悪い夫にはどこかで罰が下る。そう思う私は愚夫の妻。どこにでもいそうなありふれた女だ。そして、夫も平凡を絵に描いたような、普通の会社員である。夫の性格は悪い。「このクズ野郎!」私は夫に怒りをぶつけた。「なんだと。だれが稼いで飯が食えてると思ってる?」夫は居直った。「はあ? 何様のつもりなの? つまんねぇ昭和の台詞ね」「つまらなくていい。こっちには仕事があるんだ。おまえを養う義務もな」「思い上がっちゃって。そんなんで、よく浮気したわね」「浮気はしてないよ」夫は平然と否定し、首を振った。「嘘つけ! 私には分かるわ。シャツにいつもと違う香りがしたのよ」「だから言ってるだろ? 帰りの電車が混んで、知らない女の香水かなんだかがついたんだろって」昨晩、夫の浮気でケンカになった。こんな風景は、我が家では日常茶飯事だ。そして、ケンカが収まらず、二人とも相手を無視し、黙ったまま朝の支度をした。そんな冬の朝のことだった。年も明けた一月八日。少し曇り、ときどき太陽が顔を覗かす。夫はこちらを見向きもせず、バタバタと出て行った。それを奥で確認し、私はIHコンロのボタンを押して加熱を止めようとした。夫が出て行って、ゆっくりとリプトンの紅茶を飲もうとした。お湯は沸いていた。「おーい。カオリ」玄関で聞き慣れた声がした。嫌な夫が戻って来た。私はツカツカと歩き、玄関を覗いた。玄関で夫は立ったまま、私に指示を出す。「忘れ物をした。机の上のUSBメモリ、取ってきてくれ」「知りません」「こら! 急いでるんだ」「自分でどうぞ」「フン。分かったよ」夫は玄関で靴を脱ぎ、ふてくされて上がり込んだ。小さな机の上にノートパソコンが置いてある。そこに挿しっぱなしになったUSBメモリを、ピンと抜いた、「バーカ」夫の背中に悪口を浴びせた。「行ってくるぞ」じつに忌々しげな言い方だ。腹が立つ。 「うるさい。早く行け!」私は顔を背け、玄関を指さした。玄関でバカな夫が、まだぶつくさと文句を唱えている。「なにさ。おまえが悪いんだろ?」そんな風に毒づきたくなる。「今晩も遅くなるぞ。飯はいらないからな」夫は飯か仕事のことしか考えてない。USBメモリも仕事で使うのだろう。家にまで仕事を持ち込まないで、と私は思う。でも、コロナのときはひどかった。家の中でリモート
최신 업데이트 : 2026-06-08 더 보기