All Chapters of 天才召喚魔術師で王女の私は、完全に自己都合で勇者様を召喚します: Chapter 21 - Chapter 22

22 Chapters

21話:暴食の鎌

 離宮の見張り塔ほどもある高さだろうか。 私は今、我が離宮の北側にそびえる『賢者の塔』のバルコニーへ向け、ポチの背に乗って上空から降下している最中だった。「あら。本当に走って来ているわね」 城の私室からここまで、庭園の小道を全速力で駆けていく哀れな人影を視界の端に捉えたけれど、特に気にかけることもなくポチをバルコニーへ着陸させる。 吹き抜けの広大なバルコニーは、四方を優美な柱で囲まれているだけで、遮る壁も窓もない。私はそのまま、堂々と塔の内部へと足を踏み入れた。「これはこれは、アイン様。困りますなぁ。このマーリンが施した『反魔結界』を、毎回こうも易々とすり抜けられては。ワシ、その度に自信をなくして泣いてしまいそうなのですぞ」 魔術式を言葉ではなく「感覚」で構築できる私にとって、この程度の結界をすり抜けるのは、飛んでくる風船を避けるくらい容易いことなのだ。「あら、ごめんなさい。結界があることすら忘れていたわ」「忘れて……。ワシ、今日はもう立ち直れそうにありませんじゃ」 どんよりとした精神的な暗雲が老魔術師の周囲に漂っている気がするけれど、面倒なので無視することにする。「マーリンも大変よね。かつては宮廷魔術師の筆頭だったのに、こんな離宮の隅の塔に追いやられて。 ……半分は、私のせいでもあるのだけれど」「何を仰います。住み慣れればここも素晴らしい場所ですぞ。並の侵入者では辿り着くことすら困難な造りゆえ、夜も安心して眠れます。おかげでこの通り、お肌もツヤツヤですぞ!」 両手を頬に添えて年齢不詳な老魔術師のお肌のツヤをアピールされても、誰に対する需要もない。「……へえ、うん、すごいわね」 こんな人でも、私にとっては数少ない恩人だ。 内心で「気持ちが悪い」などと切って捨てるのは流石に心が痛む。……それ以上クネクネされると本当に、少々、大分気持ちが悪いけれど。「アイン様、表情が青ざめておりますが如何なされ――む、今度はワシの反魔結界に何かが引っかかったようですな」 途端に鋭い眼光を宿したマーリンが全身に濃密な魔力を纏わせ、颯爽と塔のバルコニーから階下へと身を躍らせた。「ああ――それは……」 この塔には実質、まともな出入り口が存在しない。 適切な手順を踏んで結界を解除しなければ、あらゆる殺意を孕んだ防衛機構が侵入者を迎撃する、かつての『重
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22話:リヒトの力

 禍々しい雰囲気を漂わせ始めた『暴食の大鎌』を見やり、緊迫感のない表情でポリポリと頬を掻くリヒト。 次第に彼の手にしていた鎌から紫黒の瘴気が溢れ出し、蛇のようにリヒトの腕へと絡みつこうとする。(うげ、なんだコイツ!気持ち悪りぃな!!) ひょっこりと姿を現した美少年のコクライが、その瘴気のモヤを空中で蹴り飛ばし、容赦なく踏みつけた。『きひっ!? 痛いってのっ!! このちびガキ!!』「え……? あなた、今何か言ったかしら?」 どこからか、妙に癇に障る甲高い声が聞こえたような気がした。「いや、俺じゃないぞ……。爺さん、そういう質の悪い冗談は笑えないな」「はて? 声とは何のことですかな? ワシには何も聞こえませぬが」 首を傾げながら応えるマーリン。私たちの視線は自然と、コクライに足蹴にされている大鎌へと向かう。(誰がチビだと……?  消し飛ばしてやる! 灰塵になりやがれ!!) 額に青筋を浮かべてモヤを踏みにじるコクライの周囲に濃密な魔力が渦巻き、バチバチと黒い雷光が迸る。「こ、これは……! 遥か古の暗黒時代、地上を焼き尽くしたと言われる神話の『漆黒の雷』!? いや、まさか、そんなはずは……!」 マーリンが良くわからない大古の伝説を引き合いに出して狼狽え始めた。 マーリンには精霊であるコクライの姿が見えていないため、大鎌から直接雷が湧き出しているように見えているのだろう。 なんにせよ、これ以上コクライが暴れるのはまずい。 この塔が崩壊したら、マーリンの住処がなくなってしまう。『きひひっ! 上等ぢゃ〜ん! ちびガキ!! この宿主を食った後はお前の『存在』ごと喰い尽くしてやるわよっ!』 下品な笑い声とともに、溢れ出した瘴気の波がリヒトを覆い尽くそうと、その全身にまとわりつく。「あの、アイン様? 助けてもらったりなんか……」「嫌よ、自業自得でしょう?」「ですよねぇー……」 とはいえ、私自身の信条としても、私やマーリンの身に危害が及ばない限り、自ら「手助け」などという殊勝な真似をするつもりはない。 そもそも、私の宝物庫を踏み荒らしたリヒトが悪いのだから。 面倒くさい? ええ、そうね、否定はしないわ? 私、歪んでいるらしいし?「なんと禍々しい呪詛の力……! アイン様! ここはワシに任せてお逃げくだされ!」 瘴気と漆黒の雷光が周囲に満
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