LOGINウェルシェは見た目だけならパーフェクトな侯爵令嬢。ところが、可憐な外見に反して中身は利益重視の恋愛音痴だった! 一方、純情なエーリックはウェルシェの儚げな見た目に騙され一目ぼれ。そんな二人が婚約したのだが……ウェルシェに横恋慕する男子生徒が続出! しかも、自称ヒロインや悪役令嬢まで続々登場! だが、そんな妨害なんのその。腹黒令嬢ウェルシェは周りの者達を振り回し己の野望へと突き進む。 だって、ウェルシェは利益をもたらしてくれる――「あなたのお嫁さんになりたいです!」 これは乙女ゲームに転生したヒロインと転生悪役令嬢……ではなく、その争いの煽りを食らったウェルシェとエーリックの抱腹絶倒ドタバタラブコメディ!
View More「えいっ!」競技服を身に纏った少女が可愛いかけ声とともに魔杖を振るう。その先から赤い魔弾が射出され、出現した人型の標的を穿った。魔弾と同じ赤色の髪をたなびかせ、前後左右に現れる敵人型標的を次々と狙い撃つ。――魔弾の射手本戦一回戦第四試合貴賓席で観戦するエーリックの目の前で赤髪の女生徒は次々と魔弾を標的に当てていく。彼女は一回目もパーフェクトゲームを披露し、今もまったく外す気配がない。どうやら、この試合は赤髪の少女の圧倒的勝利で終了しそうだ。「凄いね。さすがに本戦ともなると外す方があり得ないと錯覚してしまいそうだよ」「ええ、彼女が的を外す姿が想像できませんな」エーリックは感嘆を漏らし、スレインも共感した。その時、かちゃりと音を立てて扉が開いた。「あン娘はルーベルト伯爵んとこのルーナミリアって名のご令嬢で、優勝候補筆頭の正真正銘の化けモンですぜ」ノックも無しに入ってきたのはセルランだった。「さすがの姫さんも彼女に勝つのはちいと厳しいかな」順調に勝てば、ウェルシェは明日の準決勝でルーナミリアと対戦する。その予測はエーリックにとって認めがたい。だが、彼女のプレイを見れば、納得せざるを得なかったウェルシェもパーフェクトゲームを披露したが、経験の差からか安定感がまるで違う。「レーキ・ノモから情報をもらってこられたのか?」隣に座ったセルランをチラッと見てスレインが尋ねた。少し棘のある口調
競技を終え、次の試合までに汗を流そうとウェルシェは選手控え室へと向かっていた。彼女の両脇にはレーキとジョウジががっちりとガードしている。「ん?」ふと、ウェルシェは行く手に人の気配を感じた。目を凝らして前方を見つめれば、そこにいたのは優しげな微笑みを湛える金髪の美少年。「ウェルシェ!」「エーリック様!」その正体に気づき、ウェルシェは嬉しそうに手を振った。そして、タタタッと小走りにエーリックへと近寄った。「一回戦突破おめでとう」「ありがとうございます」嬉しそうなウェルシェの笑顔に、エーリックも自然と目尻が下がる。「ウェルシェの実力は知っていたつもりだったけど、初戦からいきなりパーフェクトを出すなんて思っていなかったよ」「くすくす、私も思っていませんでしたわ」朗らかに笑いあう二人。「あれは本当に出来すぎでしたわ」「いや、ウェルシェの実力だよ」自分は全ての競技で予選落ちしていながら、婚約者の好成績にもエーリックは卑屈な様子を微塵も見せない。「もっと間近で応援できれば良かったんだけど……」「仕方ありませんわ」心からウェルシェの勝利を祝ってくれるエーリック。やっぱり優秀な婚約者を疎ましく感じているオーウェンなんかより、ずっと器が大きいとウェルシェは思う。「競技に出場するだけで私達は護衛に負担をかけますもの」「そうだね。せめて応援だけは貴賓席で大人しくしていないとね」エーリックはチラッと背後を見た。その視線の先には学園の生徒ではないスレインとセルランがいた。剣魔祭では外部の者が出入りしている。さすがにエーリックも護衛は必要である。だから、日頃は学園に連れてこない二人を供としていた。あまり会場をウロウロするのは、二人の手を煩わせるとエーリックも理解している。続いてエーリックはウェルシェの両脇に立つレーキとジョウジをちらりと見た。「ウェルシェの方は大丈夫かい?」エーリックがストーカーについて尋ねているのだと察せられないほどウェルシェは鈍くない。「ご心配をおかけして申し訳ございません」眉を落として詫びた。「ですが、レーキ様とジョウジ様がこうして護衛してくださり、つけ回されている気配はなくなりましたの」「それは……良かった」愁眉を開いたウェルシェの様子に、エーリックは何とも複雑な表情となった。「エーリック様?」「ごめん、
「それで、まだケヴィン様に動きはないの?」控え室へと続く廊下を進むウェルシェは、その途中で気になっていたケヴィンの動向について尋ねた。「セギュル家を見張っている者からの定時連絡では、ケヴィンはまだ屋敷から出ていないようです」「そう……なの?」ジョウジの報告にウェルシェは少し考え込む。「ケヴィン様が昨日の予選を避けたのは予想通りなんだけど……」初日は校内各所で様々な競技の予選が行われた。そのため、生徒以外にも応援に来ている親族達で多くの者が学園に出入りしていた。「ええ、人の出入りが激しく潜入にはもってこいなんですが……」「いかんせん人目のつかない場所がありませんでしたから」だが、数多の予選試合を消化するため学園全域を会場にしていた。だから人気の無い場所が皆無であり、犯行に及ぶのは難しいだろうと読んだのである。「本戦初日は試合の全てが観客動員数の大きな主会場のみだから、今日こそ仕掛けてくるって思ってたのよね」ジョウジとレーキの推測に同意しながらも、ウェルシェは今日来るとの予測が外れて肩透かしを食らった気分だ。「予選が終了した今日以降は、皆が限定された会場に集まりますからね。確かに空き教室など死角となる場所には事欠きません」「ですが、それは明日も同じではありませんか?」剣魔祭の期間は三日。初日は前述の通り予選が行われ、二日目から本戦となり、明日は各競技の準決勝や決勝が行われる。「途中で負けたら私は護衛付きの貴賓席で観客になっているのよ」
――剣武魔闘祭二日目広場の中央にウェルシェは一人ポツンと佇んでいた。周囲は草むら、瓦礫、柵、塀などの遮蔽物で囲まれている。ウェルシェは白いシャツの上に赤いジャケットを羽織り、下は珍しくタイトな黒いズボンを履いていた。この広場を囲む観客席には人が埋め尽くされていたが、みな固唾を飲んでウェルシェを見守っている。――『射撃用特設会場』今から魔弾の射手本戦の第一試合が始まるのだ。「スーーーッ、ハァーーー……」珍しく緊張しているのか、ウェルシェは息を深く吸い込んでゆっくり吐き出して全身の力を抜いている。観客席は満席であったが、ウェルシェの耳には自分の呼吸音だけしか入ってこない。まるでウェルシェ一人だけの世界のように静寂が支配する――『開始10秒前、9……8……7……』突如、会場にカウントダウンのアナウンスが響いた。『……4……3……』カウントが進む中、ウェルシェは両手に持つ指揮棒の形状をした魔杖を僅かに握り直す。『……1……ピーッ!』ガコンッ!開始の合図と同時に『敵』と記された人型の標的がウェルシェの右前方にある草むらから迫り出した――瞬間、右の魔杖を素早く振った。ヒ
――マルトニア学園入学式の日校門から校舎へと続く道にスリズィエの花びらが舞う。奥へと更に奥へと進めば、入学式が執り行われている大講堂へと続く。その中には今年入学する新入生とその保護者が集まっていた。「新入生代表ウェルシェ・グロラッハ」式が進行していく中で、一人の少女の名前が呼ばれた。「はい」凛とした声が講堂の中に響いた。
「私ってそんな尻軽な女に見える?」四阿に戻ったウェルシェの愚痴にカミラは首を傾げた。「いきなりどうなさったのです?」「さっきエーリック様が仰っていたでしょ?」お茶を注ぎながらカミラは、ああと得心がいった。「お嬢様が他の男に心移りするかもってやつですか?」それよそれとウェルシェは不満そうに口を尖らせた。そういう幼い振る舞いは年相応に可愛いなとカミ
「エーリック様、いらっしゃいませ」「やあ、また来たよ、ウェルシェ」ウェルシェの予想は大当たり。「迷惑じゃなかった?」「そのようなことありませんわ」エーリックは儚げで、庇護欲を掻き立てるようなか弱い女性が好みだった。足繁く通う彼はウェルシェのかまととの完全な虜である。「エーリック様にお会いできて私はとても嬉しいですわ」「えへへへ、そ、そう?」ウェルシェの笑顔にエーリックがデレデレになる。手のひらでコロコロ転がされているとも知らずに。端で見ていたカミラはなんとも完璧な猫かぶりだと感心するやら呆れるやら。もともとウェルシェは幼少期より儚げな深窓の令嬢を演じて、海千山
「名残惜しいですが、そろそろ帰らねばなりません」「まあ、もうそんな時間なんですの?」「楽しい時間はあっという間ですね」エーリックが器用にウィンクすると、ウェルシェがパッと花が咲くように笑った。「また、あなたにお会いできる日を楽しみにしております」「私も楽しみにお待ちしておりますわ」潤んだ瞳でウェルシェから可愛く見上げられ、エーリックはすっかり舞い上がってしまった。(これって、ウェルシェも僕に恋しちゃってるんじゃない?)エーリックはカッコよく颯爽と帰るつもりだった。だが、顔は締まりがなく、足取りも地につかずふわふわして覚束ない。「あらあら、あんなにフラフラして大丈