「まるでミツバチですわね」 アイリスを囲むオーウェン達の姿は女王蜂と働かぬオス蜂のようだ。 (ミツバチの雄は交尾を終えたら女王蜂から捨てられてしまうのよね?) いつかオーウェン達もポイッと捨てられてしまうのではないか――そんな想像にウェルシェはぞっとした。 「淡い桜色の髪は、スリズィエを思い起こさせはしますけれど……」 スリズィエはピンク色の5枚の花びらが可愛らしい。その木を呼び名に冠する少女――アイリス・カオロ。 彼女が得体の知れない化け物のように思えてきた。少なくとも彼らが思うような聖女では決してない。アイリスが聖女なら、見目の良い男性限定で交流を持つはずがないからだ。 「あんなバッタもん聖女の何が良いんですの?」 ここにカミラがいれば、バッタもんにはバッタもんを嗅ぎ分ける嗅覚があるのですねとでも言いそうだ。 「普段おっとりしてるのにウェルシェも言うわねぇ」「だってイーリヤ様やキャロルの方が圧倒的に素敵だと思いますわ」「ふふ、ありがとう」 キャロルが屈託なく笑った。 本当に可愛いとウェルシェは思う。こんな素敵な婚約者を蔑ろにしているクラインは何を考えているのか。 確かにアイリスはかなり容姿に優れている。だが、どす黒くおぞましい何かが、内から這い出してきそうでウェルシェは彼女を好きになれない。 ここにカミラがいれば苦笑いして同族嫌悪ですか?と言いそうだが。 「でも、もう良いの」 珍しく琥珀色の瞳に翳りが見えた。 「婚約者の事は吹っ切れたわ」
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