愛と束縛は隣り合わせなのかもしれない――深夜。沙月はダイニングのテーブルの上に、ノートパソコンを広げていた。パソコンの横には佳奈から聞き取った三島家の経済状況のメモが、無造作に並べられている。沙月は今、三島家の経済虐待の状況についてまとめている最中であった。パジャマ姿の陽介が、眠たそうな顔でふらりと入ってくる。「なんだ、まだ起きてるの?」「うん、これだけ終わらせちゃおうと思って」「じゃあさ、コーヒーでも淹れようか、それともカフェオレがいい?」袖をまくりながらキッチンカウンターに入る陽介に向かって、沙月は聞いた。「ねえ、もしもよ、私が仕事を辞めて、陽介の収入の中から生活費を頂戴って言ったら、いくらくれる?」「なんだ、仕事辞める予定、あるの?」「違うの、あくまでも仮定の話として」「そうだな、家賃、光熱水費、それに各種保険料……」「そういうところは抜きにして、純粋に食費と雑費としていくらか欲しいって言った時の話よ」「そうだなあ……」陽介はコーヒーの用意をしながら少し考え込む。「食費だって、それなりにかかるだろ、あと、細々した金は出ていくだろうし、子供でもできたら幼稚園の金や付き合いや……」しばらく考えた後で、陽介は「うん」と短く頷く。「俺なら通帳の管理を君に任せるかな、そこから小遣いもらう方が、気軽でいいや」「なるほどね」沙月はパソコンの画面に目を落とす。聞き取りをした結果、三島親子に渡されていた“生活費”は月五万円程度だったことがわかっている。そこから味噌、醤油、米を含む食費を出して、中学生の娘の身の回りのあれこれを整えてやったら、月五万ではとても足りない。真由美はその不足分を補うために、夫に内緒でパートを始めた。今回、そのことがバレて暴力を振るわれたらしい。数字に強い沙月は、気がついた。「これは……経済的な自由を奪うことによる束縛ってことね」カップを手にした陽介が、沙月の隣に戻ってくる。「ん〜、なんのこと?」「例えばだけど、私が浮気をする恐れがあるとするじゃない?」「えっ!」「例えばの話だってば、浮気なんかしないから!」「ああ、びっくりした、それで?」「その場合、私の行動を制限するには、経済的な自由を奪うのって、有効だと思わない?」「確かに、お金がなかったら化粧品も買えないし、男と会いにいく交通費
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