智哉の顔からみるみる血の気が引いていき、持っていたグラスがぎしりと音を立てる。彼は勢いよくその友人を見つめると、凍りつくような声で言い放った。「お前が?」その殺気だった目に一瞬ひるんだ友人だったが、負けじと言い返す「なんだよ。練習相手だったんだろ?それに、芽衣ちゃんと一緒になったら、梓さんのことなんて捨てるくせに。まさか、一生他の男を梓に近づけないつもりか?」「てめぇ、もう一度言ってみろ!」智哉は勢いよく立ち上がると、グラスを床に叩きつけた。派手な音を立てて破片が飛び散る。その瞳には、今までにないほどの激しい怒りが宿っていた。まるで彼の逆鱗に触れてしまったかのように。相手もかっとなって、智哉の胸ぐらを掴んだ。「図星だろ?ただの遊びだったくせに、いまさら純情ぶってんじゃねぇよ!」二人はそのままもみ合いになり、殴り合う音やガラスが割れる音が混ざり合って、現場は騒然とした空気に包まれた。何人かが慌てて仲裁に入る。「おい、いい加減にしろ!俺たちもう何十年も付き合ってきた仲だろ!女一人で殴り合うなんてどうかしてるぞ!」「それに、梓さんはもうこの街を去って、二度と盛沢市には戻ってこない。なのに、いまさらこんなことで騒いで何になるんだ?」仲間たちに引き離された智哉は、肩で息をしながらも、怒りの籠もった視線で相手を睨み続けた。まるで今にでも噛み殺してしまいそうなほどの、気迫がある。仲間内でも少し年上の男が溜息をついて、智哉の肩を叩いた。「智哉、明日は芽衣ちゃんの誕生日パーティーで、告白するんだろ?本当に好きなのは誰なのか、ちゃんと自分で考えろよ。間違えれば、あとに引けなくなるからな」智哉はなんとか呼吸を整えたが、頭の中はぐちゃぐちゃだった。目を閉じると、梓と過ごした日々が走馬灯のように浮かんでは消える。笑顔でネクタイを締めてくれた梓、胸の中で丸くなって眠る梓、キッチンに立つ梓の背中、ベッドの上で見せるあの艶やかな瞳……それらすべてが頭の中を駆け巡り、記憶のひとつひとつが胸の痛みを倍増させた。だが、再び目を開いた智哉が口にした言葉は、真逆のものだった。「俺が好きなのは芽衣だ。さっきは飲みすぎただけだから」そう言い捨てて、その場を去った彼の背中は、どこか逃げ出すかのように見えた。マンションに戻った智哉は、部屋のドア
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