第281話 甘え上手な男は得をする 蓮は人の心の機微を読むのがうまい。美月の言葉に滲む柔らかな含みを、聞き逃すはずもなかった。 ――これは脈ありだ。 「……なあ、俺のこと、かわいそうだと思ってくれよ。なあ、早く来てよ。このままお前に会えなかったら……俺、死んじまう。本当に死んじまうからな……なあ、いいだろ?」 ――会えなさすぎて、死にそうだ。 美月は呆れて言葉も出なかった。 ――この男は、どうして一日中こんなでたらめばかり口にしているのだろう。 甘えたような表情を浮かべる彼から目をそらし、美月はなんとか「行かない」とだけ告げた。 「なあ、頼むよ。さっきから言ってるだろ、俺のことかわいそうだと思ってくれよ! 本当にお前に会いたいんだ」 美月は、このまま電話を切ってしまおうかと思った。 しかし、蓮はその隙を与えなかった。 「本気で言ってるんだ。会社には今、ちゃんと任せられる人がいるし、ゲームもまだテスト中で、そっちの技術者が対応してくれてる。会社に顔を出さなくたって、何の問題もないんだ」 「それに、パソコンさえ持ってくれば、どこでも仕事はできるだろ? 仕事にも何の支障もない。なあ、来てくれよ! こっちの用事が片づいたら、二人で何日か遊びに行くことだってできるんだぞ」 話せば話すほど、蓮の目は輝いていった。 できることなら、今すぐ帰国して美月を抱えてでも連れてきたいくらいだった。 美月は複雑な表情で彼を見つめた。 「そんなに
Last Updated : 2026-10-20 Read more