Share

心に宿すもの

Author: ふわり
last update publish date: 2026-06-30 20:27:45

ロシェとカタリナはグレートニールに向かって歩いていた。ロシェが古の機械と戦った時、カムはアクアストールを封鎖していたようで、目撃者などはおらず、民は王が死んだことなどもちろん知らないままであった。唯一変わった状況といえば、人型機械が活動を停止したことだろうか。人工気候装置が破壊されたことにより、太陽が常に出ているわけではなくなった今、あれだけの高性能な機械を維持する体内エネルギーが枯渇してしまったのだろう。道中には動かなくなった人型機械がたくさん転がっていた。この光景を見て、民たちは国の異変に気づくのだろう。

「ねぇ。ロシェ。」

 カタリナが突然口を開いた。

「どうした?」

 ロシェは優しく聞き返した。

「本当にもう平気なの?体。」

 カタリナが心配になるのも、仕方のない話である。なぜならあの時、ロシェの心臓は完全に止まっていた。たしかに死んでいたのだ。

「あぁ。大丈夫だ。心配してくれてありがとう。」

 ロシェは優しい笑顔でそう答えた。

「それよりカタリナ。これからこの国をどう立て直していくんだ?」

「そうね。もう王はいらないわ。みんなの力を合わせることが大事ね。」

「そうか。国は壊すことよりも築くことの方が難しい。」

 ロシェのその言葉に、カタリナはカムの言葉を思い出した。

「そうよね。」

「あぁ。みんなが同じ方向に向かうのが一番難しいことだと思う。ましてや率いる者を立てないのであれば。」

「そうね。」

 カタリナは少し俯きながらそう答えた。

「カタリナ。何も焦る必要はない。ゆっくりと一歩ずつ進んで行けばいいと思う。」

 ロシェは笑顔でそう言った。カタリナはその笑顔を見て、再び心に誓ったことがあった。この国を素敵な笑顔に包まれた国にしようと。

 思い返せばアクアストールで全てが始まって、戦場から戦場へと移動を重ねた。あの時もロシェとカタリナはこの道を歩いていた。その時は気づきもしなかったのだが、ここにも美しい花は咲いている。きっとカタリナが目指している理想の国には、こういう小さな気づきが溢れているのだろう。安泰な平和とはまだまだ言い難いほど国は疲弊しきっているのが現状だけれども、二人は確実にその一歩を踏み出している。国民全てがその姿を描ければ、それが同じ方向を向くということに繋がる気がする。いつかは花が満開に咲くと信じて、二人は歩いている。

「カタリナ。見てくれ。」

 ロシェは木に止まった鳥を指差してそう言った。

「あれは。鳩ね。」

「きっとあの鳥は元々あそこにいたんだと思う。でも僕たちが争いに目を向けていたからその存在に気づかなかった。」

「きっとそうね。」

 カタリナは鳩を見ながらそう答えた。

「もう二度とその存在を忘れないでいよう。」

 ロシェはそう言いながらカタリナの手をそっと握りしめた。

「えぇ。絶対に忘れないわ。」

 カタリナもそっと握り返した。

 グレートニール。あの時と同じ道、でもあの時とは違う気持ちで、ここに帰ってこられた。

「やっと着いたわ。ロシェ早く行こう。」

 カタリナはそう言いながら、ロシェの手を引いた。そこには年頃の女の無邪気さが滲み出ている。

「そんなに慌てなくても、店は逃げない。」

 ロシェがそう言うと、二人は顔を見合わせて笑った。

「それもそうね。でも売れ切れてしまうかもしれないわよ?」

「それはたしかに。一番人気だと言っていたもんな。」

「そうよ。だからやっぱり急がないとね。」

 カタリナは再びロシェの手を引っ張った。

「分かった。急ごう。」

 二人は手を引き合いながら、スノーボールの出店へと向かった。

「あ!。お兄さんとカタリナさんだぁ。またきてくれたんだね。」

 店の女は変わらない笑顔でそう言った。

「あぁ。また来たよ。」

「あれー。手なんか繋いじゃって。そういうことなのー?」

 女に茶化され二人は慌てて繋いでいた手を離した。

「まぁその話もあるんだけど。ひとまずあなたの笑顔に会いに来たって感じかしら。」

 カタリナは少し照れながらそう言った。

「カタリナさん。なんだか雰囲気変わったね。」

「そうかしら?」

「うん。以前はもっと思い詰めた顔してたからさ。」

「そうかもしれないわね。あなたの方は相変わらずの素敵な笑顔ね。」

 カタリナがそう言うと店の女は胸を張って答えた。

「これが私の商売道具だもん。」

 ロシェとカタリナは顔を見合わせて笑った。

「私、笑われるようなこと言った?」

「いや。大した道具だと思う。」

 ロシェはそう答えた。

「とりあえず。また二つもらえるかしら?」

 カタリナが言うと、女は深々と頭を下げる。

「毎度あり。ちょっと待っててね。」

 女は手際よくスノーボールを二つ袋に入れてカタリナに渡した。

「ありがとう。それと。」

 カタリナがここまで言いかけたところでロシェが制止した。

「また来るよ。」

 ロシェはそうとだけ告げて、カタリナの手を引いた。

「はーい。また来てね。」

 女は笑顔で二人に手を振っている。二人もそれに答えた。国全体が彼女のような笑顔に包まれることを祈りたい。

 しばらく辺りを散歩していた。

「ねぇ。ロシェ。言わなくて良かったの?結婚のこと。」

「もう少しだけ待ってほしい。」

「理由を聞かせて。」

 カタリナの問いかけに、ロシェは少し俯きながら答えた。

「国の復興を先に済ませたい。」

 カタリナはロシェが何かを隠していることに気がついている。しかし聞くことはしない。

「それもそうね。」

「カタリナ。行きたい場所があるんだ。」

「分かった。ついて行くわ。」

 カタリナがそう答えると、ロシェは人の気配がしない方向へと歩き始めた。カタリナも後ろをついて行く。訪れたのは海岸沿いの道だった。

「僕はここでマフィティスアのアランという男と戦った。」

「ロシェに呪いをかけた人間ね。」

「あぁ。戦いは呆気なかった。凄惨な血の雨が辺りを覆ったんだ。人を殺すことがこんなにも簡単なことなんだと思ったんだ。」

「そうね。私もサウンズロッドでミレアという女を殺したわ。生身の人間だった。」

 二人の思い出はたくさんの戦いで埋め尽くされている。それはどれも辛く苦しいものばかりだ。

「僕たちは忘れてはいけない。人を殺すということがどういうことなのかを。」

「そうね。」

 二人を沈黙が包み込んだ。夕暮れ時の涼しい風が吹いた。

「もう誰も、人を殺す苦しみを味合わなくていい世界になってほしい。」

 ロシェは空にそう呟いた。その表情はやけに儚く感じられる。

「なってほしいじゃなくて、私たちがそう導くのよ。」

「そうだな。」

 ロシェの顔に笑顔が戻っていた。二人は思い出のスノーボールを口へと運ぶ。口いっぱいに広がる優しい甘さは、あの時と同じ優しさに溢れていた。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 舞いし炎。飛ぶは空。   紡がれる

    戦争から2年。まだまだ途上ではあるが、幸せな雰囲気が街には溢れていた。壊れたものを立て直すことは非常にツラい作業と言える。しかし苦しい期間が長かったこの国では、その復興作業すら、幸福の風のように感じてしまう。カタリナは時折、海辺に腰掛けて、空と会話していた。(ねぇロシェ。今のこの国は笑ってる。笑ってるんだよ。私たちがずっと手に入れたかったモノ。この国が本当の意味で笑顔になれるってこと。それは叶ったんだよ。)「ママ?」小さな女の子が、カタリナの右手を握る。「どうしてママは1人でお話してるの?」カタリナは、女の子の頭に手を置いて答えた。「パパとお話してるんだよ。」「パパはお空にいるの?」「うん!いつも見守ってくれてるんだよ。」「いつかパパにも会いたいなぁ。」子供の悪気ない一言が、カタリナの心をエグる。「いつか……。きっと会えるよ!」カタリナは滲む涙をこっそりと拭った。民の祈りが草木を肥やすかのように、国は緑溢れる平穏な地へと変貌を遂げていく。小鳥の声も以前より溌剌としているようにも感じられる。カタリナは、ロシェとの間に生まれた奇跡の子に、ルーナと名前をつけていた。ルーナ・カエルム。それが次の時代を紡ぐ者。空と炎を紡ぐ者の名前だ。

  • 舞いし炎。飛ぶは空。   心に宿すものⅢ

    「私に隠していることがあるよね?」「気づいていたのか?」「気づかないわけがない。」 カタリナは賢い。ゆえに人よりも小さな情報から結論を見出すことができてしまう。「ちゃんと話す。聞いてくれ。」 ロシェがそう言うと、カタリナは頷いた。「僕たちは時代を変えることができた。復興作業をする人たちの顔。辛いだろうに笑顔に溢れている。」 ロシェの言う通り、人々の表情に笑顔は戻りつつある。「そうね。」 カタリナは静かにそう答える。ロシェの服は先ほどよりも染み付いた血の量が増えてきている。「カタリナ。すまない。僕は。」 ロシェはそこまで言ったところで口から血を吐き出した。体には古の機械との戦いで負った傷が戻り始めている。「ロシェ。」 カタリナはロシェの肩を支えた。溢れてくる涙を必死に我慢しながら。目の前で起ころうとしている現象から目を背けてはならない。そんな風に思っているのだろう。ロシェは一度深呼吸をして話を続ける。「僕はやっぱりあの戦いで死んだんだ。カタリナがアクアリングに祈ってくれたから、最後に少しだけ新時代を歩く時間がもらえた。でももう時間切れみたいなんだ。」 ロシェはそう言いながら涙を拭う。「私はけっきょく、あなたに何もしてあげられなかった。全部一人で背負わせてしまった。」 カタリナは溢れ出る後悔を口にする。あの時一緒に戦っていればこんなことにはならなかったかもしれない。しかしそれを今更言っても時間は戻らない。「それは僕が望んだことだ。それにカタリナと過ごした時間は僕にとって大切なものになった。君がいてくれたからどんなことも乗り越えられたんだ。」 ロシェの言葉が、悲しみに暮れたカタリナを優しく包み込んでいく。「結婚の約束。守れなくてごめん。」 それにカタリナは被りを振る。「今日まで一緒にいてくれたじゃない。それで十分よ。」 カタリナは溢れ出る涙を拭い、ロシェの手を握った。「僕は空から見守り続ける。勝手なことを言うようだけど、これからも僕を愛していてほしいんだ。」「そんなの。あたりまえよ。」「ありがとう。カタリナはもう三つの鍵を手に入れている。あとはその想いを胸に舞えばいい。」 ロシェは最終奥義のことを言っているのだろう。しかし今のカタリナはロシェとの別れに頭を持っていかれていて、整理がつかない。「立派な国にしてくれ。」

  • 舞いし炎。飛ぶは空。   心に宿すものⅡ

    数日後。王が死んだことを知った国は一時混乱に陥った。喜びを噛みしめる者もいれば、路頭に迷う者もいた。二人はその全ての人たちに手を差し伸べて、決して見捨てることはしなかった。その小さな努力が積み重なって、三ヶ月が経つころには、皆の顔は同じ方向へと向かっていた。何者にも支配されない幸せな国を築いていこうと。  ロシェとカタリナはアクアストールにいた。民たちの活躍もあり、ゆっくりだが確実に復興は進んでいるように見える。「カタリナ。一つ思い出したことがあるんだ。」 ロシェが唐突にそんなことを言い出した。「なに?」「炎の巫女の最終奥義についてだ。」 カタリナは目を丸くした。「もう戦いは終わったのよ?最終奥義は必要かしら?」「地形操作の舞を知っているか?」「知ってるもなにも。私はそれがされた場所で修行を積んだの。」「そうか。なら話は早い。フィナは邪竜を追い払うために何者と生存できない地形へと変化させた。これに逆があるとすれば?」 ロシェの話を聞いて、カタリナは驚いた。「つまり命が芽吹く地形に変形させられるってこと?」「そうだ。」「でもどうやって。やり方がわからないわ。」「僕の勘が正しければ、ここの地下に巨大な神殿があるはずなんだ。そこに手掛かりがあるかもしれない。」「それなら探してみましょう。」 二人はサウンズロッドの内部へと入った。月日が経っても中は何も変わっていない。迷路のような一階フロアはカタリナが、吹っ飛ばしていたので捜索は案外スムーズに進んだ。「カタリナ。ここだ。」 二人は地下への扉の前に立つ。そしてロシェがゆっくりとその扉を開いた。「随分長い階段ね。」「古の機械の封印にはそれなりの巨大な空間が必要だったと思う。この先はかなり広く続いているだろう。」 ロシェがそう言うと、カタリナは小さな炎で辺りを照らした。「行こう。」 二人は地下へと足を進める。階段を下り終えると、そこにはカルトゥナやガリュウの時とは比べ物にならないほど広大な敷地が広がっていた。「たしかに広いわね。」「あぁ。でもここがかつての空の城の地下だとすれば僕にはどこに何があるか理解できる。ついてきてくれ。」 ロシェはそう言うと奥へと歩き出した。カタリナもそれについて行く。しばらく歩くと、古い扉が視界に入った。「あそこだ。」 二人はそこに向かった。

  • 舞いし炎。飛ぶは空。   心に宿すもの

    ロシェとカタリナはグレートニールに向かって歩いていた。ロシェが古の機械と戦った時、カムはアクアストールを封鎖していたようで、目撃者などはおらず、民は王が死んだことなどもちろん知らないままであった。唯一変わった状況といえば、人型機械が活動を停止したことだろうか。人工気候装置が破壊されたことにより、太陽が常に出ているわけではなくなった今、あれだけの高性能な機械を維持する体内エネルギーが枯渇してしまったのだろう。道中には動かなくなった人型機械がたくさん転がっていた。この光景を見て、民たちは国の異変に気づくのだろう。「ねぇ。ロシェ。」 カタリナが突然口を開いた。「どうした?」 ロシェは優しく聞き返した。「本当にもう平気なの?体。」 カタリナが心配になるのも、仕方のない話である。なぜならあの時、ロシェの心臓は完全に止まっていた。たしかに死んでいたのだ。「あぁ。大丈夫だ。心配してくれてありがとう。」 ロシェは優しい笑顔でそう答えた。「それよりカタリナ。これからこの国をどう立て直していくんだ?」「そうね。もう王はいらないわ。みんなの力を合わせることが大事ね。」「そうか。国は壊すことよりも築くことの方が難しい。」 ロシェのその言葉に、カタリナはカムの言葉を思い出した。「そうよね。」「あぁ。みんなが同じ方向に向かうのが一番難しいことだと思う。ましてや率いる者を立てないのであれば。」「そうね。」 カタリナは少し俯きながらそう答えた。「カタリナ。何も焦る必要はない。ゆっくりと一歩ずつ進んで行けばいいと思う。」 ロシェは笑顔でそう言った。カタリナはその笑顔を見て、再び心に誓ったことがあった。この国を素敵な笑顔に包まれた国にしようと。  思い返せばアクアストールで全てが始まって、戦場から戦場へと移動を重ねた。あの時もロシェとカタリナはこの道を歩いていた。その時は気づきもしなかったのだが、ここにも美しい花は咲いている。きっとカタリナが目指している理想の国には、こういう小さな気づきが溢れているのだろう。安泰な平和とはまだまだ言い難いほど国は疲弊しきっているのが現状だけれども、二人は確実にその一歩を踏み出している。国民全てがその姿を描ければ、それが同じ方向を向くということに繋がる気がする。いつかは花が満開に咲くと信じて、二人は歩いている。「カタリナ。見て

  • 舞いし炎。飛ぶは空。   革命Ⅲ

    カタリナは最上階の扉を開こうとしていた。ふと外が静かなことに気がつく。頭の中には色々な憶測が飛び交ったのだが、その雑念全てをかき消して、自分が成すべきことに注力すると決意した。そしてゆっくりと扉を開く。「ミレアを倒したか。」カムはソファに腰掛けたままそう聞いた。「えぇ。」カタリナはそうとだけ答える。「モニター見てみろ。空の王ロシェ=カエルムは死んだ。古の機械も滅んだ。全ては俺の想定の範囲で進んでいた。誤算だったのはおまえだけだ。」モニターには見るも無惨に穴だらけとなり横たわっているロシェの姿が映っていた。カタリナは込み上がってくる感情を懸命に押し殺した。「私は選択を間違えてしまったようね。」「そうだな。俺の想像を遥かに凌駕するおまえの力があれば、ロシェ=カエルムが死ぬことはなかったかもしれない。でもおまえは自分の目的を優先してここへ来た。」「あなただけは何が何でもここで葬る。」カタリナはフレアリングに祈りを込めた。「フレア。煉獄の監獄。」カムの周り半径十メートルほどに炎のサークルが形成された。「そこから出ようとすると、全身を焼かれ死ぬことになるわ。そのソファから一歩たりとも動かないことね。」カタリナのその言葉を聞いて、カムは背もたれに腰を預けた。「なぜそこまでして俺を恨む?」「恨んでないわ。ここにくる時、あなたの兄の墓を見たわ。あなたも根っこから腐ってるわけではないようね。無理に悪を演じている。そんな風に私には見えるわ。」「おまえは知らないのだろう?俺の父がどのような人物だったのか。心優しく民からも愛される王だった。しかし突然命を奪われたのだ。それなら俺は逆に悪のカリスマとして国を支配すると決めたのだ。」「そう。あなたには同情するわ。でもしてはいけないことに手を染めて、奪った命が多すぎる。」「そうだろうな。」カムは頭がいい。こう話してるうちに何か打開策を練っているのかもしれない。しかしカムの額に滴る汗からは現状に覚悟を決めているかのようにも見える。カタリナにはこの男がよく読めなかった。「たかだか炎を操るだけのちっぽけな存在だと考えていたが、まさかおまえがこれほどの力を有していたとはな。どうだ?おまえの信じる王はもう死んだのだ。俺のこれからを信じてみないか?」「ふざけないで。あなたにこれからはない。ここで確実に死ぬべき人間

  • 舞いし炎。飛ぶは空。   革命Ⅱ

    「あちゃ。やっぱり強いな。」「もう十分でしょ?行かせてもらうわね。」カタリナはそう言うと、背中を向けて歩き出した。「待って。」「まだ何か?」「私まだやれるよ。もっと遊んでよ。」ミレアは立ち上がっていた。そしてダークリングに祈りを込めている。「カムという男は、あなたがそこまでして守りたい人なの?」カタリナの問いかけにミレアは被りを振った。「私は今、カム様を守るために戦ってるじゃない。楽しくて戦ってるのよ。」「そう。確かにあなたは巫女としての素質は高いわ。でもね。経験が浅い。あの頃の私を見ているかのようなの。」「経験値かぁ。そればっかりはどうしようもないね。」「これから積めばいい。その後にまた相手してあげるわよ。」「だめよ。私はもう決めてるの。自分の死場所はここだって。」「そう。ならもう何も言わないわ。」カタリナはフレアリングに祈りを込めた。「炎剣の舞。」「そうこなくっちゃ。闇剣の舞。」ミレアは闇の剣を持って、カタリナに向かって走る。「フレア。疾風の炎舞。」カタリナは炎の剣を持ったままそう呟いた。次の瞬間、カタリナはミレアの後ろに立っていた。ミレアの右腕を斬り落として。「見えなかった。」「でしょうね。」ミレアは斬り落とされた右腕を見ながら、小さく笑った。「これじゃあ。もうダークリングも使えない。」「それが狙いだからね。じゃあ私は行くわ。殺人の趣味はないの。」「待ってよ。ちゃんと殺してから行って。」「全て終わったら回復させてあげるから、そこまで待ってなさい。」カタリナがそう言うと、ミレアは株を降った。「そんなこと望んでない。ちゃんと殺してって言ってるの。でなければここから先に行かせるわけにはいかない。」「なぜ命を粗末に扱うの?」カタリナが聞くと、ミレアは少し考えてから答えた。「大事に扱っているからこそ、炎の巫女の手で終わりにしてほしいのよ。生きていてもいいことなんてないって分かっているから。」ミレアにも辛い過去があるのかもしれない。カタリナはかつての自分と重ね合わせた。「そう。分かったわ。でも私も急いでいるの。一瞬で終わらせてもらうわ。」「ありがとう。」カタリナは炎の剣でミレアの首を斬り落とした。「私も出会う人が違えばこうなっていたのかもしれないわね。」カタリナはそう呟くと、ミレアの骸に背を向け

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status