All Chapters of あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~: Chapter 41 - Chapter 50

62 Chapters

第41話 そのお友達、本当に真の友情ですか?

――ドンッ! オーウェンが怒りに任せて拳を激しく机に叩きつけた。 「どうして分かってくれないんだ!」 今回の裁定に対し、オーウェンは憤りを隠せない。 「父上も母上も貴族主義的で人の心を理解していない!」 荒れるオーウェンに気づかわしげな視線を向ける男達がいた。 「落ち着いてください殿下」 眼鏡を掛けた怜悧な印象を受ける青髪の美形――サイモン・ケセミカ。 ケセミカ宮中伯の長男であり幼少期は神童とおだてられ育った英才である。 だが、イーリヤやレーキに遅れを取り成績不振に陥った。その為、一時は家の期待に応えられないと悩み苦しんだものだ。 そんな彼に人の価値は学業だけではなく、能力は学校の成績だけでは測れないと気づかせてくれたのがアイリスである。 「そうだぜ、俺達は最後まで殿下の味方だ」 赤髪の精悍な美丈夫であるクライン・キーノンは騎士を目指す裏表の無い真っ直ぐな少年だ。しかし、彼の強い正義感が裏目に出て騎士クラス内で孤立していた。 そんな愚直な性格も素敵なのだとアイリスに誉められ立ち直れた。 「ケヴィン先輩は心配だけど、まだ猶予はあるんじゃないかな」 実年齢よりちょっと幼なく見える白銀の髪と赤い瞳のアルビノの少年コニール・ニルゲ。彼はオーウェンの婚約者イーリヤ・ニルゲの義弟である。 彼は能力を買われて分家より養子となった。しかし、背も低く実年齢よりも幼く見える童顔のせいで侮られ、自分の容姿に強いコンプレックスを抱いていたショタ系美少年である。 アイリスは容姿で差別す
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第42話 その侯爵夫人、思い込み激しくないですか?

――ガッシャーーーンッ!!! 茶器が床に叩きつけられ、無残に砕けて散った。 この部屋の主が大事にしていたオーダーメイドの高級品だったのだが。もっとも、金の模様が過多でなんとも品がない。 「キャッ!?」 間近に控えていた侍女が短い悲鳴を上げた。 これまた高級そうだが派手な色合いでけばけばしい絨毯の上に飛散する茶器を前に彼女は震えた。 「ケヴィンがいったい何をしたって言うのよ!」 この部屋の主人であるセギュル夫人がまたいつもの癇癪を起こしたのである。 「あの子はただ自分の恋人の窮地を救おうとしただけじゃない!」 セギュル夫人はケヴィンの言い分を無条件に信じていた。だから、悪いのはエーリックだと疑いもしていないらしい。 「それなのに、どうしてケヴィンだけが罰を受けなきゃいけないの!?」 実際には継承権剥奪の危機に陥っているオーウェンが一番重い罰を受けている。だが、彼の罰には執行猶予がついており、今回の件でケヴィンだけが理不尽に虐げられているようにセギュル夫人には思えた。 「こんなの王妃の横暴じゃない!」 我が子だけが不当に罰を受けている――それがセギュル夫人の歪んだ認識なのであった。 イライラしてセギュル夫人は親指の爪を噛む。 「オーウェン殿下やエーリック殿下には何のお咎めもなく、ケヴィンだけに処分を下したのは王家にセギュル家を貶める目的があるんじゃないの?」 もともとエーリックは自分の婚約者を守っただけで何の咎もないし、オーウェンにしても多少横柄ではあったが罪を犯したわけでは
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第43話 その公爵令嬢、何か隠していませんか?

ケヴィンの件が片付き、晴れ晴れとした気分で学園にウェルシェは登校した。 「ご機嫌よう、ウェルシェ・グロラッハ様」 そこで彼女を待っていたのは、普段は校内で見かけない美女であった。 イーリヤ・ニルゲ公爵令嬢―― 黒い髪に赤い瞳、精巧な人形のように整った顔、女は嫉視し男は見惚れる起伏のあるプロポーション。一度その姿を目にすれば絶対に忘れられない絶世の美女。 オーウェンのテコ入れの為にもウェルシェも近いうちに接触をしようと思っていた相手だ。 (これは好都合ね) ウェルシェは内心でにんまり笑った。イーリヤは格上の相手だけに、どう接触しようか思案していたところなので、手間が省けた。 「これはイーリヤ・ニルゲ様、ご挨拶痛み入ります」「将来は姉妹になるのだしイーリヤで良いわ」「では、私のこともウェルシェとお呼びくださいませ」 しかも、望外にも名前を呼ぶ許可まで貰えた。これで今後は接触がしやすくなる。 「本当はもっと早くにあなたと会いたかったのだけど……」「あなた様はとてもお忙しい身。取るに足りぬ私などをお気に留めていただけただけでも光栄でございますわ」 イーリヤはふっと笑みを零した。見惚れるほどの妖艶な美しさだ。 「ウェルシェが取るに足りなかったら、この学園のほぼ全員がつまらない人間になってしまうわ」「まさか……私のような非才の身など……」「謙遜も過ぎれば嫌味よ」 (いやいや、公爵令嬢でありながら文武両道、魔力量甚大、努力の人で商才まである絶世の美女相手に何をど
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閑話イーリヤ① 悪役令嬢の杞憂

「やっぱりゲーム通りに進行しちゃうのね」 イーリヤの顔は暗い。 「オーウェンとの婚約も回避できなかったし、なるべく学園には近づかないようにしてたんだけどなぁ」 イーリヤは元日本人の転生者である。 魔術のある世界に転生したと知ったイーリヤは喜び勇んだ。前世でも頑張り屋の優等生だった彼女は、絶対すごい魔術師になってやると情熱を注いで、幼少期から猛特訓を重ねたものである。 もちろん公爵令嬢に生まれた以上その責務も忘れていない。勉学や貴族のマナー、その他できる事はなんでもやった。更には商会を設立してニルゲ公爵家の財政にも寄与した。 イーリヤ自身にもちょっとやり過ぎた感がないでもない。 「だけど、この身体って凄いスペック高いからやればやるだけ伸びるんで面白かったのよねぇ」 努力すれば結果が返ってくるのは楽しいものだ。 「それに前世ではこれからって時に死んじゃったから、采配を振るえるのが嬉しかったし」 大手に内定決まって未来に大きな夢を抱いていた時に、痴情のもつれに巻き込まれて死んでしまった。その無念を晴らすようにがむしゃらに頑張ったのだ。 痴情のもつれと言っても、イーリヤとは全くの無関係である。姫と持ち上げられてサークルクラッシャーしていた知人が取り巻きに襲われたところに居合わせて巻き込まれたのだ。 「だけど、やり過ぎたせいで、あんな事になるなんて」 頭痛でもするかのようにイーリヤはこめかみを押さえて嘆く。 イーリヤの能力が注目され、王家から第一王子オーウェンとの婚約が打診されたのだ。その時になってここが乙女ゲーム『あなたのお嫁さんになりたいです』の世界と知ったのである。&nb
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第44話 その聖女様、本当にヤバくないですか?

その後、ウェルシェはイーリヤと徐々に親交を深めていった。また、不埒な男共も完全に鳴りを潜め、ウェルシェは平穏な学園生活を取り戻した……かに見えた。 が、新たな問題が出現した―― 「あんたも『転生者』なんでしょ!」「はい?」 とある事情でウェルシェは校舎裏にある花園に一人で訪れていたのだが、そこに薄桜色の髪と春空色の瞳の美少女――アイリス・カオロが現れた。 「トボけたってムダよ!」(えっ、突然何なの?) 急にやって来て、開口一番ウェルシェに向かって訳の分からないことを喚き散らしたのである。意味が分からずウェルシェは目をぱちくりさせた。 「ちゃんと分かってんだからね!」 アイリスは恐ろしい形相で迫ってくる。『スリズィエの聖女』と呼ばれ、見目麗しき男達に愛嬌を振り撒いていた面影はまったくない。 「あんた『ゲーム』の『設定』と違い過ぎるのよ」 (うーん……意味不明ですね) アイリスの口にする単語が理解不能なウェルシェにすれば、子犬がギャンギャン吠えているとしか思えない。 「ちょっと、何とか言ったらどうなの?」 キレて叫ぶアイリスの身勝手さにウェルシェは呆れた。 (何とも礼儀知らずな娘ね) 友人でもないのに許しもなく高位の者に話し掛けるのはマナー違反である。 それでなくとも国内でも有数の資産家で権勢を誇っているグロラッハ家とお近づきになりたい者は数多くいるのだ。いちいち相手などしてられるわけがない。 「あなたはいった
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第45話 その王国、本当に未来が暗くないですか?

「何なのかしら、あれ?」 まるで嵐のように現れ去っていくアイリスに、ウェルシェは呆気に取られてしまった。 「あれが『スリズィエの聖女』と呼ばれているの?」 可愛い桜色の髪、澄んだ空色の瞳、華奢で小柄な肢体、際立った美貌ではないが、全体としてとても清涼感のある愛らしい美少女。 確かに外見はスリズィエを連想させる可憐な令嬢である。だが、その中身は聖女より狂女だとウェルシェは思った。 「とんだ見た目詐欺ね」 カミラがいれば「お前が言うな」とツッコミを入れそうな完全なる特大ブーメラン発言である。 「レーキ様達の苦労が偲ばれるわ」「お気遣い痛み入ります」 アイリスが去りウェルシェしかいないはずの花園に響く男性の声。 「まさか突撃を掛けられるなんてね」「お助けできず申し訳ありません」 その声はレーキ・ノモのものである。どうやら木の陰に隠れているようだ。 「仕方ないわ。今しばらくは私達の関係をオーウェン殿下には悟られたくないもの」 正直そこまで警戒する必要があるのだろうかとレーキは疑問に思う。 オーウェンはレーキ達を軽く見ている。彼らがウェルシェと結託しても歯牙にも掛けまい――レーキはそう分析している。 「あの女の異常性は見ての通りですので重々お気をつけください」「ええ、あそこまで滅茶苦茶な方とは予想外だったわ」 レーキの忠告にウェルシェは乾いた笑いを浮かべた。 「オーウェン殿下達はあんなスリ
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第46話 その白銀の妖精、やっぱり黒くないですか?

第46話 その白銀の妖精、やっぱり黒くないですか? 「ケヴィン様はまだ諦めてないのね」 レーキから報告を受けていた、ウェルシェの口から小さなため息が漏れる。 ひと月程前から自分をつけ回す怪しい影に気がつき、ウェルシェはレーキ達に彼らの監視をお願いしていたのだ。今日はその報告を受ける為に1人で庭園へと赴いたわけである。 さすがにアイリスから凸を受けるとは思わなかったが…… 「はい、彼らの大半はセギュル家ゆかりの者達でした」「大半?」「ええ、その……実はオーウェン殿下や側近達の息が掛かった者達も僅かながら含まれておりまして……」「それは殿下がケヴィン様に協力していると?」「おそらく」「呆れた」 王妃から叱責を受けたオーウェンは王位継承権まで失う危機に瀕している。それなのに今その原因となったウェルシェとエーリックの婚約にちょっかいを出すのは火に油だ。 「殿下はご自分のお立場を理解していらっしゃらないのね」「嘆かわしい限りです」 オーウェン達は在学中に何かしら実績を上げて汚名を返上しなければ最悪廃嫡される可能性まであるのだ。ウェルシェ達にかかずらっている場合ではない。 「もしかして、殿下は私がケヴィン様に懸想していると未だに信じていらっしゃるのかしら?」「おそらくは……オーウェン殿下にとってアイリス嬢の言葉は絶対ですから」 さっきの人様の婚約者を捕まえて犬呼ばわりするアイリスを思い出してウェルシェは顔を顰めた。 「どうしてアイリス様は私がケヴィン様をお慕いしていると思われたのか
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第47話 その攻略対象、ちょっとヤバくないですか?

「愛しのウェルシェ……」 その少年の呟きはとても小さいものであった。だが、静寂の室内に響き異様にはっきりと聞こえる。その声音にはどこか異常な雰囲気が内包していた。 彼の名はケヴィン・セギュル。 濡れたようにしっとり流れる長い黒髪、神秘的な光を宿すアンバーの瞳。色気のある泣きぼくろのミステリアスな美少年。 それが彼に熱を上げている学園の女生徒達からの評判であった。 「王家の奴らめ、私達の愛を無理やり引き裂くなんて!」 しかし、昼間からカーテンを閉め切った薄暗い部屋で陰鬱に呟くケヴィンにその面影はない。 暗闇に溶け込む黒髪はボサボサで、もともと細身ではあったが今はやつれ頰も痩けてしまっている。 「あいつら……私からウェルシェを奪いやがって……絶対に許さない」 窪んだ眼窩から飛び出しそうに、ギョロリと動く紫水晶の瞳は光を失い視線を虚ろに彷徨わせていた。 今の彼はミステリアスと言うより不気味と表現すべきだろう。 「ああ、愛しのウェルシェ……君に会いたい……その細い身体を抱き締めたい……その瑞々しい唇を貪りたい……」 きらめく白銀の髪をたなびかせる華奢な美少女の姿を思い浮かべ、ケヴィンはうわ言のように呟いた。 「ああ、ウェルシェ……私と引き裂かれて嘆き悲しんでいる君をこの腕で包み込んで慰めてあげたい」 アイリスの思い込みと希望的観測から『
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第48話 その怯える姿、やっぱり演技なんですか?

「ウェルシェ!」 すぐに来て欲しいとのウェルシェからの手紙に、エーリックは取る物も取りあえずグロラッハ家へと急行した。 そこで彼の目に入ったのは最愛の婚約者の怯える姿。 「ああ、エーリック様……私……とても怖いですわ」 その美しい顔貌を恐怖に引きつらせ、ウェルシェは真っ青になってエーリックに訴えた。穢れなき雪の如き真っ白な肌から可哀想なほど血の気が引いている。 「いったいどうしたの?」 エーリックは慌てて今にも倒れそうな最愛の婚約者に駆け寄り、両手でウェルシェを支えるように肩を抱き留めた。 (つ、冷たい!?) その瞬間、手に伝わってきた体温の低さにエーリックはびっくりした。ウェルシェの肩が氷のように冷えていたのだ。 「うっ、うっ、私……ヒック……私……グスッ……どうしたら良いか……」 しかも、ハラハラと涙を流し嗚咽を漏らしているではないか。 「大丈夫、僕がついているよ。何があったんだい?」「そ、それが……ここ最近、誰かにつけ回されているみたいなんです」「なんだって!?」 エーリックは目を大きく見開き驚いた。 「僕らの婚約は王妃様からの後ろ盾もあるというのに!」 オルメリアの裁定後、ウェルシェの周辺から不埒者の姿は消えて久しい。だが、喉元過ぎれば熱さを忘れるもので、また不心得者が出たのかとエーリックは眉間
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第49話 その侍女、そんなにお嬢様が心配ですか?

「くちゅん!」 エーリックを茫然と見送っていたウェルシェは、小さな可愛いくしゃみをしてブルッと身体を震わせた。 「どうぞ、お茶でもお召し上がって冷えた体を暖めてください」 それを見透かしていたかのように、四阿のテーブルにカミラがタイミングよく熱いお茶を用意していた。 「ありがとう」 湯気の立つティーカップを両手で持つと、氷のように冷たくなったウェルシェの手に熱が伝わってくる。 ウェルシェはふーふーと息を吹き掛けてから熱いお茶を一口すすった。熱が食道を通って冷えた身体の芯にじんわりと広がっていくのが分かる。 「呆気に取られて危うく凍死するところだったわ」「まったく何をやっているんですか」「ちょっと油断しただけよ」 呆れ声のカミラを睨んでウェルシェは口を尖らせた。 「お嬢様もよくやりますよねぇ」 カミラは空になったティーカップに新たなお茶を注ぐ。 「ふふ、迫真の演技だったでしょ」 二杯目のお茶に口を付けていたウェルシェは自慢げにカミラを見上げた。 「青ざめた表情を作る為に魔術で循環血液の温度を下げるなんて……一歩間違えば死にますよ?」 先ほどの怯えた様子はもちろん演技である。しかも、よりリアリティを持たせるため、体温まで下げる徹底ぶり。 「フツーこんな事に命かけませんよね?」 ウェルシェは炎熱魔術と氷結魔術を複合、応用し体温を自在にコントロールできるのだ。これには0.1度単位の緻密な温度管理が必須で、ウェルシェの繊細な魔力コントロールあっての魔術である。
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