「えー、本日は一ノ瀬茉夏さんの歓迎会にお集まりいただき、誠にありがとうございます!」 快がグラスを持ってテーブルの皆に向かって言う。 そういうのいいから、と周りの男たちは笑いながら騒ぐ。 茉夏はそんな様子を内心冷めた目で見ていた。 「たまにはいいじゃないすか、こんなのも!」 と、先輩社員たちに向かって快は白い歯を見せている。 「じゃ、まぁ折角なので、皆さん楽しんで下さい!乾杯!」 グラスを重ねる音が半個室の部屋に響く。 途端に、茉夏のテーブルが賑わう。 茉夏は男たちに質問攻めに遭う。 何を注文する?から始まり、普段何してるの?好きな異性のタイプは?まで。 あー、やだやだ。始まった。 心の中で茉夏はそんな男たちに向かって、しっしっと手を振っていた。 「ストップ、ストーップ!」 快が割り込んでくる。 「一ノ瀬さんは一人だけなんだから、順番に順番に」 意外そうな顔をして茉夏は快の顔を見る。 「幹事さん、気が利くんですね。ありがとうございます」 そう言いながら、茉夏は快を上目遣いで見てみる。 「そう?ま、女性の少ない職場だからね」 はは、と快は笑うが、視線が合わない。 ふーん…。 茉夏は、そんな快を黙って横目で見る。 -☂️- テーブルに、空いたグラスや食器が積まれていく。 賑やかな空間は時間とともに雰囲気もくだけていき、席の移動も多くなってくる。 茉夏はようやく悠吾の隣を確保した。 「悠吾さん、こんばんは」 「あぁ、どう?…楽しんでる?」 「えぇ、皆さんのお陰で」 卒なく笑う茉夏。 「……そう」 悠吾は自分のグラスに視線を落とす。 グラスは既に空いていて、ほんの少しテーブルに水滴が落ちていた。 「悠吾さんは、楽しめてます?」 茉夏は悠吾の顔を見て窺う。 「ん?……少し、考え事しててね」 そう言って、悠吾は立ち上がる。 「ごめん、ちょっと外の空気に当たってくる」 悠吾の足元が少しおぼつかない。 「え、大丈夫ですか?」 そう言って、茉夏は悠吾の背中を支える。 「……ありがとう」 -☂️- 階段の踊り場で、茉夏と悠吾は外の景色を見ていた。 風が涼しい。 踊り場のドアの向こうでは、相変わらず賑やかな声が漏れてくる。 「皆さん、楽しそうですね。わたしも凄く良くしてもらっちゃって……」 そ
Last Updated : 2026-07-21 Read more