………………………………離婚するほど不幸なわけじゃない——そう思って飲み込んだ言葉に、薔薇を一本。九十九本目までは、あなたの物語。百本目からは、私たちの出番。ようこそ、離婚互助会カウントダウンクラブへ。………………………………沙月に“カウントダウンクラブ”のことを教えてくれたのは、離婚経験のある女友達だった。「いいから、一度行ってみなさいよ」手の中に押し込まれたのは小さなカード。書かれているのは箔押しの薔薇で飾られた“カウントダウンクラブ”のロゴ、それに住所だけ。沙月はそれを押し返そうとした。それでも友人は、小さなカードを引っ込めようとはしない。「大丈夫、変なところじゃないから。別名“離婚互助会”、本当に真っ当な女性向けの相談サロンだから、詐欺とかじゃないから」「なんか、すごく怪しく聞こえるんだけど」「怪しくないよ、私も離婚する時、ここにお世話になったのよ」「そっか、でもね、離婚したいわけじゃないのよ」「わかってる、離婚しろっていってるんじゃないの。でも、ここ、結婚生活の愚痴を聞くだけとかもやってるから、ね」沙月は結局、カードを押し返すことができず、それを受け取ってハンドバッグの底に押し込んだ。それが三ヶ月前のこと——今日になって、そのカードのことを思い出したのは、朝食の席で夫に言われた一言がきっかけだったのかもしれない。沙月の夫——早坂陽介はトーストを齧りながらなにげなく言った。「仕事、いつ辞めるんだ」まるで辞めることが決定事項であるような言い様に、わずかな苛立ちが心中に湧く。それでも沙月は、(彼に悪気はないんだから)と苛立ちを飲み込んで、にっこりと微笑んだ。「それは、この間も話したでしょう、辞めるつもりは、今のところないって」陽介と結婚して二年目、義母からも「赤ちゃんはまだなの」と何度も聞かれている。生活も落ち着いたし、そろそろ子供を持つことを考え始めてはいるが、だからといって仕事を辞めようとまでは考えていない。「うちの事務所は小さいけれど、産休制度もしっかりしているし、もし辞めるにしても実際に妊娠してから様子を見て、って話だったでしょ?」「そうだっけ? あー、そうだったかも」夫に悪気があるわけではないことはわかっている。わかってはいるが、真剣味のかけらもなくヘラヘラと笑っている様子に、沙月の苛立ち
最後更新 : 2026-06-06 閱讀更多