All Chapters of あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~: Chapter 21 - Chapter 30

43 Chapters

第21話 この腹黒令嬢、やりすぎじゃないですか?

「うふふ、なかなか良い拾い物だったわ」 レーキやジョウジを始め、オーウェンの不興を買った優秀な者達を傘下に収めたウェルシェはホクホクだ。 「レーキ様やジョウジ様だけじゃなく、他のメンツも優良物件揃いだったわ。味方につけて百利あって一害なしよ」「ホントにそうそうたる顔ぶれですね」 よくもまあ集めたものだとカミラも素直に感心した。 「オーウェン殿下は手中にある本物の宝がわからなかったのですね」 だが、それは同時に次期国王が優秀な頭脳を見抜けなかったことの証明となってしまった。 「特にシキン伯爵家を冷遇するなどオーウェン殿下の正気を疑います」 シキン伯爵家は『貴族の良心』と呼ばれるほど、貴族の矜持と義務に真摯な一族なのだ。誠実である一点において政敵でさえ認めざるを得ない。ゆえに伯爵家でありながら、その発言力は絶大である。 嫡男のジョウジを遠ざけるなど、オーウェンは後ろ暗いところがあると公言しているようなものだ。事実、彼は浮気の真っ最中である。 「彼らの価値が分からないのは、オーウェン殿下だけではないけどね」 現在、学園でレーキやジョウジは生徒達から敬遠されている。誰もオーウェン殿下の不興を買いたくないからだろう。 「困っている時こそ恩は最大高値で売れるのよ」 もっともウェルシェからすれば、これほど美味しい状況はない。 「……そんな腹黒な発想ができる令嬢はお嬢様だけです」「まあ普通なら、どちらの味方をするかと問われれば、王子に傾くのは分からなくもないけど」 彼らはまだ若く未熟だ。目先の権力にしか目が行かずシキン家が伯
Read more

第22話 その王妃様、ホント気苦労が多くないですか?

王都の東に位置する王城の中には、瀟洒なガラス張りの温室がある。 そこでは社交界で知られた夫人達が集う恒例のお茶会が催されていた。 その会場の中心に設置されたテーブルで二人の美女が談笑していた。主催者の王妃オルメリアと側妃エレオノーラである。 黄金色に輝く髪に、理知を湛える青い瞳の美女オルメリアは参加している顔ぶれを確認して一つ頷いた。今日も社交界に影響力を持つそうそうたる面々が揃っている。 「今日の会にはウェルシェを招いているの」 二児の母であるオルメリアは歳を感じさせない美しい笑貌を隣に座る側妃エレオノーラに向けた。 「まあ! それは本当?」 エレオノーラはまあっと花の咲くような笑顔を見せた。海を思わせる鮮やかな青い髪と瞳を持つ彼女の容貌は、国王の寵愛を受けるだけあってとても愛らしい。 「エーリックったら婚約者に合わせてくれないのよ」 そう言ってぷくりとムクれるエレオノーラには、十代の息子がいるとは思えぬあどけない可愛らしさがある。 「メリー様が羨ましいわ。妃教育で息子の婚約者と仲良くしているのでしょう?」 メリーはオルメリアの愛称で、国王とエレオノーラしか呼ぶのを許されていない。逆にオルメリアはエレオノーラをエレンと呼んでいる。 「そんな良いものでもないわ。あの娘には避けられていて妃教育以外では顔を出してくれないもの」  エレオノーラの幼い仕草にオルメリアは苦笑いした。 「今日だって参加を断られているしね」「若い子にとっておばさんとのお茶会は煙たいものなのかしら?」
Read more

第23話 そのサロン、いよいよ真打登場ですか?

「はぁ……」 思考の沼にはまったオルメリアは無意識にため息を漏らしてしまった。 「どうかされましたか?」「えっ、ああ、ごめんなさい」 そんな彼女を心配して声を掛けるエレオノーラは本当に人の好い性格をしている。だから政敵であるはずの彼女をオルメリアは嫌えない。 (ううん、むしろ私はエレンのことが好きなのよね) 伯爵令嬢であったエレオノーラは現国王と熱愛の末に側妃となった経緯がある。普通なら王妃オルメリアとの間に軋轢を生じていてもおかしくなかった。 (エレンは良い子なのよねぇ) ところがエレオノーラは権力に頓着しない性格な上に、何故かオルメリアに良く懐いていた。その仲の良さは夫である国王が嫉妬するほどなのだから相当なものである。 (それに、いつまでも可愛いし) 思わず若い時にしていたように頭をよしよしと撫でると、エレオノーラは嬉しそうに破顔した。 「うふふふ、もうメリー様ったら」 そんなエレオノーラには随分と振り回されたものだが、自分を姉の如く慕ってくるエレオノーラにいつの間にか絆されてしまっていた。 「エレンが羨ましいわ」「私が?」 エレオノーラは目をぱちくりとさせた。 「メリー様の方がずっと美人で頭も良いのに、私の何に羨ましがるんです?」「エーリックは良い子に育っているでしょう」 (私はどこでオーウェンの教育を間違えたのかしら) 何がいけなかったのかと、彼女は悩んでしまう。
Read more

第24話 その妖精姫、本当は魔王じゃないんですか?

歩く度に揺れる長い髪は白銀にきらめき、翠緑に輝く瞳は涼やかで、まるで森の息吹を感じさせる。 だが、美しさの中にも愛らしさもあり、まるで物語の世界から妖精が迷い出てきたのではないかと錯覚しそうだ。 (この子が侯爵令嬢ウェルシェ・グロラッハね) オルメリアは本能的に理解した。 「ねっ、ねっ、すっごく可愛いでしょ!」「ええ、噂通り……いえ、それ以上ね」 自分の息子の婚約者を我が事のようにエレオノーラが誇らしげに自慢するが、オルメリアは素直に頷いた。 (ため息が漏れ出るほどとはこのことだわ) とても同じ人間とは思えない絶世の美少女。 いや、本当は精巧に作られた人形なのでは?誰かが芸術的な魔導人形を製造したのでは? ウェルシェの現実離れした美貌を前に、オルメリアはそんなあり得ない思考に囚われた。 「本日はお招きいただきありがとうございます」 だが、淀み無い動作でドレスの裾を摘み軽く膝を折って礼をする優雅な所作は明らかに生身のもの。 「グロラッハ侯爵家の長女ウェルシェにございます」 それは、ふわりと浮かべた笑顔を見れば疑いようがない。これほどに美しく自然な微笑を人造で作れるものではない。 続いて同道してきた人の良さそうなシキン伯爵夫人も挨拶をした。だが、これほど見事な所作を披露する少女に、果たして付添人が必要だったのかオルメリアは疑問に感じた。 「二人ともよくいらしてくれたわね」「ふふふ、ウェルシェさんはこっちの席よ」
Read more

第25話 その侯爵夫人、罠にハマってませんか?

(ふーん。あれがケイト・セギュル侯爵夫人なのね) 口撃してきた相手の正体を知って、ウェルシェはほくそ笑んだ。 今回のお茶会に出席した最大の目的は、エーリックとの婚約に茶々を入れるなと釘を刺すこと。 つまり、標的はケヴィンとオーウェンである。 当初は無関係なケイトまで巻き込むのは少々気が引けていた。 (でも、この親にしてってやつだったみたい。これなら心置きなく悪巧みを実行できるわ) ウェルシェは自分の陰口を主導しているケイトを敵認定した。 (王妃様は後継問題で波風立たぬよう、側妃様との関係に腐心しているのが理解できないのかしら?) ケイトは王妃派だと自認している。 だが、どうにも彼女はエレオノーラを追い落とす事がオルメリアの為だと勘違いしているように思えてならない。 (母子揃って状況把握能力が欠如しているのね……これでは伝統あるセギュル侯爵家もお先真っ暗だわ) セギュル家は比較的歴史のある家柄でそれなりに権勢を誇っている。 だが、跡取り息子が母親の負の因子を色濃く受け継いでいるようで、果たして彼にセギュル家の舵取りを上手くできるか疑わしい。 まあ、ウェルシェからすればセギュル家がどうなろうと知った事ではない。むしろ王家から搾り取る為の踏み台にしようとさえしていた。 (王妃様にもダメージが入るけど……まあ、この方なら大丈夫でしょ) 王家が安寧を保てているのはオルメリアの手腕によるところが大きい。 間違いなく今代の王妃は傑物だ。多少の揺さぶりでは揺らぐまい。&n
Read more

第26話 その妖精もどき、本当に人が悪くないですか?

「あ、あの、この場で名を口にして良いものか……」 なんともしおらしい態度をしているが、ウェルシェは最初から名前を告げるつもり満々だ。 「事は王家の威信にも関わります」 それまで黙って聞いていたオルメリアが、眉間に皺を寄せて口を挟んだ。 「構いません。私が許可します」 (きたきたきたぁ♪) オルメリアはエレオノーラとの関係に気を使っている。だから、この話題は絶対に無視できない。ウェルシェにはそれが分かっていた。 「それで、誰が難癖をつけているの?」 オルメリアの追及にウェルシェはおどおどししているが、心の中ではガッツポーズだ。 「ケヴィン・セギュル様ですわ」「そんな!?」 ケイトが悲鳴にも似た声を上げた。 「あり得ないわ!」 それはそうだろう。先まで非難の対象にしていたのが自分の息子だと知らされたのだから。 しかも、王家への叛意とも取れる言動までしている。下手をすればセギュル家とてお咎め無しとはいかない。 「言い掛かりはやめてちょうだい。ケヴィンは品行方正で優秀な子よ。だからオーウェン殿下のお声掛けがあり側に仕えるのを許されているのだから」「あ、あの……」 物凄い剣幕で迫って来たケイトにウェルシェは怯えたが、もちろん全て演技である。 「こちらの方は?」 知っていながらウェルシェは敢えて知らぬフリをした。初対面で名乗りを受けていないのを周囲に印象付ける為である。
Read more

第27話 その妖精もどき、まだヤル気ですか?

「ケヴィン・セギュル様は嫌がる私の腕を強引に掴んで無体を働こうとなさったのですわ」 ああ、とウェルシェは美しい顔を曇らせ嘆き声を上げた。それに釣られて周囲の夫人達も痛ましそうに眉を顰める。 「ですが、エーリック様がケヴィン・セギュル様の手を払い除け敢然と立ち向かってくださいました」 一転してウェルシェはうっとり陶酔するように頬を染めた。まるで恋する乙女のようだ。ここにカミラがいれば胡乱げな目を向けたに違いない。何の三文芝居ですかと問いそうだ。 「まあ素敵!」「絶世の美少女を巡って男の子達が争うのも尊いわ」「若いっていいわねぇ」 夫人達は純真無垢な美少女の擬態を見破れず、若い子達の恋物語に黄色い悲鳴を上げて喜んだ。ただ、その中でオルメリアだけが周りに同調せず、ウェルシェを観察するようにじっと見つめていた。 (セギュル夫人を黙らせてくれたのは助かるんだけど……) ケイトの勘違いによるマウント取りはオルメリアも辟易していた。だから、ウェルシェが彼女をやり込めてくれたのには胸がすく思いである。 他の夫人達もケイトを煙たがっていたから同じ思いなのだろう。 だからこそ、天然なウェルシェがいけ好かないケイトに大打撃を与えたのを手放しで喜んでいるのだ。もっとも本当は天然ではなく演技なのだが。 ウェルシェの擬態をオルメリアは見破っていたし、被害がケイトにだけ限定されるなら問題はないと思っている。 (だけど、この子はそれで済ませてはくれないわよね) オルメリアは気がついていた――ウェルシェが語ったケヴィンの話が、国王から聞かされたオーウェンの直談判と内容が同じであると。 (オーウェンから『横恋慕
Read more

第28話 その伯爵夫人、本当に温厚なんですか?

「そ、それは真実なのですか?」 ここまで用意周到なのだ。ウェルシェが何の裏付けもないなどあり得ない。それを理解してもなおオルメリアは聞き返さずにはいられなかった。 「間違いありません」 だが、予想に反して応えたのはウェルシェではなくシキン夫人であった。 「私の息子ともども、陛下より推挙を受けた者達は一人残らず遠ざけられております」「ああ……」 息子のあまりの暴君ぶりにオルメリアは目の前が真っ暗に、頭の中は真っ白になってしまった。 今日という日が悪い夢であれば良かったのに、叶うならば時を巻き戻して欲しいとさえオルメリアは願わずにはいられない。 「オーウェン殿下はご自分に阿る者だけを側近として迎えたご様子です。今や学園内で自ら選んだ側近達と肩で風を切って闊歩する始末……」 ちなみに、その佞臣予備軍の母親達はセギュル夫人の派閥である。 シキン夫人は苦々しく続けた。 「彼らは素行の悪さに加え、件の男爵令嬢に入れあげており、ご自分の婚約者を蔑ろにしております」 この主人にしてこの臣下あり状態である。 「私の親友キャロル・フレンドの婚約者クライン・キーノン様もオーウェン殿下の側近として悪評が酷く、フレンド伯爵も彼を身限り婚約を解消されました」「そ、それは事実無根です!」 ケイトと同じテーブルを囲んでいたクラインの母キーノン伯爵夫人が金切り声を上げた。 「あれはフレンド伯爵令嬢が不特定多数の殿方と不義を働いたからです」 婚約を解消の腹いせにと、ケイトを筆頭にしたオーウェン殿下
Read more

第29話 その王妃様、大ピンチじゃありませんか?

(困った事になったわ) 平静を装っているが、オルメリアはどうしたものかと苦悩していた。 ウェルシェのオーウェンへの批判はオルメリアも最初こそ面白くなかった。だが、ウェルシェの説明を聞けば納得せざるを得ない。 直臣の言葉どころか、国王や王妃の諌める言葉にも耳を貸さない事実を突きつけられたのだ。ウェルシェがオーウェンの横暴に恐れても仕方がない。 オルメリアとしても彼女の言い分は認めざるを得ない。ここで判断を誤れば、王家による専横と受け取られ、貴族達の離反を招きかねない。 幸いウェルシェには落とし所がありそうだと感じられる。その為、オルメリアとしては多少の譲歩は必要でも大きな問題とはなるまいと考えていた。 (だけど、シキン夫人がここまで激しい性格だったなんて) シキン夫人が怒ったところを見た者は誰もいない。それ程おおらかな女性である。 その優しく穏和な性格には逸話がある。 シキン伯爵夫人は本名をジャンヌ、旧姓デポットと言う。 デポット家は僻地に領を持つ男爵家で、ジャンヌは幼少期を田舎で純粋培養されて伸び伸びと育った。 その為、真っ直ぐで潔癖な性格になってしまい、王都へと出て来た時に貴族社会に馴染めず周囲の貴族令嬢達から虐めを受けた過去を持つ。 しかし、ジャンヌは真っ直ぐなだけではなく、虐めにあってなお折れぬ芯の強さと怒りを表に出さぬ穏やかさを合わせ持っていた。 そんな彼女を一目見て現シキン伯爵は惚れ込んでしまい猛アタックしたのである。 当初は断っていたジャンヌであったが、シキン伯爵の気風とシキン家の家風は彼女にとって好ましく遂には折れて彼と結婚した。 
Read more

第30話 その王妃様、魔王と手を組むんですか?

「あ、あなた、いったい何を言って……?」 ウェルシェのトンチンカンな言動にオルメリアは戸惑った。それは他の夫人達も同じようで、みな一様に困惑している。 「えっ、ですから、シキン夫人は何処かへ行かれるのですよね?……かなり遠方の国へご旅行されるのでしょうか?」 ウェルシェが的外れな返事をするので誰もが呆気に取られた。もちろん、ウェルシェだって完全なる曲解であることは百も承知している。 「他の国へ行って見聞を広められるなんてとても素晴らしいですわ」 だが、ウェルシェは貫き通した。 今は多少苦しくても強引に話題を変え、一気に自分の土俵へと持っていく力技こそ有効。どこかトボけたウェルシェの腹黒交渉術の一つである。 おっとりした不思議ちゃんを演出していたのも、この交渉術を成功させるのに大きく寄与していた。 「えっ、ええ……そうですね」 話を振られたジャンヌも対応に困って曖昧に頷いた。 「本当に素敵!」 ここまで来ればもうしめたもの。再びウェルシェの手の平の上だ。 「シキン夫人はそうやって見識を深めてこられたのですわね」「はい?」 ジャンヌはいまいちウェルシェの意図を掴みかねた。いや、それはオルメリアを始め会場の誰もが同じであろう。 「夫人のお言葉に私とても感銘を受けましたの」「私の……ですか?」 いったいそれはどの言葉? ジャンヌは更に困惑した。普通に考えれば、オルメリアへの諫言だろう。だが、ウェルシェがジャンヌの諫言をうやむやにしてしまおうとして
Read more
PREV
12345
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status