少年の言葉にはそれほど訛りがなかったため、裕翔にもきちんと理解できた。彼は慌てて自己紹介をする。姉の友人だと聞くと、少年はようやく警戒を解いた。それから家の中へ駆け込み、両親を呼んでくる。両親が出てきて初めて、玄関の扉が開かれた。「実乃里に会いに来たのかい?」事情を聞いた夏井母は、にこやかに首を横へ振った。「昨日が実乃里と竜之介の結婚式だったからね。今日はもう実家にはいないよ。たぶん新居の方にいるはずよ」その言葉で、裕翔はついに実乃里の結婚が事実であることを完全に思い知らされた。顔に貼り付けていた笑みがわずかに引きつる。唇を動かして無理やり笑顔を作ったが、それはひどくぎこちなかった。「そうですか......」彼は声を絞り出す。「彼女に会わせていただけませんか。少し聞きたいことがあるんです」夏井母は申し訳なさそうに笑った。「あの子、将っていうの。彼に案内させましょう。ごめんなさいね、私は家の用事があって手が離せないの」そう言って、近くでおとなしく座っていた夏井将(なつい しょう)を指差した。裕翔にとっては、誰が案内するかなど問題ではない。とにかく実乃里に会いたかった。彼は頷くと、夏井父と夏井母に礼を述べ、将とともに家を後にした。新居は町の中にはなかった。裕翔の車は町の入口付近に停めてある。高級車に乗るのは初めてだったのだろう。将は目を輝かせながら、車内をあちこち触って回っていた。裕翔はそれを咎めなかった。むしろ自らシートベルトを締めてやる。車は将の案内で走り出した。やがて新居のあるマンションの駐車場へ到着する。そこからエレベーターに乗り、数階上へ。最後に一室の前で足を止めた。「ここだよ!」一方その頃。実乃里は母から電話を受けていた。将が、自分の友人だという男性を連れて来るという話だった。あまりにあっさり他人を案内役にした母に呆れつつも、彼女は早めに玄関で待っていた。ただ、不思議だった。――自分の友人?大学はS市で過ごした。友人たちもほとんどがS市にいる。その後は裕翔と共にZ市で働き始めた。さらに癌の治療で海外へ渡った数年間。その間にほとんどの友人と連絡が途絶えてしまった。そんな自分を、わざわざ遠方から訪
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