「お初にお目もじ仕ります」 目の前の少女にエーリックは一瞬で心を奪われた。 「グロラッハ侯爵の娘、ウェルシェでございます」 それは一分の隙もない立礼を披露する美少女だった。まさに貴族のご令嬢といった見事な所作である。 ところが、それでいてニッコリ笑うウェルシェは純真無垢そのもの。自然な笑顔は貴族令嬢とは程遠いもののようにエーリックには感じられた。 ——ウェルシェ・グロラッハ侯爵令嬢。 幻想的な白銀の髪、神秘的な翠緑の瞳、透き通る白い肌、折れそうなほど華奢な四肢……彼女のどれをとっても儚く、触れれば消えてしまいそうなほど現実感がない。 美しいだとか、可愛いだとか、そんな言葉で表現できない存在。 「妖精?」 エーリックは無意識に呟いていた。 (絵本から妖精の姫が迷い出てきたんじゃない?) そんな絵空事をエーリックは本気で思った。 「あの……?」 見惚れて固まるエーリックに妖精が不思議そうに声をかけた。 (何やってんの) エーリックはハッと我に返った。 「失礼しました。僕はマルトニア王国第二王子エーリックです」 そして、胸に手を当てると、優雅に一礼してみせた。すぐに立ち直れるのは、さすが王家で鍛えられた王子である。 「あなたのように可憐な姫君と婚約できるのは望外の喜びです」 それは型通りの世辞。
Terakhir Diperbarui : 2026-06-03 Baca selengkapnya