燦然と降り注ぐ陽気と、耳を震わせる賑やかで活気のある人混み。 石畳の街道の左右には所狭しと露店が立ち並び、香ばしく焼かれた肉や新鮮な野菜、瑞々しい果物の香りが鼻腔をくすぐる。 商人たちの張りのある野太い呼び込みの声が、至る所から響き渡っていた。『というわけで、さっさと買い物にいくわよ!』『どういう脈絡だよ……。ふぁあ、眠ぃ』 私はリヒトを引き連れて、王都の城下町、その中心部へと足を運んでいた。 このガルムス王国は大陸の中央に位置することから、近隣諸国からも多種多様な人種と物流が集まる、まさにこの大陸の心臓部だ。 地方や異国からの珍しい物資が、日々大量に流れ込んでくる。『あなたの着替えも、最低限の日用品も装備も必要でしょう? 一応お城の備品でも揃うけれど、あんな格式張った豪奢な装いじゃ、いざという時に動きにくくて話にならないわ』『だから、〝あなた〟じゃなくて〝リヒト〟と呼べって言ってるだろ』 なぜこの男は、頑なに名前にこだわるのか。 ……絶対に呼んであげないけれどね。 なんだか気恥ずかしいし、負けたような気がして癪に障る。『というか、アイン……様。なんで突然、髪が金髪になってるんだ?』 昨夜のミケとポチの恐怖が頭をよぎったのか、それとも胸に刻まれた呪わしい刻印の作用か。 皮肉混じりの「王女様」という呼び方を途中で言い淀み、不器用な「様」付けに落ち着いたリヒトが、私の容姿の〝激変〟に眉をひそめてツッコミを入れてきた。 私は足を止め、ふっと慈悲深い聖女のような笑みを貼り付けて応じる。『わたくし、一応はこれでも王女ですので。街へ降りるための変装に決まっているでしょう。 これは最高級の繊維で編まれた魔術的なカツラよ。私の本来の銀髪は……この国じゃ、悪目立ちしすぎるの』 ただでさえ不吉の象徴として忌み嫌われている髪だ。 街中で晒せば、暴動が起きかねない。 それに、一応は第十王女。 兄姉たちは私がどこで野垂れ死のうが関心すらないだろうけれど、余計な火種は避けるに限る。 この大陸において、純粋な銀髪を持つ人間は存在しない。 基本的にはブロンドか茶系、あるいは赤毛が一般的だ。 第二王女アリエルの鮮烈な赤髪も珍しくはあるけれど、完全に排斥されるような色彩ではないのだ。『あぁ、なるほどな、変装か。どおりで格好も、随分とラフなわけだ』
Read more