初夏の親族の集まりで、堂島蒼真(どうじま そうま)は私を正式に家族に紹介すると言った。堂島家の立派な本邸の前に車が止まると、蒼真はシートベルトを外した。「5分待っててくれ。先に中に入って、母さんに話をつけてくるから」5分が過ぎ、蒼真から「もうすぐだ」とLINEが来た。10分後、「すぐに行く」とメッセージが届いた。40分後、「もう少し待ってくれ」と言われた。私はもう何も返信しなかった。車の窓越しに、蒼真の母親が自ら玄関先まで出向き、着物姿の女性を出迎えるのが見えた。その女性は車を降りるなり蒼真の隣に歩み寄り、親しげに腕を絡ませた。蒼真は彼女を突き放すことはなかった。3人は談笑しながら中へと消えていき、重厚な門が私の目の前でピシャリと閉ざされた。スマホの画面はまだ明るく、トーク履歴は「もう少し待ってくれ」で止まったままだ。さらに20分が経過した頃、使用人が車の窓をノックした。「弓月綺織(ゆづき きおり)様ですね?奥様が、キッチンが立て込んでいるから先に入って手伝うようにと仰っております」「堂島の奥様が、どうして私のことを?」「若旦那様がそうおっしゃったのです。来たら手伝いしなさい、と」私は使用人の後に続き、勝手口からキッチンへと足を踏み入れた。使用人は私に小皿の束を押し付け、広間の隅にあるテーブルを指差した。「あのテーブルは食器が一組足りていません。並べ終えたら、料理の配膳をお願いします」私は皿を手に宴会場へと向かい、途中で鏡の前を通り過ぎた。薄暗い廊下に一張羅のワンピースを着て立っている自分の姿は、あまりにも場違いで惨めだった。宴会場からは絶え間なくどっと笑い声が湧き上がっている。私は指定された隅のテーブルに皿を置き、顔を上げた。蒼真の母親は主賓席の横に立ち、柊柚葉(ひいらぎ ゆずは)の手をしっかりと握っていた。「今日は本当におめでたい日です。皆様にも喜ばしいご報告があります。柚葉さんと蒼真の結婚式は、秋に執り行うこととなりました」会場全体が割れんばかりの拍手に包まれ、親族の誰かが「キスしろ」と囃し立てた。柚葉は背伸びをして、蒼真の頬にキスをした。蒼真は口元に笑みを浮かべたままで、それを避けようともしなかった。私は部屋の隅に立ち尽くしていたが、蒼真は最後まで
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