「なんと! ク、クーデターとは」 皇帝の声を遠くで聞いた。大広間は大混乱に陥った。人が入り乱れた。逃げ惑う人、裸足で庭に出る人、人に押し倒されて踏んづけられる人。あちこちで悲鳴と怒号が飛び交った。そのうち、敵軍の武装兵が大広間の入り口から雪崩れ込んできた。乱入した武装兵は雄叫びをあげて刀剣を振りかざした。悲鳴と怒号に雄叫びも加わった。 皇帝は驚き、慌てて逃げた。近衛兵を連れて大広間を後にし、庭に出た。池を伝うようにして走った。庭の裏手にある池だ。 皇帝はふだんはおっとりしている人だ。しかし、いざとなったら、案外駆け足は速い。刀剣を持った敵兵が遅れて追いかけ、皇帝は着物の裾を手に持って追手よりも速く逃げた。 逃げてばかりでは、事態は収まらない。皇帝派の兵士が敵兵の前に立ちはだかった。 「待て、待てー。反皇帝派よ。皇帝を追う前に、俺を倒してから行け。いざ、勝負!」 「望むところだ。かかってきやがれ!」 皇帝派の兵士は長い槍を持って振り回した。武装兵は太い刀剣を構えた。皇帝派の兵士と武装兵。一騎打ちとなった。叫びとともに、槍が刀剣を持つ武装兵に振り下ろされた。 激しい火花が散った。カン、カン、カン。何度か、槍と刀剣がぶつかり、金属音を発した。 「死ね!」 皇帝派の槍が甲冑の隙間をついた。槍は武装兵の腹に突き刺さった。相手は、槍に手を添えた。抜こうとしたのか。無駄だった。槍は懐深くまで入ったようだった。ぐへっ。ぬおっ。
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