着売り場に行きましょうか」 理子先輩が先導してくれる。 「二階のランジェリーフロアね」 エスカレーターで二階に上がると、そこは一面、キラキラとした女性の下着売り場だった。 「うわ……」 僕は圧倒され、思わず足がすくんでしまった。 パステルカラーのブラ
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Ep.13 フリルとリボン、遠ざかる背中

「次は洋服を見に行きましょうか」 理子先輩の提案で、僕たちはエスカレーターに乗り、三階の衣料品フロアに移動した。 「わぁ……」 女性服のフロアは、下着売り場以上に華やかだった。トルソーに着せられたカラフルなワンピース、ふわりとしたスカート、ブラウスやカーディガンなどが、所狭しと並んでいる。 男の服売り場にある黒やネイビー中心の無骨な色合いとは全く違う、明るくて柔らかい空間。 「翼ちゃんには、どんな感じが似合うかな?」 桜井さんが、僕の顔と服を交互に見ながら真剣に考えてくれている。 「身長が低めだから、丈が長すぎないものが良いわね。ロングスカートだと歩かされてる感が出ちゃうし」 理子先輩が的確なアドバイスをしてくれる。 「このあたりはどうかな?」 桜井さんが、淡いパープルのワンピースを手に取った。膝丈で、袖はふんわりとした七分袖。襟元には小さなフリルが付いていて、とても上品なデザインだった。 「かわいい……かも」 「試着してみる?」 「えっと……うん」 店員さんに声をかけて試着室で着替えてみると、鏡に映った自分に驚いた。 「あ……」 とても女性らしく見える。パープルの色が僕の白い肌の色に合っているのか、顔色もパッと明るく見えた。動くたびに裾がふわりと揺れて、なんだかお姫様になったような気分だ。 「翼ちゃん、とても似合ってる――」 試着室から出てくるりと回ってみせると、桜井さんがパッと顔を輝かせて喜んでくれた。 「本当ね。清楚でとても可愛いわ」 理子先輩も目を細めて微笑んでくれる。 でも、桜井さんの表情をよく見ると、少し複雑そうにも見えた。嬉しそうにしているけれど、どこか遠くを見るような、寂しそうな感じもする。 「他のも試してみましょう」 次に試したのは、白いニットとベージュのプリーツスカートの組み合わせ。 ニットは首元に小さなリボンが付いていて、袖口にはレースの装飾が施されている。スカートは膝上丈で、足さばきが良さそうだった。 「これもかわいい……」 鏡を見ながら、僕は思わず頬を緩めた。 なんだか、お洒落をするのがすごく楽しく感じられる。 男の時には、こんな風に『自分を可愛く見せるため』に服を選ぶ楽しさなんて、少しも知らなかった。 「翼ちゃん、なんだかすごく楽しそうね」 桜
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Ep.14 無自覚な放課後、親友との距離

僕が女の子になってからおよそ一ヶ月が経過した五月中旬のこと――放課後のホームルームで担任の田村先生が重要な告知をした。 「知ってると思うが、来週から中間テストが始まる。範囲表を配るから、しっかり準備しとけよ。赤点のやつは部活停止だからな」 教室がざわつく。みんな、テストの話になると途端に真剣な顔になる。 「そういえば……」 男だったあの最後の日、大輔から『今度勉強教えてくれねぇ?』ってLINEで頼まれていたんだった。 あの時は『明日教えるよ』って二つ返事で答えたけど、次の日にこんな状況になってしまったせいで、約束はうやむやになったままだった。 でも、約束は約束だ。 「――大輔」 帰りの支度をしている大輔の席まで行き、僕は声をかけた。 「……翼」 大輔が少しビクッとして、緊張したような顔をする。ここ最近、なんとなく大輔との会話が減っているというか、避けられているような気がしていたのだ。 「あのさ、前に約束してた勉強のこと、どうする?」 「え?」 「赤点取ったらレギュラー剥奪なんでしょ? もう一週間前だし、教えてほしいって言ってたの、覚えてる?」 「あ、ああ……そんなこと言ったな。でも、今の状況で……」 「今の状況って?」 僕は首をかしげる。 「その……翼が、女に……」 「それがどうかした?」 「……」 大輔がしばらく黙ってから、頭をガシガシと掻いて、小さな声で言った。 「……やっぱ、頼む」 「え?」 「勉強、教えてくれ。マジで数学がヤバいんだ」 大輔が頭を下げる。 「もちろん! 約束だもんね」 僕はホッとして、笑顔で答えた。 「助かる――でも、場所はどうするかな……」 大輔が困ったような顔をする。 「前と同じで、大輔の家でいいんじゃない?」 僕は当然のように言った。 「いや――それは……いくらなんでも」 「ダメなの?」 「その……翼の家は? あ、でも今は白石先輩の家に居候してるんだっけ?」 「うん。理子先輩の家で大輔と勉強してたら、先輩の邪魔になっちゃうよ。だから大輔の家がいいんだけど」 「そう……か」 大輔の頬に少し朱がさす。 「……わかったよ。じゃあ、ウチで構わねぇ。明日の土曜日の午後はどうだ?」 「うん、大丈夫」 僕はスマートフォンを手に取ると、カレンダ
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Ep.15 変わらない親友、変わってしまった俺【大輔視点】

【大輔視点】 「知ってると思うが、来週から中間テストが始まる。範囲表を配るから、しっかり準備しとけよ。赤点のやつは部活停止だからな」 田村先生の言葉に、俺は机に突っ伏して頭を抱えた。 数学、マジでやべぇ。 積分なんて何語か分からねぇレベルだし、このままだと確実に赤点で、野球部のレギュラーから外される。 以前の翼なら、放課後にでも気軽に教えてもらえたのに……。 ちらっと斜め前の席にいる翼の方を見る。あいつは普通に黒板を見て、授業を聞いている。肩まで伸びた艶やかな茶色の髪が、窓からの光に透けて酷く綺麗に見えた。 ダメだ、また見とれちまった。 あいつは俺の親友なんだ。中身は男だった時の翼と何も変わらないはずなのに……。 「――大輔」 帰りの支度をしていると、突然声をかけられて、俺はビクッと飛び上がった。 「……翼」 心臓がドクンと嫌な跳ね方をした。ただあいつと目を合わせて話すだけで、なんでこんなに緊張するんだ。 「あのさ、前に約束してた勉強のこと、どうする?」 「え?」 翼が俺の机のすぐ横まで来てくれた。近い。近すぎる。 フワッと、甘くていい匂いがした。男の時には、こんな胸をくすぐるような匂いなんてしなかったのに。 「赤点取ったらレギュラー剥奪なんでしょ? もう一週間前だし、教えてほしいって言ってたの、覚えてる?」 「あ、ああ……そんなこと言ったな」 確かに言った。でも、それは翼が男だった、あの最後の日の話で……。 「でも、今の状況で……」 どう説明すればいいんだ。翼がこんな可愛い女になっちまったから、二人きりになるのがヤバイなんて、本人に言えるわけがない。 「今の状況って?」 翼がコトンと首をかしげる。その無防備な仕草がまた可愛くて……。 ダメだ、俺は親友に何を思ってんだ。 「その……翼が、女に……」 「それがどうかした?」 翼の澄んだ大きな瞳が、不思議そうに俺を見つめている。 全然わかってない。翼は自分がどれだけ可愛い女の子になったか、男にとってどれだけ無防備で危険か、全然気づいてないんだ。 「……やっぱ、頼む」 俺は頭をガシガシと掻いて、小さな声で言った。決心したのだ。 ダチはダチだ。性別なんて関係ない。俺がしっかり理性を保ってれば、今まで通りで大丈夫なはずだ。
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Ep.16 かわいいの自覚、放課後のメイクアップ

中間テストも三日目が終わって、僕はすっかり疲れ切っていた。 日本史、英語、古文と文系科目が続いた今日のテストで、頭がパンパンになっている。 理系科目は元々得意だった上に、先週大輔に教えたりしたおかげで難なく解けたけど、文系科目への苦手意識は変わらない。 「あ! つーちゃん、お疲れ!」 げっそりしながら教室を出たところで、D組のあかりちゃんがパタパタと手を振って声をかけてくれた。 「あかりちゃん、お疲れさま」 「今日のテスト、どうだった?」 「うーん、なんとか空欄は埋めた……って感じかな」 「あたしも! 特に古文が全然だめだった。昔の人、何言ってるか全然わかんないし」 あかりちゃんが苦笑いを浮かべる。 「でもさ、テストばっかりだと疲れちゃうよね。今から息抜きしない?」 「息抜き?」 「うん。駅前に新しくできたカフェがあるの。すっごくかわいいって噂で」 あかりちゃんの目がキラキラ輝いている。 「でも、明日もまだテストあるし……」 「だからこそだよ! たまには甘いもので脳に糖分補給しなきゃ。一時間だけでも!」 あかりちゃんが、僕の手をきゅっと取る。 「お願い! 今回はあたしが誘ったってことで、おごるからさ」 「え、でも悪いよ」 「いいのいいの! つーちゃんとゆっくりお話ししたいし」 あかりちゃんの積極的なお誘いと、女の子特有の甘い香りに、僕はあっさりと負けてしまった。 「じゃあ……一時間だけね」 「やったー!」 あかりちゃんが嬉しそうに手を叩いた。 * * * 「わぁ……」 駅前のカフェに入った瞬間、僕は思わず声を上げた。 店内はパステルピンクとクリーム色を基調とした、とても上品で可愛らしい内装だった。 テーブルや椅子も丸みを帯びたアンティーク調のデザインで、まるでお城の中みたいだ。 「かわいいでしょ?」 あかりちゃんが得意そうに言った。 「うん、本当にかわいい」 お客さんはほとんどが女性グループで、たまに彼女に連れられてきたカップルの男性がいる程度。 男だった時の僕には、一生無縁の場所だっただろう。 「こちらのお席にどうぞ」 店員さんに案内されたのは、ふかふかのソファがある半個室風のブース席だった。 「メニューをどうぞ」 渡されたメニューを見て、僕はま
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Ep.17 魔法のカウンター、あかりからの贈り物

中間テストが全て終わって、僕は解放感でいっぱいだった。 「つーちゃん、お疲れさま!」 校門前であかりちゃんがパタパタと手を振ってくれる。 「あかりちゃんもお疲れさま。やっと終わったね」 「うん! それじゃあ、約束通りデパート行こっか!」 そうだった。テストが終わったら、駅前の大きなデパートのコスメカウンターに行く約束をしていたんだ。 「でも、本当に大丈夫? デパコスって、高校生が行ってもいいところなのかな……すごく高そうだし」 「大丈夫だって! たしかに少し高いけど、あたし達みたいな学生のお小遣いでも買えるアイテムもあるからさ! 見るだけでもテンション上がるし!」 あかりちゃんの圧倒的なポジティブさに、僕はまたしても押し切られてしまった。 「そ、そうなんだ……じゃあ、行ってみようかな……」 「よし! それじゃあ出発ぅ!」 * * * 駅直結のデパートの一階に足を踏み入れた瞬間、僕は思わず立ちすくんだ。 「わぁ……」 そこは、まさにキラキラした別世界だった。 様々な香水や化粧品の香りが入り混じった、女性特有の甘く濃厚な匂い。 僕でも名前は聞いたことがあるような海外の有名ブランドのカウンターがずらりと並んでいて、それぞれが宝石のようにライトアップされてディスプレイされている。 大理石の床と上品な照明に照らされて、まるで美術館かお城みたいな雰囲気だった。 「すごいね……こんな空間があるなんて」 「でしょ? あたしも初めて来た時は圧倒されちゃった」 あかりちゃんが得意そうに言う。 「でも、これだけたくさんあると、どこから見ればいいのか全然分からないね……」 「えーっと…まずは肌診断からやってもらおっか。つーちゃんに似合う色を調べてもらお!」 「肌診断?」 「うん。プロの美容部員さんに肌質とか、似合う色とかを診てもらうの。そうすれば、つーちゃんに一番ピッタリのメイクがわかるよ」 あかりちゃんが僕の手を引いて、フロアの中央にある白と黒を基調とした洗練されたカウンターに向かった。 「このブランドなら、初心者でも丁寧に診てくれるはず」 あかりちゃんが店員さんに声をかけると、黒い制服を着た、三十代くらいの上品で隙のない美しい女性が笑顔で出てきてくれた。 「いらっしゃいませ
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Ep.18 変わっていく私の心

翌朝、目が覚めた僕の視線は、すぐにベッドサイドに置かれた紙袋へと吸い寄せられた。 昨日デパートで買い揃えた化粧品たちが、美しいパッケージに包まれて僕を待っている。 あかりちゃんがプレゼントしてくれたアイシャドウとチークも、リボンがかけられた小箱に入ったままだ。 「っ……」 箱から取り出して改めて見ると、本当に綺麗だ。 ファンデーション、アイシャドウパレット、チーク、リップ、そしてメイクブラシセット。どれもキラキラと輝いて見える。 昨日、プロの美容部員さんにメイクしてもらった時の、あの胸が高鳴るような感動が蘇ってくる。 あんな風に、自分でも魔法を使えるようになりたい。 「よし……」 僕は静かにベッドから起き上がった。 壁の時計を見ると、まだ朝の7時半。休日の理子先輩はまだ寝ている時間だ。朝ごはんの準備にはまだ少し早い。 でも、我慢できない。 今すぐにでも、一人でメイクに挑戦してみたい。 僕は紙袋を抱え、そっと部屋を出て洗面所に向かった。 * * * 洗面台の横に化粧品をずらりと並べながら、僕は昨日教わったことを必死に思い出していた。 理子先輩に教わった通り、化粧水と乳液でしっかり保湿をしてから、まずはファンデーション。 「えっと……専用のスポンジで、薄く均一にって言ってたな」 手の甲に少量出してスポンジに取り、頬に伸ばしてみる。 「あ……」 でも、なんだかムラになって、すっぴんの時よりも肌が汚く見えてしまう。プロの方がやってくれた時は、スッと陶器みたいになったのに。 「もう一回……」 洗顔して一度すべて落とし、スキンケアからもう一度挑戦する。 今度は擦るのではなく、ポンポンと軽く叩き込むように。 「よし、次はアイシャドウ」 大きなブラシにライトコーラルを取って、アイホール全体に塗る。 「あれ? 薄すぎる?」 鏡を見ると、ほとんど色が付いていないように見える。 「もう少し粉をつけて……」 今度はブラシにたっぷり色を取って重ねてしまい、殴られたように濃くなりすぎてしまった。 「うーん、難しい……」 粉の量も、力加減も、全然わからない。 でも、だんだん楽しくなってきた。 失敗しても、メイク落としで拭き取ってもう一度やり直せばいい。 昨日教
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Ep.19 女の子同士の距離感って?

理子先輩との遅めの朝食を終えて、リビングでくつろいでいると、スマートフォンにメッセージが来た。 『つーちゃん、今日の午後時間ある? こないだ約束したメイクの練習、一緒にしない?』 あかりちゃんからだった。 「やった!」 僕は思わず声を上げてしまった。 「どうしたの?」 ソファで本を読んでいた理子先輩が顔を上げる。 「あかりちゃんから、今日メイクの練習を一緒にしようって」 「それは良いわね。お友達と一緒だと楽しいでしょうし」 「はい!」 僕は急いで返事を打った。 『時間あるよ! ぜひお願い! どこでやろう?』 『うちに来ない? お母さん午後から出かけるから、化粧品広げてゆっくりできるよっ!』 『ありがとう! じゃあ、二時頃にお邪魔してもいいかな?』 『オッケー! 待ってるね!』 約束を取り付けて、僕はウキウキしていた。 「理子先輩、午後からあかりちゃんの家に行ってきます」 「気をつけてね。夕食までには帰ってらっしゃい」 「はい!」 * * * 午後二時、僕は教えてもらった通りに、あかりちゃんの家の前に立っていた。 「インターホン押そう……」 ピンポーン。 「はーい!」 元気な声と共に、すぐにドアが開いた。 「つーちゃん!」 あかりちゃんがパッと花が咲いたように嬉しそうに迎えてくれる。 「こんにちは、あかりちゃん」 「わぁ、昨日デパートで買ったやつでメイクしてきたんだ! すごく上手だね」 「ありがとう。でも、まだアイシャドウとか上手くぼかせなくて……」 「そんなことないよ。本当にかわいい! ほら、入って入って!」 あかりちゃんが僕の手を取って、家の中に引っ張ってくれる。 「お邪魔します」 「いらっしゃい! お母さん買い物に出てるから、今日は二人だけだよ」 案内されたあかりちゃんの部屋は、白とピンクを基調とした、いかにも女の子という可愛らしい空間だった。 部屋全体から、お花やフルーツのような甘くて良い匂いがする。先週行った大輔の部屋の匂いとは、当たり前だけど完全に真逆の世界だ。 ベッドにはふわふわのクッションがたくさん置いてあって、白いローテーブルの上には色とりどりの化粧品がきれいに並べられている。 「すごい……化粧品がいっぱい」 「あたし、メイ
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Ep.20 冗談の裏側【あかり視点】

【あかり視点】 日曜日の朝、あたしは部屋のベッドに寝転がりながら、つーちゃんのことを考えていた。 あたしは昔から、男の子には全く興味がない。 むしろ、気持ち悪いとさえ思ってしまう。がさつで汚くて、あの独特な汗臭い匂いも、やたらとギラギラした目も嫌い。 でも、女の子は違う。 柔らかくて、いい匂いがして、可愛くて、美しくて――そんな女の子を見ているだけで胸がドキドキする。 特に、つーちゃんみたいに純粋で無防備な女の子を見ると、あたしの中に変な支配欲が湧いてくる。 その子を、あたしの色に染めたい。あたしだけのものにしたい。 「つーちゃん……」 彼女――翼の顔を思い浮かべると、下腹部の奥がジワリと熱くなる。 元々は男だったと聞いた時は、正直驚いた。でも、今の彼女は、あたしが理想とする究極の可愛い女の子だ。 華奢で、美しくて、純粋で、隙だらけで……何より、男だったおかげで女の子としての警戒心が全くないところが、たまらなくそそられる。 「もう、我慢できないなぁ」 あたしはスマートフォンを手に取った。 昨日、デパコスでバッチリとメイクアップしたつーちゃんを見て、あたしの我慢は限界に達していた。 今日こそ、つーちゃんをもっとあたしの色に染めたい。 『つーちゃん、今日の午後時間ある? こないだ約束したメイクの練習、一緒にしない?』 送信ボタンを押して、返事を待つ。 ドキドキする。もし来てくれたら、今日は二人きりになれる。 今度こそ、つーちゃんを……。 すぐに返事が来た。 『時間あるよ! ぜひお願い! どこでやろう?』 「やった……!」 あたしはベッドの上で小さくガッツポーズをした。 『うちに来ない? お母さん午後から出かけるから、化粧品広げてゆっくりできるよ♪』 『ありがとう! じゃあ、二時頃にお邪魔してもいいかな?』 『オッケー! 待ってるね!』 完璧だ。お母さんは買い物に出かけるから、家には二人きりになれる。 今日こそ、つーちゃんをあたしのお人形にして、たっぷり可愛がってあげよう。 * * * 午後二時、インターホンが鳴った。 あたしは急いで玄関に向かう。胸がドキドキして仕方ない。 「はーい!」 ドアを開けると、そこには、期待通りつーちゃんがいた
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