All Chapters of 平安時代の悪役令嬢は婚約破棄します!: Chapter 31 - Chapter 33

33 Chapters

第三十一話〝みや〟という名の姫

 私(左大臣の元大君の方)が首を傾げていると――。「〝みや〟は私の父親違いの妹です」  頼浮が言った。「……つまり、私はお母様の不義の子で、あなたはお兄様ってこと?」  私が訊ねる。 お母様がお父様を婿にする前に他の殿方を夫にしていた時期があって、その時に頼浮を産んだのでないのならそういう事になる。  だとすると――。 せっかく入内しなくて良くなったのに……。 帰る家を失った上に頼浮と異父兄妹なんて……。 これでは結局結ばれることが出来ないのは同じだ。 なんてことですの……。 では、通ってきて婿になる気はなかったと言う事ですのね。 それとも左大臣の姫なら兄妹と言うことを隠して婿になってもいいと思っていたとか? そして今は左大臣の姫ではなくなってしまったから明かしたということ? 帰る家を失った上に散々ですわ……。 私は肩を落とした。 とはいえ妻というのは基本的に夫の出世の手伝い(と跡継ぎ)のためにいるのだから左大臣の娘ではないどころか貴族ですらなくなり財産もない今の私では相手にしてくれる殿方などいるはずないのだ。 夫に養ってもらう妻もいるが、それは男性が出世して財産も出来てからの話である。「北の方ではない妻が産んだ姫――中の君です。左大臣の中の君の名は美也というのです」 「私と同じ名前でしたの!? お父様ったら!」 いくらなんでもいい加減すぎますわ! 感傷に浸っていましたのに、ぶち壊しではありませんか!「母は私の父に捨てられて苦しい生活を送っていたのです。それで左大臣が一時期、母を援助して下さっていました。美也はその時に出来た娘です」 援助と言いつつすることはしてたって事なのね……。 とはいえ、そもそも面倒を見るというのは妻にするという事なのだが。 親が娘に大して財産を残さなかった場合、女性は夫に捨てられたらすぐに生活
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第三十二話 物語の続き ~平安時代の悪役令嬢~

〝橘の よりちかき香は ならのはの はねのはやしは 深紫と〟 歌の下の句で「はねのはやしは 深紫と」と言ったのは、初句の『橘の』は近衛と言う意味ではない(『右近衛府』を『右近の橘』ということがあるため)だと思っていた。『ならのはの』は枕詞なので意味はありませんのよ。『羽林』は近衛府の大将から少将までを指す言葉で官位は従三位から正五位下で色は深紫、自分は六位(色は深緑)だから羽林ではない。 それでも敢えて羽林と言う言葉を使ったのは『橘』は『近衛』と言う意味ではなく名字だ、という意味だと解釈していたのだけれど――。 考えすぎだったのかしら……。 私は首を傾げた。 もしかして思っていたより歌が得意ではないとか?「それに六位って……太政大臣の跡継ぎなら蔭位は従五位下のはずよ」 六位なのは深緑の位襖を着ているのだから間違いないはずだ(官位によって着ていい色が決まっているんですのよ)。 自分より下の位階の色を着るのは構わないから(上の官位の色は勅許がない限り禁止)、深緑が好きとかそういう理由で実際は五位だけど六位の位襖を着ていたとか?  そんなことありますの?「私が引き取られてしばらくしてから北の方が息子を産んだので」 ああ……。 それも良くある話だ。 正妻に跡継ぎが産まれないからと他の妻が産んだ息子を後継者にしたら嫡男が産まれる。  昔の帝ですらそれで揉めて一度は皇統が分かれてしまったくらいだ。 一位の庶子なら蔭位は正六位上である。「だから橘を名乗っているのです」 「お母様が橘だったってこと?」 お祖父様(お母様のお父様)の政敵になるほどの大貴族(元)に『橘』なんていたかしら? 私は首を傾げた。「いえ、母や妹が住んでいたのは橘の里として有名なところだったので」 「
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参考文献一覧

敬称略 順不同鏡山昭典『私撰 枕ことば辞典』阿部萬蔵・阿部猛『改訂版 枕詞辞典』八條忠基『詳解 有識装束の世界』倉本一宏『平安京の下級官人』和田英松『官職要解』榎村寛之『斎宮-伊勢斎王たちの生きた古代史』承香院『あたらしい平安文化の教科書』繁田信一『平安朝の事件簿 王朝びとの殺人・強盗・汚職』こさかべ陽子『よく分かる平安時代』『平安時代の絵事典』『光る君へ』ついに最終回…時代考証が語る平安貴族の「政治」と「恋愛」<上>https://www.yomiuri.co.jp/column/japanesehistory/20241209-OYT8T50192/『光る君へ』ついに最終回…時代考証が語る平安貴族の「政治」と「恋愛」<下>https://www.yomiuri.co.jp/column/japanesehistory/20241209-OYT8T50194/望月光『望月光の古文教室 古典文法』荻野文子『マドンナ古文 パーフェクト版』『落窪物語』『平中物語』『御堂関白記』『小右記』『堤中納言物語』『日本書紀』『古事記』『古今和歌集』『山槐記』『源三位頼政集』小松英雄『伊勢物語の表現を掘り起こす』望月光『望月光の古文教室 古文読解編』荻野文子『マドンナ古文常識217』荻野文子『マドンナ古文和歌の修辞法』岡本梨奈『岡本梨奈の1冊読むだけで古文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』木下武司/亀田龍吉『万葉集 植物さんぽ図鑑』成清弘和『律令家族法の研究』『令義解』『律令制と古代社会』河添房江『紫式部と王朝文化のモノを読み解く 唐物と源氏物語』八條忠基『有職故実から学ぶ年中行事百科』梶川敏夫『ビジュアル再現 平安京 地中に息づく都の栄華』梶川敏夫『新版よみがえる古代京都の風景
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