身内の食事会があった時、夫・上野和彦(うえの かずひこ)の秘書・安藤玲奈(あんどう れいな)が、私・上野琴葉(うえの ことは)の座るはずの席に座っていた。私は和彦に問いかけた。「彼女が私の座るべき席に座っているのに、何も思わないの?」和彦は鬱陶しそうに言った。「遅れてきたお前が悪いんだろ。隣が空いてるだろ!座りたきゃ勝手に座れ。嫌ならさっさと消えろ」私が何か言おうとしたその瞬間、彼の心の声が頭の中に流れ込んできた。[琴葉、早く怒ってよ。俺が必要だって、どうしても俺の隣がいいって言って。俺を愛しているって証明してくれないと、不安で仕方ないんだ]今回は、そんな和彦の期待に応えるのをやめた。ただ静かにうつむき、指から結婚指輪を外した。「私の居場所すら残されていないのなら、もうここに必要ないわね。離婚しよう」カラン、と結婚指輪がテーブルに置かれ、軽い音が響いた。和彦の顔から血の気が引いた。それまでニヤニヤと様子を見ていた和彦の母親と父親も、一気に慌てだした。6年間。私はずっと、こんな日々を6年間も耐え続けてきたのだ。和彦にひどい言葉をぶつけられても、彼の心の声を聞くたびに、私から折れて仲直りをしてしまっていた。そんなことを繰り返すうちに、彼の家族もそれが当たり前だと思うようになっていた。「和彦は素直じゃないから、何を言われても怒らない嫁じゃないとね」なんて笑い話にされる始末だった。だから私が結婚指輪を外したのを見て、和彦の母親が慌ててすり寄ってきた。「琴葉さん……どうしたの?今日は機嫌が悪いの?普段はそんなに細かいことを気にする子じゃないのに」和彦の父親も厳しい顔をして言った。「今日はせっかくの身内だけの食事会だぞ。わがままで離婚を口にするなんて不謹慎だ。早く結婚指輪をはめるんだよ」私は冷たく笑った。「これが身内だけの食事会だと言うなら、安藤さんはどうしてここにいるんですか?」和彦の父親と母親はぐうの音も出なくなった。和彦はガタッと勢いよく立ち上がり、歯を食いしばった。「琴葉、いい加減にしろ!離婚したいならすればいい!今すぐここから出ていけ!恩知らずなお前なんて、ここには必要ない!」いつもと変わらないトゲのある言葉。だが、その裏に隠された和彦の本心は違っていた。[琴葉、ど
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