最後に見た景色は、冷たい雨に濡れる歩道橋。その手すりにそっと添えられた、誰かのための花束だった。 舞い上がる傘。 遠ざかる意識。 情報の濁流に呑まれながら、視界の端に映った「自分の死体」を見て、私は思わず苦笑した。 ああ、本当にあっけない人生だった。十五年しか生きていない前世の記憶なんて、ただの呪いに過ぎなかったのに。 ——プツンと、世界が消えた。 ***「ふふふん、ふふふ〜ん♪」 私は今、すこぶる機嫌がいい。 十五年かけてようやく辿り着いたのだ。 この閉鎖的で、私を「子供を産む道具」としか見ない腐った王国の片隅で、私が手に入れた最強の武器。「これはアイン王女殿下。本日はご機嫌なようで何よりです。いつ見てもその見事な銀髪はお美しい。アイン様の燃えるような緋色の瞳が、実に映えますな」 声をかけてきたのは、長く白い髭を蓄えた老人。 宮廷魔術師筆頭であり、私の師でもあるマーリンだ。前世の映画に出てくる偉大な魔法使いを絵に描いたような風貌をしている。「……ねえマーリン。私の髪と目のこと、私がどれだけ呪わしく思っているか知っていて言ってる? 次それ口にしたら、一ヶ月は口聞いてあげないからね」 私がジロリと睨むと、マーリンは「おっと」という顔で大袈裟に身をすくめた。 このガルムス王国において、銀髪と緋色の目は『不吉な魔術の申し子』として忌み嫌われる特徴だ。 王族でありながら私が冷遇されている理由の一端でもある。「い、以後気をつけます……。しかし殿下、その抱えられている箱は?」「ふふ、聞いて驚かないでね? やっと手に入れたのよ。——転移コウモリの羽!」 瓶詰めにされた幻の素材を見せると、マーリンは驚愕のあまり白髭を震わせた。「まさか、本当に仕留めなさるとは。見つけた瞬間に空間を跳ぶあの厄介な魔物を、どうやって……」「私の召喚術の前には、空間の壁なんて無意味だってこと。……まぁ、高度数百メートルの上空に強制転移させられた時は、本気で二度目の死を覚悟したけどね」 私はこう見えて、王国内では密かに『稀代の天才』と噂される召喚魔術師なのだ。「これで『時空花』と『転移コウモリの羽』が揃った。あとは『空創の断片』さえあれば、ついに……異界から“勇者”を召喚できるわ」 私の胸の中で、心臓が爆ぜるように高鳴る。 前世で誰にも必要とされなかっ
آخر تحديث : 2026-05-26 اقرأ المزيد