乙女ゲームのモブ捜査官は稚拙なシナリオを許さない〜ヒロインの自作自演を暴いたら悪役令嬢が押しかけ助手になりました의 모든 챕터: 챕터 21 - 챕터 30

31 챕터

21:「さあ、茶番は終わりました。ここからが本番です」

 王都警視庁の地下にある特命資料室。 国宝級の魔導具『星の涙』の盗難事件が発覚した翌朝、この部屋は即席の作戦会議室と化していた。「……というわけで、本日から俺たちは王立魔法学園に潜入捜査を行います。警察が公式に動けば、犯人は必ず証拠を隠滅するか、学園外に逃亡する。内偵を進めるには、内部の人間として入り込むのが最も合理的です」 ソファーに腰掛けたレオンが、淹れたての紅茶を啜りながら淡々と告げた。 その姿はいつものヨレヨレの黒コートではなく、仕立ての良いダークグレーのスリーピーススーツに身を包み、銀縁の伊達眼鏡までかけている。「その格好……本当に、学園の講師として潜り込むおつもりですの?」 セシリアが呆れたようにため息をつく。 彼女自身も、いつもの華やかなドレスではなく、動きやすいタイトなロングスカートに、清潔感のある白いブラウスという、いかにも『講師の助手』らしい知的な装いに着替えていた。「ええ。学園長にはすでに手回し済みです。俺の肩書きは、本日から赴任する『法医学および物理学』の特別講師。そして君たちは、俺の優秀な専属助手というわけです」 レオンは机の上に置かれた辞令の書類を指先で弾いた。「一生分の高級マカロンがかかっているんです。俺のモチベーションは現在、かつてないほどに高まっていますよ」「……この男の行動原理が甘いお菓子だなんて、学園長が知ったら卒倒しますわね」 セシリアは頭を抱えたが、その表情にはどこか楽しげな色が浮かんでいた。 自分を不当に追い出した王立魔法学園に、今度は捜査官の助手として堂々と足を踏み入れる。少しの緊張はあるが、レオンとルナが隣にいれば、不思議と恐れはなかった。「お嬢様の助手姿、とっても似合ってるニャ! 私も荷物持ちとして完璧にサポートするニャ!」 ルナも学園の指定する使用人用の質素な服に着替え、猫耳を隠すためのキャスケット帽を深く被っている。「よし。では、授業という名目の現場検証に出発しましょうか」 レオンが立ち上がり、三人は王立魔法学園へと向かった。 王立魔法学園は、王都の北部に広大な敷地を持つ、国中から優秀な貴族の子弟が集うエリート機関である。 高くそびえる尖塔と、美しく整備された庭園。すれ違う生徒たちは皆、家柄を示す刺繍が施された魔法ローブを身に纏っている。 特別講師としての手続きを終え、レ
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22:「……動かないでください、セシリア」

 王立魔法学園での鮮やかな「特別講義」を終えたレオンたちは、本来の目的である現場検証を再開していた。 国宝『星の涙』が盗み出された絶対封鎖結界の密室。 その壁に開けられた物理的な大穴から、犯人がどちらへ逃走したのかを追跡するのが現在の最優先事項である。「ルナ。壁の穴に付着していた、漆喰を溶かすための薬品の匂い。追えますか?」 レオンの問いに、キャスケット帽を深く被ったルナが鼻をヒクヒクと動かした。「……微かだけど、わかるニャ。マンドラゴラ抽出液の溶剤特有の、鼻を突くような甘ったるい匂い。こっちニャ」 ルナの驚異的な嗅覚をナビゲーションにし、三人は学園の華やかな新棟から離れ、人通りの少ない旧棟へと向かって歩き出した。 旧棟は、すでに使われなくなった古い教室や研究室が並ぶ、昼間でも薄暗く埃っぽいエリアだ。 その廊下の片隅で、数名の生徒たちが何やら怯えたような声でヒソヒソと噂話をしているのが聞こえてきた。「……ねえ、聞いた? 昨日もまた、旧魔導具研究室の近くで倒れた生徒が出たらしいわよ」「『呪われた鏡』の噂だろ? 触れると全身がビリビリと痺れて、恐ろしい悪夢のような幻覚を見るっていう……」「学園長も立ち入り禁止にしたけど、気味悪いわよね……」 その噂話を耳にした途端、セシリアの足がピタリと止まった。「……呪われた鏡、ですって? 触れただけで痺れて幻覚を見るなんて、まるで強力な呪詛魔法ではありませんの」 セシリアが少しだけ顔を強張らせてレオンを見上げる。 いくら悪役令嬢として気丈に振る舞っていても、正体不明の呪いというオカルトチックな現象には、やはり令嬢らしい恐怖心を抱くようだ。 だが、レオンはいつものように死んだ魚のような目で、気怠げにため息をついた。「魔法学園のエリートどもが、揃いも揃って非論理的な怪談話ですか。脳のシワが足りていない証拠ですね」「レオン、オカルトを馬鹿にしてはいけませんわ。この世界には、解明されていない未知の魔法現象が……」
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23:「お嬢様にセクハラするなニャ! 」

 旧魔導具研究室の備品室で、重い本棚の裏に隠された『地下迷宮への階段』を発見した特命資料室の三人。 暗く冷たい風が吹き上がってくるその深淵を前に、レオンは静かに本棚を元の位置へと押し戻した。「……レオン? 中を調べないんですの?」 セシリアが不思議そうに尋ねると、レオンは乱れたスリーピーススーツの埃を払いながら、懐中時計を取り出した。「現在時刻、午後一時四十五分。これから俺の、特別講師としての午後の講義が始まります。ここで俺たちが姿を消せば、学園長や生徒たちに不審に思われ、せっかくの潜入捜査の隠れ蓑が台無しになりますからね」 レオンは本棚の隙間に、目印となる極細の糸を仕掛けた。「あの地下への突入は、学園が寝静まる今夜決行します。それまでは、善良で優秀な講師とその助手として、完璧な『日常』を演じ切りますよ」「……相変わらず、スイッチの切り替えが極端な男ですわね。わかりましたわ」 セシリアが呆れたようにため息をつき、三人は旧棟を後にして、午後の講義が行われる大講義室へと向かった。 午後の講義は、魔法の基礎理論に関する『小テスト』の時間だった。 レオンが教壇で気怠げに監督し、セシリアが通路を歩いて生徒たちの解答用紙を回収して回る。 大講義室には、午前中の騒動を見ていた生徒たちも多く、彼らはセシリアが横を通るたびに、気まずそうに視線を逸らしていた。 だが、すべての人間が彼女の有能さを認めたわけではない。「……きゃっ!」 セシリアが教室の後方、窓際の席を通りかかった瞬間だった。 一人の女子生徒が、わざとらしく悲鳴を上げて立ち上がったのだ。「どうしましたの?」 セシリアが冷静に問いかけると、その女子生徒――縦ロールの髪を揺らす、派手な魔法ローブを着た伯爵令嬢は、憎悪に満ちた目でセシリアを指差した。「白々しい! 先生! 今、この性悪な助手が、私の机の上に『カンニングペーパー』を落としていきましたわ!」 伯爵令嬢の言葉に、
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24:「……一生、ポンコツのままでいなさいな。この不良債権」

 月明かりが分厚い雲に隠れた深夜。 王立魔法学園の敷地内は、静寂と深い暗闇に包まれていた。 昼間の喧騒が嘘のように静まり返った旧棟の廊下を、三つの影が音もなく進んでいく。「……現在時刻、午前二時。学園の警備用ゴーレムの巡回ルートは、完全にやり過ごしました」 漆黒のコートを羽織ったレオンが、懐中時計をパチンと閉じて囁く。 その隣には、動きやすい乗馬服に着替えたセシリアと、キャスケット帽を目深に被ったルナが控えていた。 三人は昼間に発見した『旧魔導具研究室』の備品室へと忍び込み、重い本棚の裏に隠された地下階段の前に立っていた。「ここから先は、王都の地下水路に繋がる未知の領域です。ルナ、ナビゲーションを頼みますよ」「任せるニャ。私の鼻から逃げられる悪党なんて、この世にいないニャ」 ルナが自信満々に胸を張り、階段の奥から吹き上がってくるカビと泥の匂いを深く吸い込んだ。「……マンドラゴラ抽出液の溶剤の匂い、まだハッキリ残ってるニャ。かなり大勢の人間が、重いものを引きずってこの階段を降りていった痕跡があるニャ」「大勢の人間と、重い荷物……。盗まれた国宝『星の涙』だけでなく、闇の組織の密輸品もここを通って運ばれている証拠ですね」 レオンは懐から特殊な魔石のランタンを取り出し、青白い光で足元を照らしながら、冷たく湿った石段をゆっくりと降り始めた。 階段を下りきった先に広がっていたのは、学園の華やかな地上とは似ても似つかない、広大な地下空間だった。「……これは、古い時代の地下水路ですの?」 セシリアがランタンの光に照らされた空間を見回し、息を呑む。 苔むした巨大な石積みの壁と、淀んだ水が流れる水路。天井には無数の鍾乳石のようなものがぶら下がり、迷路のように複雑に道が入り組んでいる。「ええ。数百年前、王都の区画整理で放棄された旧水路の跡でしょう。今は学園の地下という誰の目にも触れない『完璧な隠れ家』として、闇の組織に利用されているというわけです」 レオンが
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25:「……ふふっ。本当に、性格の悪い上司ですこと」

 王立魔法学園の地下深く、忘れられた旧水路の迷宮。 凶悪な物理トラップを抜け、レオンが自らの血を代償にして安全を確保したその先に、重厚な鉄格子の扉が不気味に沈黙していた。「……ルナ。この奥から、人間の気配はしますか」 レオンが血で汚れた左腕を軽く庇いながら、小声で尋ねる。 ルナは鉄格子に鼻を近づけ、周囲の空気を深く吸い込んだ。「しないニャ。マンドラゴラや古い金属の匂いは充満してるけど、生き物の匂いや足音は完全に絶えてる。今は誰もいないはずニャ」「了解しました。では、少しお邪魔させてもらいましょうか」 レオンは右手だけで懐から細い金属製のピックを取り出し、鉄格子の巨大な南京錠の鍵穴へと差し込んだ。「レ、レオン。左腕がまだ痛むのでしょう? ピッキングくらい、私やルナが……」 セシリアが心配そうにレオンの腕を覗き込む。 ルナの回復薬のおかげで傷は塞がっているが、失った血液と破れたスーツの痛々しさは残ったままだ。「不要です。鍵の構造の把握とシリンダーの回転には、指先の極めて繊細な感覚が必要だ。俺の脳からの電気信号をダイレクトに伝えるこの右手の方が、圧倒的に速くて正確です」 カチャリ、カチッ。 レオンが器用にピックを操ると、数秒も経たないうちに重金属の錠が外れ、ガチャンという音と共に鉄格子が開かれた。「相変わらず、鮮やかな手口ですわね。本職の泥棒が泣いて謝りますわよ」「褒め言葉として受け取っておきます」 三人はランタンの光を頼りに、鉄格子の奥の部屋へと足を踏み入れた。 そこは、かつて地下水路の管理室として使われていたであろう、広大な石造りの空間だった。 しかし、現在は無数の木箱や麻袋が乱雑に積み上げられ、薄暗い倉庫と化している。「お嬢様、見てニャ。この木箱のマーク……王都の闇市で見た、あの怪しい商人のテントにあったマークと同じニャ」 ルナが一つの木箱を指差す。 その蓋を開けると、中には王都で厳しく流通が制限
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26:「……っ! わ、わかりましたわ! 私の脳を信じなさい!」

 王立魔法学園の地下深く、闇組織の隠し倉庫。 レオンたちが国宝の密輸記録(裏帳簿)を発見した直後、開け放たれていた鉄格子の扉が、目に見えない力に引っ張られるように激しい音を立てて閉ざされた。 ガシャンッ!! 鈍い金属音が響き、鉄格子の錠前が青白い魔力光に包まれて『完全封鎖』される。「……私の可愛い生徒が、こんな夜更けに地下で泥棒ごっことは感心しないね、セシリア君」 鉄格子の向こう側。松明の灯りに照らされた教頭が、陰湿な笑みを浮かべて杖を構えていた。 彼の背後には、顔を隠した黒装束の暗殺者たちが無言で立ち並んでいる。「教頭……っ! 生徒に立派な訓示を垂れていた教育者が、裏では犯罪組織と結託し、国宝を売り捌いていたというのですの!?」 セシリアが鉄格子越しに、怒りに満ちた声で糾弾する。「人聞きの悪いことを言わないでくれたまえ。私はこの国を『より正しく、美しく』するための偉大な計画に協力しているだけだ。……もっとも、君のように頭が回りすぎる上に、権力闘争に敗れた哀れな令嬢には理解できないだろうがね」 教頭は冷酷に鼻で笑い、杖の先端を倉庫の中に向けた。「あの『星の涙』は、すでに我々の同志の元へ運ばれた。君たちがここを嗅ぎ回ることも想定済みでね。……この地下室は、君たちの素晴らしい墓標になるだろう」 教頭が呪文を短く詠唱すると、彼の杖の先から不気味な緑色の煙がシューシューと音を立てて噴き出し、鉄格子の隙間から倉庫内へと流れ込み始めたのだ。「……ッ、息を止めてください、二人とも!!」 レオンが鋭く叫ぶ。「この『深緑の死(ヴェノム・グリーン)』は、私の特製でね! 肺から吸い込めば数十秒で神経を破壊し、全身から血を噴き出して死に至る! 高位の解毒魔法がなければ絶対に助からない、魔法学の粋を集めた毒ガスだ!」 教頭の狂気に満ちた高笑いが、地下水路に響き渡る。 緑色の煙は、意思を持っているかのように床を這い、瞬く間に倉庫の空気を汚染していく。
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27:「浄化されるのはお前の腐った脳みそニャ!」

 王立魔法学園の巨大な大講堂は、数千人の生徒と教職員で埋め尽くされ、異様な緊張感に包まれていた。 月に一度の全校集会。 しかし、本日の議題は通常の学園行事ではなく、前代未聞の『国宝盗難事件』と『テロリストの侵入』に関する緊急報告だった。 教壇の中央に立っているのは、学園のナンバー2である教頭だ。 彼は厳粛な面持ちで、マイクの代わりとなる拡声の魔導具に向かって重々しく語りかけていた。「生徒の諸君。非常に遺憾なことだが、昨夜、我が学園の神聖な地下旧水路に、卑劣なテロリストが侵入した。彼らは毒ガスを用いて私を暗殺しようとし、国宝『星の涙』を奪って逃走したのだ」 教頭の言葉に、講堂の生徒たちがざわめく。「そのテロリストの正体は……昨日、新任の特別講師として赴任してきた平民の男レオンと、かつてこの学園を追放された悪逆非道な令嬢、セシリア・フォン・ローゼンバーグだ!」 教頭が悲痛な声を張り上げると、講堂のあちこちから「やはりあの女か!」「没落した恨みで学園にテロを……!」と、セシリアへの憎悪と怒りの声が沸き起こった。 教頭は内心でほくそ笑んでいた。 地下倉庫での毒ガス攻撃は失敗し、暗殺者たちも倒されたが、彼らを『テロリスト』として指名手配してしまえばこちらの勝ちだ。 証拠の裏帳簿はすでに自分が燃やして処分した。権力を持たない平民の捜査官と勘当された令嬢の言葉など、誰も信じはしない。「彼らを見つけ次第、即刻騎士団に引き渡すように。我が学園の誇りにかけて、彼らに法の裁きを……!」「――残念ですが、法の裁きを受けるのはあなたの方ですよ、教頭先生」 バンッ!! 教頭の演説を遮るように、大講堂の重厚な両開き扉が乱暴に蹴り開けられた。「なっ……!?」 数千人の視線が一斉に後方へと注がれる。 そこには、漆黒のスリーピーススーツを完璧に着こなしたレオンと、誇り高き『悪役令嬢』の冷ややかな笑みを浮かべたセシリア、そしてキャスケット帽を被ったルナが堂々と立っていた。「
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28:「ひゃっ……!?」

 王立魔法学園の大講堂は、絶対的なファクトによって教頭の罪が暴かれた興奮と混乱の余韻の中にあった。 ルナの強烈な物理カウンターによって脳震盪を起こし、完全に意識を刈り取られた教頭は、通報を受けて駆けつけた王都警視庁の制服警官たちによって、無様に引きずられていく。「……あれが、教頭先生だなんて」「セシリア様の方が、ずっと正しかったんだ……」 騒然とする生徒たちの中から、そんな囁き声が聞こえてくる。 かつてセシリアを嘲笑っていた者たちは皆、罰の悪そうな顔で俯くか、あるいは畏怖の念を抱いて彼女の美しく気高い横顔を見つめていた。「どうやら、君の『悪役』としての汚名は、これで完全に返上されたようですね」 レオンが気怠げに伊達眼鏡の位置を直しながら呟く。「……別に、彼らに理解されたくてやったわけではありませんわ。私はただ、あの男の偽善に満ちた嘘を、物理的に叩き潰したかっただけですもの」 セシリアは真紅のドレスの裾を翻し、フッと誇り高く笑った。 その表情には、過去の因縁を自らの手で断ち切ったという、晴れやかな達成感が満ちていた。「さあ、ルナ。私たちは帰りますわよ。ここからは本庁の仕事です」「了解ニャ! 悪い奴をぶっ飛ばして、スッキリしたニャ!」 三人は学園の教師たちからの質問攻めを適当に躱し、大講堂を後にした。 彼らの足取りは軽かったが、レオンの懐の奥底には、教頭が落とした『黒い魔石』が、冷たい重みを持って収まっていた。 事件は解決したかに見えた。だが、レオンのプロファイリングの直感は、これが単なる序章に過ぎないと告げていた。 王都警視庁の地下、特命資料室。 学園からの帰還後、レオンはスリーピーススーツのジャケットを脱ぎ捨て、黒いシャツの袖を捲り上げて、すぐに作業机に向かっていた。 机の上には、押収した『黒い魔石』が置かれている。 レオンは目に特殊な拡大レンズを装着し、様々な波長の光を放つ小さな魔石のランタンを切り替えながら、黒い魔石の表面と内部構造
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29:「ノ、ノイズデータって……っ」

 王都警視庁本庁舎の最深部に位置する、第零区画。 ここは王都で最も凶悪な犯罪者を収容するための特別な地下牢であり、壁も床もすべて魔法を無効化する『封魔の石』で造られている。 外部からの魔法干渉を一切遮断し、内部からの魔法の発動も完全に封じる、絶対的な物理的・魔術的密室であった。 鉄格子と分厚い防音ガラスで仕切られた面会室の奥。 椅子に手錠で縛り付けられた学園の教頭は、昨日までの威厳ある姿が嘘のように憔悴しきっていた。 だが、その窪んだ目には、未だに狂信的な光が宿っている。「……現在時刻、午前九時。取り調べを開始します」 分厚いガラス越しのマイクに向かって、レオンが淡々とした声で告げた。 その隣には、バインダーを手にしたセシリアが、氷のように冷ややかな視線を教頭に向けて立っている。「教頭。あなたが学園の地下で闇組織と取引を行っていたことは、裏帳簿と数々の物理的ファクトによって完全に立証されています。これ以上の黙秘は、あなたの量刑を重くするだけですよ」 レオンの言葉に、教頭は血の気のない唇を歪め、不気味な笑い声を漏らした。「フ……フフフッ。量刑だと? 愚かな。この国そのものが間もなく『浄化』されるというのに、人間の作った法などに何の意味がある」 教頭は虚ろな目で天井を見上げ、うわ言のように呟き始めた。「星の涙はすでに『あのお方』の元にある。すべては計画通りだ。私という小さな犠牲など、大いなるうねりの中では塵に等しい……」「あのお方、とは誰のことですの?」 セシリアがマイク越しに鋭く問い詰める。「盗まれた国宝をどこへやったのか。この王都で、一体何を企んでいるのか。洗いざらい吐きなさい!」「……教えてやろうか、生意気な小娘」 教頭が首をギギギと不自然な角度で曲げ、セシリアを睨みつけた。「あのお方は、この腐りきった王都のすべてを清めるおつもりだ。上層部も、民衆も、お前たちのような目障りな虫ケラどもも、すべてを等しく……ッ!?」
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30:「お嬢様に何するニャァァッ!! このセクハラ変態公務員! 今すぐその指を切り落とすニャ!」

 王立魔法学園の教頭による国宝窃盗事件、および本庁地下牢での不審死事件から数日が経過した。 王都警視庁の地下にある特命資料室の重厚な鉄扉が、今朝はひどく軽快なノックの音と共に開かれた。「王室御用達・高級菓子店『銀の砂糖亭』からのお届け物です!」 やってきた配達員が台車に乗せて運び込んできたのは、高く積まれた幾つもの豪奢な化粧箱だった。 箱には王室の紋章が誇らしげに輝いており、中からは芳醇なアーモンドとバター、そして甘い果実の香りが漂ってくる。「……ついに来ましたね。俺の正当なる労働対価が」 ソファーで書類の山に埋もれていたレオンが、死んだ魚のようだった目をカッと見開いて立ち上がった。 学園長からの事件解決の報酬。 約束通りに手配された『高級マカロン一生涯無料パスポート』の、記念すべき第一回目の定期配送便である。「す、すごいですわね……。箱の中、全部マカロンですの?」 セシリアが目を丸くして化粧箱の蓋を開けると、そこには宝石箱のように色鮮やかなマカロンが、信じられないほどの数で敷き詰められていた。 フランボワーズ、ピスタチオ、ショコラ、シトロン。王都の貴族たちでさえ、特別な日にしか口にできない最高級の品だ。「お嬢様、これ全部食べたら間違いなく太るニャ……」 ルナが尻尾を垂らして呟くが、レオンはすでに一番大きな箱を抱え込み、いつもの定位置であるソファーへと沈み込んでいた。「カロリーとはすなわち、脳を駆動させるための絶対的なエネルギー源です。太るという概念は、運動量と基礎代謝の計算式が破綻している素人が気にするノイズに過ぎません」 レオンは気怠げな声で理屈をこねながら、鮮やかなピンク色のフランボワーズのマカロンをヒョイと口に放り込んだ。 サクッ、という軽快な音の後に、濃厚な甘さが彼の口内に広がる。 ここ数日、教頭の死体の検死と成分分析で徹夜続きだった彼の顔に、みるみると生気が戻っていく。「……素晴らしい。糖度、食感、香りのバランス。すべてが黄金比で構成
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