あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

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last updateHuling Na-update : 2026-07-24
By:  古芭白あきらIn-update ngayon lang
Language: Japanese
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 ウェルシェは見た目だけならパーフェクトな侯爵令嬢。ところが、可憐な外見に反して中身は利益重視の恋愛音痴だった!  一方、純情なエーリックはウェルシェの儚げな見た目に騙され一目ぼれ。そんな二人が婚約したのだが……ウェルシェに横恋慕する男子生徒が続出!  しかも、自称ヒロインや悪役令嬢まで続々登場!  だが、そんな妨害なんのその。腹黒令嬢ウェルシェは周りの者達を振り回し己の野望へと突き進む。  だって、ウェルシェは利益をもたらしてくれる――「あなたのお嫁さんになりたいです!」  これは乙女ゲームに転生したヒロインと転生悪役令嬢……ではなく、その争いの煽りを食らったウェルシェとエーリックの抱腹絶倒ドタバタラブコメディ!

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Kabanata 1

第1話 その婚約、本当に愛がありますか?

「お初にお目もじつかまつります」

目の前の少女にエーリックは一瞬で心を奪われた。

「グロラッハ侯爵の娘、ウェルシェでございます」

それは一分の隙もない立礼カーテシーを披露する美少女だった。まさに貴族のご令嬢といった見事な所作である。

ところが、それでいてニッコリ笑うウェルシェは純真無垢そのもの。自然な笑顔は貴族令嬢とは程遠いもののようにエーリックには感じられた。

——ウェルシェ・グロラッハ侯爵令嬢。

幻想的な白銀の髪シルバーブロンド、神秘的な翠緑の瞳エメラルド、透き通る白い肌、折れそうなほど華奢な四肢……彼女のどれをとっても儚く、触れれば消えてしまいそうなほど現実感がない。

美しいだとか、可愛いだとか、そんな言葉で表現できない存在。

「妖精?」

エーリックは無意識に呟いていた。

(絵本から妖精の姫が迷い出てきたんじゃない?)

そんな絵空事をエーリックは本気で思った。

「あの……?」

見惚れて固まるエーリックに妖精ウェルシェが不思議そうに声をかけた。

(何やってんの)

エーリックはハッと我に返った。

「失礼しました。僕はマルトニア王国第二王子エーリックです」

そして、胸に手を当てると、優雅に一礼してみせた。すぐに立ち直れるのは、さすが王家で鍛えられた王子である。

「あなたのように可憐な姫君と婚約できるのは望外の喜びです」

それは型通りの世辞。

(ホント、めちゃめちゃ可愛い!)

だが、エーリックの顔からこぼれる微笑みと、口から漏れ出る言葉に含まれる熱は全て本物。

(こんな子が僕のお嫁さんになってくれるの!?)

彼は本心からウェルシェとの婚約を喜んだ。

エーリックも負けず劣らず美男子である。

少し癖のある金髪は彼の人柄を柔らかく見せ、澄んだ青い瞳は優し気で、十五歳になりたてのボーイソプラノと相まって天使のような美少年なのだ。

そんなエーリックの微笑みを受け、ウェルシェは赤く染めた頬を隠すように手を当てて小首をかしげた。

「まあ、エーリック殿下はお世辞がお上手ですのね」

「まごう事なき本心です。僕は国一番の果報者ですね」

「私ごときに大袈裟ですわ」

「大袈裟ではありませんよ。あなたの前には美しい花達も恥じ入るでしょう」

いよいよウェルシェは真っ赤になった。

「ですが、それだけに国中の男達からやっかみを受けないか心配になります」

「殿下、もうそれくらいで」

恥ずかしがってウェルシェは両手で顔を隠す。白い肌に朱が刺す姿はあまりに可憐。

「エーリックです」

「殿下?」

「グロラッハ嬢には名前で……エーリックと呼んで欲しいのです」

「あっ、その……エーリック…様?」

ウェルシェがもじもじと上目遣いではにかむと、エーリックはグッと胸を押さえた。

「では、私の事もウェルシェ……と」

「えっと……ウェルシェ?」

「はい!」

エーリックがおずおずと名前を呼ぶと、ウェルシェはパッと花が咲くように笑った。

この瞬間、エーリックは恋に落ちた。

そもそも、この婚約は政略である。だから、エーリックはただの契約として相手のウェルシェに何の期待も感慨も抱いていなかった。

(僕は絶対ウェルシェこの子と結婚する!)

だが、エーリックの頭から政略だとか利害だとか全てが吹き飛んでいた。

「今すぐ結婚できたらいいのに」

「まあ、エーリック様ったら」

ウェルシェがくすりと笑った。

エーリックの言葉を冗談と思ったらしい。彼女の笑顔は年相応に可愛くて、こんな一面もあるのかとエーリックは何度でも恋に落ちる。

「僕は本気ですよ?」

「あっ……その……私も早くエーリック様の……」

それは消え入りそうなか細い声だった。

だが、エーリックは聞き逃さなかった。

はにかんでうつむいたウェルシェは、か細い声で確かに囁いたのだ——「お嫁さんになりたいです」と。

——なんて可愛いんだ!

エーリックは完全ノックアウト。

もはや、彼は恋に恋する王子様。

(早くウェルシェと結婚したいな♪)

エーリックは浮かれきっていた。この絶世の美少女ウェルシェが、自分のお嫁さんになってくれる奇跡を神に感謝さえしていた。

だが、彼は気づいていなかった。

俯くウェルシェの口の端がつり上がっていることに。

彼女が拳を握り小さくガッツポーズしていることに。

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第1話 その婚約、本当に愛がありますか?
「お初にお目もじ仕ります」目の前の少女にエーリックは一瞬で心を奪われた。「グロラッハ侯爵の娘、ウェルシェでございます」それは一分の隙もない立礼を披露する美少女だった。まさに貴族のご令嬢といった見事な所作である。ところが、それでいてニッコリ笑うウェルシェは純真無垢そのもの。自然な笑顔は貴族令嬢とは程遠いもののようにエーリックには感じられた。——ウェルシェ・グロラッハ侯爵令嬢。幻想的な白銀の髪、神秘的な翠緑の瞳、透き通る白い肌、折れそうなほど華奢な四肢……彼女のどれをとっても儚く、触れれば消えてしまいそうなほど現実感がない。美しいだとか、可愛いだとか、そんな言葉で表現できない存在。「妖精?」エーリックは無意識に呟いていた。(絵本から妖精の姫が迷い出てきたんじゃない?)そんな絵空事をエーリックは本気で思った。「あの……?」見惚れて固まるエーリックに妖精が不思議そうに声をかけた。(何やってんの)エーリックはハッと我に返った。「失礼しました。僕はマルトニア王国第二王子エーリックです」そして、胸に手を当てると、優雅に一礼してみせた。すぐに立ち直れるのは、さすが王家で鍛えられた王子である。「あなたのように可憐な姫君と婚約できるのは望外の喜びです」それは型通りの世辞。(ホント、めちゃめちゃ可愛い!)だが、エーリックの顔から溢れる微笑みと、口から漏れ出る言葉に含まれる熱は全て本物。(こんな子が僕のお嫁さんになってくれるの!?)彼は本心からウェルシェとの婚約を喜んだ。エーリックも負けず劣らず美男子である。少し癖のある金髪は彼の人柄を柔らかく見せ、澄んだ青い瞳は優し気で、十五歳になりたてのボーイソプラノと相まって天使のような美少年なのだ。そんなエーリックの微笑みを受け、ウェルシェは赤く染めた頬を隠すように手を当てて小首を傾げた。「まあ、エーリック殿下はお世辞がお上手ですのね」「まごう事なき本心です。僕は国一番の果報者ですね」「私ごときに大袈裟ですわ」「大袈裟ではありませんよ。あなたの前には美しい花達も恥じ入るでしょう」いよいよウェルシェは真っ赤になった。「ですが、それだけに国中の男達からやっかみを受けないか心配になります」
Magbasa pa
第2話 その侍女、本当に忠実ですか?
「名残惜しいですが、そろそろ帰らねばなりません」「まあ、もうそんな時間なんですの?」「楽しい時間はあっという間ですね」エーリックが器用にウィンクすると、ウェルシェがパッと花が咲くように笑った。「また、あなたにお会いできる日を楽しみにしております」「私も楽しみにお待ちしておりますわ」潤んだ瞳でウェルシェから可愛く見上げられ、エーリックはすっかり舞い上がってしまった。(これって、ウェルシェも僕に恋しちゃってるんじゃない?)エーリックはカッコよく颯爽と帰るつもりだった。だが、顔は締まりがなく、足取りも地につかずふわふわして覚束ない。「あらあら、あんなにフラフラして大丈夫かしら」エーリックの背中を見送りながらウェルシェはくすりと笑った。そこに先程までの純真無垢な妖精の姿はどこにもない。背後で眼鏡をかけた侍女のカミラが小さくため息を漏らした。それに気づいていながらウェルシェは何も言わず四阿に戻って座った。時を待たずしてカミラがスッと音もなくお茶を用意する。目でカミラに礼をしたウェルシェはお茶を一口含んで口を潤した。なんとも息の合った主従である。「ちょっと頼りなさそうだけど、素直そうだし善良な方のようで安心したわ」「さようでございますね」豹変した主人の態度に驚く様子も見せずにカミラは相槌を打った。「これなら結婚後は私が主導権を握れそうね」「もう既に握っておられるではありませんか」呆れたようにカミラの目が据わる。「私はエーリック殿下が憐れでなりません」「あら、こ~んな理想のお嫁さんを娶れるのよ。Win-Winじゃない」幻想的な白銀の髪と神秘的な翠緑の瞳、肌は抜けるように白く、ほっそりとした小柄な令嬢――エーリックの目にはウェルシェがさぞ儚く麗しい姫君の如く映った事だろう。「私みたいな完璧美少女が婚約者なんてエーリック様も果報者よね」「そうですね、お嬢様はまさに穢れなき妖精のごとき絶世の美少女――」賛辞にふふんと笑い、そうだろそうだろと頷くウェルシェを眺めながらカミラは思う。自分の主人は完全無欠――ただし、外見だけ。「中身はこんなんですが」「こんなのとは何よッ!」エーリックと談笑していた時のお淑やかだった姿は見る影もな
Magbasa pa
第3話 その入学、本当に必要ですか?
「エーリック様、いらっしゃいませ」「やあ、また来たよ、ウェルシェ」ウェルシェの予想は大当たり。「迷惑じゃなかった?」「そのようなことありませんわ」エーリックは儚げで、庇護欲を掻き立てるようなか弱い女性が好みだった。足繁く通う彼はウェルシェのかまととの完全な虜である。「エーリック様にお会いできて私はとても嬉しいですわ」「えへへへ、そ、そう?」ウェルシェの笑顔にエーリックがデレデレになる。手のひらでコロコロ転がされているとも知らずに。端で見ていたカミラはなんとも完璧な猫かぶりだと感心するやら呆れるやら。もともとウェルシェは幼少期より儚げな深窓の令嬢を演じて、海千山千の貴族達さえも欺いてきた。おかげで、こんな擬態も空気を吸うより簡単なのだ。未熟なエーリックが陥落しないはずもない。2人の仲はウェルシェの思惑通り急速かつ順調に進展していった。「ところで、ウェルシェも学園へ通うのかい?」「そのつもりでおりますわ」そして、今は二人でお茶と会話を楽しんでいたのだが、ふと貴族子女が通う王立マルトニア学園の話題がのぼった。「そう……なんだ」「エーリック様は私が学園へ通うのに反対なんですの?」エーリックが少し浮かない表情になり、ウェルシェはおやっと不思議に感じた。エーリックは真面目で努力家であり、だから自然と頑張る人間を愛する傾向があるとの情報をウェルシェは掴んでいた。さらに、ウェルシェに想いを寄せている彼は、一時でも長く彼女といたいと望んでいるはずである。だから、ウェルシェが学園へ一緒に通うのを喜ぶと想定していただけに、彼の顔色が優れないのを訝しんだ。「ウェルシェは学業も魔術も優秀だから、より高みを目指して研鑽を積むのは素晴らしいとは思うよ……だけど」「だけど?」頬にそっと手を添えると、ウェルシェは不思議そうな顔で小首を傾げた。そんな何気ない仕草もあざといほど可愛い。ウェルシェはエーリックの前では、彼の好みそうな所作が息を吸うように自然にできるようになっていた。だから、今も特にウェルシェは狙ってやったわけではない。ただ、ウェルシェは無意識にエーリック好みのポーズを取っていたのである。「くっカワ……」「エーリック様?」「こほん……いや、ごめん、学園の話だったね」ウェルシェに見惚れ
Magbasa pa
第4話 その恋愛観、本当に大丈夫ですか?
「私ってそんな尻軽な女に見える?」 四阿に戻ったウェルシェの愚痴にカミラは首を傾げた。 「いきなりどうなさったのです?」「さっきエーリック様が仰っていたでしょ?」 お茶を注ぎながらカミラは、ああと得心がいった。 「お嬢様が他の男に心移りするかもってやつですか?」 それよそれとウェルシェは不満そうに口を尖らせた。そういう幼い振る舞いは年相応に可愛いなとカミラは思う。 「婚約者がいながら他の殿方になびくほど、私は不義理な女じゃないわ」「恋愛は義理人情ではありませんよ?」  思いのほか男女の機微に疎い主人をカミラは意外に思った。 「猫を被ったお嬢様は理想の令嬢なのですから」 ウェルシェの容姿は控え目に言っても絶世の美少女。彼女が学園へ行けば子息達がちょっかいを掛けるのは間違いないとカミラは思っている。 「何よぉ、素の私には魅力が無いって言うの?」「魅力はございますよ。理想ではありませんが」 一言余計よとウェルシェはぷぅっと不貞腐れる。そんな主人が可愛くて、カミラは心の中でじたばた悶えた。だが、出来る侍女は完全無表情。おくびにも態度に現わさない。 「だから、エーリック殿下が不安になる男心を分かって差し上げてください」「ずっとエーリック様が良いって言っているのに、いったい何に不安になるのよ?」 大人さえ手玉に取る美少女もまだまだ経験不足なようだ。カミラは色恋沙汰に疎い主人に対して苦笑いを浮かべた。 「学園には多数の殿方が集まります」「まあ、国中の貴族子弟が通うものね」
Magbasa pa
第5話 その新入生代表、本当に幻想的ですか?
――マルトニア学園入学式の日 校門から校舎へと続く道にスリズィエの花びらが舞う。 奥へと更に奥へと進めば、入学式が執り行われている大講堂へと続く。その中には今年入学する新入生とその保護者が集まっていた。 「新入生代表ウェルシェ・グロラッハ」 式が進行していく中で、一人の少女の名前が呼ばれた。 「はい」 凛とした声が講堂の中に響いた。 一斉に全員の視線が声の主に集まる。その先には一人の少女がちょうど席を立ったところだった。そんな大勢の視線を気にも止めず、少女は生徒達の間を壇上へ向け静々と歩いていく。 その姿に生徒も教師も保護者さえも、会場にいる誰もが息を飲んだ。 白銀の髪がふわりとなびく。そのきらめきに全員の視線が自然と集まった。 皆と同じ既製品のブレザーが、まるで彼女のためだけにデザインされた特注なのではないかと誰もが錯覚した。 制服の裾から覗く四肢は白く華奢で、歩く姿はあまりにも幻想的。あまりの儚さに一瞬でも目を離せば消えてしまいそうで誰もが視線を外せない。 「……妖精?」 惚けたようにみなが見守る中、誰かの口から思わず漏れ出た言葉。 それはとても小さい声だったが、静まりかえった会場には異様に響いた。だが、この場の誰もが美しい少女に目を奪われて気づかない。 息をするのも忘れる……それほど衝撃を受けていたのだ。 壇上の演台の前に立ったウェルシェがにこりと微笑む。その笑貌の美しさに全ての人の心までもが奪われた。 「スリズィエの花びら舞う陽射
Magbasa pa
第6話 その入学、本当に大丈夫だったんですか?
「なんなのよ、あの男どもは!?」いつもは人を食ったような態度で余裕綽綽のウェルシェが、らしくなくウガァーッと喚き散らした。その叫び声にカミラはそっとため息を漏らす。「私は面白おかしく学園生活を送りたいだけなのに!」ウェルシェがマルトニア学園に通うようになって三ヶ月が過ぎた。学園生活の出だしは上々。優秀なウェルシェにとって、学業関係や学園行事を卒なくこなすのは造作もない。お得意の猫かぶりで問題なく気の合う友人も作れた。そう、全ては順風満帆……のはずだったのだが、一つだけウェルシェに誤算があった。「どうして、言い寄る男が絶えないのよ!」つまり、エーリックの危惧していた通りになってしまったのだ。と言っても別にウェルシェが他の男に惚れたわけではない。周りの男どもがウェルシェにアプローチをかけてきたのだ。「だいたい、私には既に婚約者がいるのに」「入学式でのお嬢様の噂は私の耳にも届いておりますよ」暴れるウェルシェを横目に、お茶を完璧に注ぎながらカミラは呆れた。「全校生徒、全職員のハートを奪ったそうじゃありませんか」入学早々、ウェルシェは学園の話題を一人で掻っ攫った。新入生に儚げな妖精のごとき絶世の美少女が入ってきたと……優しげでふんわりした雰囲気のせいで、ウェルシェの人気は爆上がり。今も男女を問わず高騰を続けている。「お嬢様はやり過ぎたんですよ」「それでも婚約者のいる私に粉をかけてくるなんて思わないじゃない」「お嬢様はもっとご自分の魅力を理解してください」「ちゃんと理解しているわよ。他の令嬢より家柄も魔力も高く優秀で可愛いでしょ?」ウェルシェは人差し指を両頬に当ててポーズを取った。中々あざとカワイイ。こんな言動を他の者が聞けば、自己評価の高いいけ好かない女だと思われるだろう。だが、カミラの意見は真逆だった。あまりに自己評価が低過ぎる、と……「いいですか、お嬢様はダントツに家柄が良く、ぶっちぎりに優秀で、誰もが羨望の眼差しを向ける絶世の美少女なんですよ」「それは言い過ぎよ」まさか、とウェルシェはケタケタ笑って取り合わない。そんな主人にカミラは何度でもため息を吐くのだ。「それに私の婚約者はエーリック様よ」それを知ってウェルシェに言い寄ってくるのは王家を蔑ろにする行為だ。とても正気ではないとウェルシェは思う
Magbasa pa
第7話 その美少女ランキング、本当に必要ですか?
「お申し出は嬉しいのですが……」 ウェルシェがたおやかに微笑むと目の前の貴族令息は息を飲んだ。あまりに幻想的な妖精の笑貌で、見惚れて言葉を失ったようである。 「私には婚約者がおりますの。もう声をかけるのはお止めくださいませ」 だが、その愛らしい口から紡がれたのは辛辣な拒絶の言葉。 「ま、待ってくれ。あんな婚約者よりも俺の方がよっぽど……」「あんな?」 慌てた令息の失言に、ウェルシェの笑顔と声の温度が一気に氷点下へと下がった。 「私の婚約者が我が国の第二王子エーリック様と知っての発言ですの?」 もちろんご存じですよね、とウェルシェが念を押せば、さすがに令息は自分の迂闊さに気がついた。 「い、いや、今のは言葉のあやで……」「どうやら、あなたは王家に対して叛意をお持ちのようですわね」 ウェルシェの静かな恫喝に令息は青くなって逃げだした。その背中を見送りながらウェルシェの可愛らしいピンクの唇の間からため息が漏れる。 「どうしてあの方達はしつこく誘ってこられるのかしら?」 今の少年だけではない。他にも多数の令息から相変わらずウェルシェは言い寄られていた。 「ウェルシェは美人だし、グロラッハ侯爵家との縁は魅力的だからじゃない?」 そう答えたのは、ウェルシェが学園で初めて作った友人のキャロル・フレンド伯爵令嬢である。 キャロルは特別美人ではない。だが、栗毛色のくせっ毛に琥珀色の瞳を持つ彼女はとても愛嬌があって親しみやすい。 キャロルは貴族にしては裏表がなく、打算なくウェルシェに気安く接してくれた。ウェルシェもそんな彼
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第8話 その婚約、本当にただの政略ですか?
「ウェルシェは押しに弱そうなだからねぇ」 キャロルの指摘にウェルシェはちょっと複雑な気分だった。擬態を解けば男共をあしらうのは訳ない。 (だけど、今の私のイメージでは強く出られないしなぁ) エーリックの好みを演出する為のイメージ作りが仇となっている。それはウェルシェ自身も理解はしていた。だが、こればっかりはどうにもならない。 「それにウェルシェを強引に口説こうとしている筆頭はオーウェン殿下の側近だし」「ケヴィン・セギュル様のことですか?」 途端、ウェルシェは顔を顰めた。その名を口にするのも嫌そうだ。 「ホントにウェルシェはケヴィン先輩が嫌いよね」「次期国王になるオーウェン殿下の側近だと、ご自分で喧伝して威張り散らす傲慢な殿方は好きになれません」「まあ、私もちょっと苦手だけど」 ケヴィンはセギュル侯爵の次男で、濡れ羽のような黒髪に紫水晶の如き瞳のミステリアスな雰囲気を醸し出している美形である。 高位貴族の美男子とあって学園の女生徒達から大人気だ。彼のいる所は必ず黄色い声が聞こえてくる。 だが、はっきり言ってウェルシェの好みではない。ウェルシェの好みははっきりしている。それは富をもたらしてくれるエーリックのような金髪碧眼の柔らかい美少年だ。 「それに、ケヴィン様のように複数の女性を連れて歩く軽薄な方は大っ嫌いです」「普段あまり他人の好悪を見せないウェルシェにしては珍しいわね」 キャロルの指摘にウェルシェもはっとなった。悪感情は相手に悟られないよう韜晦するのが常である。 「ふふふ、人を嫌うのは人を好きになることに似てるのよ」「なっ! キ
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第9話 その親友、婚約の危機ですか?
「もちろん、エーリック様をお慕いしておりますわ」 ウェルシェは自信満々で(のもたらしてくれる富)と副音声に入れた。嘘は言っていない。 「ふふふ、今のは嘘くさぁい」「もう!」「ごめん、ごめん」 プイッとウェルシェはむくれてそっぽを向く。 キャロルが笑いながら謝罪すると、ウェルシェは横を向いたまま横目で彼女をチラッと見るとため息をついた。 「キャロル、私はエーリック様以外の殿方ををお慕いするなど絶対にあり得ませんわ」「ごめんって、もう揶揄わないから」「いいえ、この際だからはっきりとさせておきますわ!」 うわぁ、ウェルシェのスイッチ入れちゃったとキャロルの笑いが引き攣った。 「エーリック様を頼りないと仰るけれど、あの方は努力を怠ってはおりませんわ」「私は頼りないとまでは言ってないんだけど……」「才能や能力の多寡よりも、そのひたむきな姿勢こそ尊敬に値すると思いますの」「聞いてないし……」「それに引き換えケヴィン様は才能も能力もないのに努力をしようともしない。それなのに自尊心ばかり強くって」 ウェルシェは己の能力に自信がある。だから自信家であること自体を悪いとは思っていない。 だが、自信とは己の才能と能力、それを下支えする努力あってのものだとも考えている。当然ウェルシェは努力を怠ってはいない。 だが、ケヴィンの自信にはまったく根拠がない。彼は才能も能力も無いのに実家の権力を頼っただけで努力をしない自尊心だけが強い顔だけヤローなのである。 「なぜケヴィン様はご自分が選ばれて当然といった口ぶりで迫ってくるのか……本当に生理的に受け付けられませんわ」 
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第10話 その美少女、本当に聖女ですか?
「何あれ!?」 ウェルシェは思わず素が飛び出した。目の当たりにしたのは、それほど非常識な光景だったのである。 「ウェルシェ?」「あっ、いえ、何ですのあれは?」 ウェルシェは慌てて取り繕った。ちょっと訝しんだが、キャロルは特に深く考えず視線をピンク頭の少女に戻した。 「あれがアイリス・カオロ男爵令嬢、ウェルシェとイーリヤ様に続くマルトニア学園三大美少女最後の1人『スリズィエの聖女』よ」 ねっ可愛い娘でしょ、と訊かれてウェルシェは反応に困った。 「いえ、まあ、可愛いかもしれませんが、私がお尋ねしているのは周囲の人達のことですわ」「ああ、あれね」 なんとベンチに座るアイリスを中心に色とりどりの男達が群がっているのだ。 「あんなに男性とベタベタして……破廉恥ですわ」「初心で純なウェルシェにはちょっと刺激が強かったかな?」 ウェルシェは初心でも純でもなかったが、高位貴族の令嬢として教育を受けてきている。だから、大勢の男性を侍らせる令嬢など想像の埒外だったのだ。 いったい何人いるのか……ひーふーみーと数えて途中で止めた。2人であろうと10人であろうと、複数の男性と親しくしている事実は変わらない。 「刺激と言うより非常識に不快を覚えますわ。あれのどこが聖女なんですの?」「彼らからすると、励ましの言葉で心を救ってくれた慈母のような女性なんだそうよ」 なんだそれは? 時に、言葉は人生を劇的に変える力を持つ。それをウェルシェも否定するつもりはない。 だが、そんな事例は|稀有《けう
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