「お初にお目もじ仕ります」目の前の少女にエーリックは一瞬で心を奪われた。「グロラッハ侯爵の娘、ウェルシェでございます」それは一分の隙もない立礼を披露する美少女だった。まさに貴族のご令嬢といった見事な所作である。ところが、それでいてニッコリ笑うウェルシェは純真無垢そのもの。自然な笑顔は貴族令嬢とは程遠いもののようにエーリックには感じられた。——ウェルシェ・グロラッハ侯爵令嬢。幻想的な白銀の髪、神秘的な翠緑の瞳、透き通る白い肌、折れそうなほど華奢な四肢……彼女のどれをとっても儚く、触れれば消えてしまいそうなほど現実感がない。美しいだとか、可愛いだとか、そんな言葉で表現できない存在。「妖精?」エーリックは無意識に呟いていた。(絵本から妖精の姫が迷い出てきたんじゃない?)そんな絵空事をエーリックは本気で思った。「あの……?」見惚れて固まるエーリックに妖精が不思議そうに声をかけた。(何やってんの)エーリックはハッと我に返った。「失礼しました。僕はマルトニア王国第二王子エーリックです」そして、胸に手を当てると、優雅に一礼してみせた。すぐに立ち直れるのは、さすが王家で鍛えられた王子である。「あなたのように可憐な姫君と婚約できるのは望外の喜びです」それは型通りの世辞。(ホント、めちゃめちゃ可愛い!)だが、エーリックの顔から溢れる微笑みと、口から漏れ出る言葉に含まれる熱は全て本物。(こんな子が僕のお嫁さんになってくれるの!?)彼は本心からウェルシェとの婚約を喜んだ。エーリックも負けず劣らず美男子である。少し癖のある金髪は彼の人柄を柔らかく見せ、澄んだ青い瞳は優し気で、十五歳になりたてのボーイソプラノと相まって天使のような美少年なのだ。そんなエーリックの微笑みを受け、ウェルシェは赤く染めた頬を隠すように手を当てて小首を傾げた。「まあ、エーリック殿下はお世辞がお上手ですのね」「まごう事なき本心です。僕は国一番の果報者ですね」「私ごときに大袈裟ですわ」「大袈裟ではありませんよ。あなたの前には美しい花達も恥じ入るでしょう」いよいよウェルシェは真っ赤になった。「ですが、それだけに国中の男達からやっかみを受けないか心配になります」
อ่านเพิ่มเติม