「劉皇貴妃。私です。梅貴妃です」「入りなさい」劉妃は私を部屋に入れた。劉妃に来るよう、言われていた。出陣を前に、私は劉皇貴妃と対面した。「よく来ましたね」「ええ。劉妃様の命令なら、無下にできませんわ」劉妃は視線をそらした。下の方を見ている。「何かお気に障りますか」「私よりいい着物を着てるわね。その黄緑もいい色だわ」私はカチンときた。劉妃の方が刺繍もたくさん入って、豪華な着物を着ておられるのに──。口を曲げたのをパッと見て、劉妃はさらに続けた。「宮廷に来たばかりだというのに、ずいぶん堂々として。たいした度胸ね」出た。陰湿ないびりの始まりか。女同士、気にくわない相手には、物申したいときもある。私だって、現世ではママ友のグループに入りつつ、別のグループのママと出会ったときにはキツい台詞を吐いたり、嫌な顔をしたりする。とにかく、面と向かって悪口を言うのなら受け止めてやる。立場上、ひどい台詞は言えないけれど、嫌な表情くらいはしてもよいだろう。私が黙っていると、相手はさらにつけ上がった。「この前、朝食をとっていたときよ。ピンと来た。あなた、前の晩に王と寝たでしょ? 言われなくても、私にはお見通しなのよ」さすがは第二夫人。女としての勘は冴えている。「そうですか。寝てはいませんよ。どうお思いになるかは、ご自由ですけど」私も怯んだりはしない。キッと劉妃の目を見返した。バチバチバチッ。ドラマや映画なら火花の一つも飛び散りそうなほど、二人の視線は激しくぶつかり合った。私が龍とするならば、劉妃は虎だろう。龍と虎。二つの強力な動物が、恐ろしい声で吠えまくり、からみ合う。龍が鳴けば晴れた空に雲がなびく。虎が吠えれば、大地に風が吹き渡る。天を翔ける龍は、堂々と体をうねらせ、力を誇示する。豊穣な大地を司る虎は、周囲を歩き回り、常によそ者を威嚇する。そのような空想に耽っていると、「ちょっと!」と劉妃に一喝された。「何ですか」「何を考えてるの? 目上の者が目の前にいるのよ。ちゃんとこちらを見なさい」劉妃は、いちいちうるさい女だ。自分は、先ほど下の方を見て、私の着る黄緑色の着物を品定めしたくせに。第二夫人と第三夫人の身分が逆転したら、私はとっちめてやる。その気持ちが顔に出たか。劉妃は口を一文字に結び、ハーッとため息
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