All Chapters of あなたの後悔に、私は署名しない: Chapter 11

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第11話

「四年目に言ってくれていても、間違いなく残っていたでしょうね。六年目のときだってそう。あなたのお母さんが私にあの屈辱的な合意書にサインを迫ってきたとき、あなたが隣で一言『サインするな』と庇ってくれたなら――私はそれでも、あなたの傍に残っていた。でも、今はもう違うの」言司の手が、力なくハンドルから滑り落ちた。大切な何かを根こそぎ抜き取られてしまったような、そんな空虚な顔だった。私はタクシーのドアを開け、後部座席へと乗り込んだ。車が滑り出したとき、バックミラー越しに、言司の黒いセダンがまだ元の場所に停まっているのが見えた。タクシーが交差点を曲がり、完全に視界から見えなくなるまで、あの車が動くことはなかった。……三ヶ月後。ゴールドマン・サックスのアジアパシフィック本部ビル。四十七階の全面ガラス張りの窓の外には、息を呑むような大都会のスカイラインが果てしなく広がっている。私は、自分専用のオフィスで座っていた。パーテーションで区切られただけのワークスペースではない、完全な個室だ。ドアのプレートには、真新しい文字でこう刻まれている。【白瀬詩音 パートナー】デスクの上には、着任してすぐに手がけた初の大型案件――国際M&Aプロジェクトの膨大な資料が積まれている。その取引規模は、あの花城グループの年間売上高の、実に三倍にも上る数字だった。デスクに置いたスマホが震えた。見知らぬ番号からの着信だった。「白瀬詩音様でいらっしゃいますか。私、経済誌『ファイナンス・ウィークリー』の記者と申します。先日白瀬様が主導された大型の国際M&A案件につきまして、ぜひ単独取材をさせていただきたくご連絡いたしました。それからもう一点、事実確認をさせていただきたいのですが――現在ネット上に流出している花城グループの内部文書によりますと、過去八年間にわたる複数の中核プロジェクトにおいて、その実質的な立案者が白瀬様ご自身であったと示されているようですが……」「取材の件、お受けいたします。また、過去の署名に関する事実関係につきましても、完全な証拠データをそちらへ提供することが可能です。ただ、記事の中で一点だけ明記していただきたいことがあります」「何でしょうか?」「あのプロジェクト自体の高い質は、表紙に誰の名前が書かれていたか
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