翌朝、小鈴は広場の隅に座っていた。 膝を抱え、虚ろな目で地面を見ていた。昨夜と同じ姿だった。眠れなかったのだろう。目の下が暗かった。 秦良玉が傍にいた。 何も言わなかった。ただそこにいた。 アニスが朝食を運んできた。小鈴の前に器を置いた。「食べられそうですか」 小鈴は器を見た。「……少しだけ」 それだけ言った。 アニスは何も言わずに頷いた。◆ セシルは浴場から出てきた後、広場の隅で膝をついていた。 目を閉じ、何かを呟いていた。 祈りだった。 レイナが近づいた。「セシル」 セシルは顔を上げなかった。「……神は、私を見捨てたのでしょうか」 レイナは少し黙った。「見捨てていない」「でも私は……あんな目に……」「お前はまだここにいる」 セシルはレイナを見た。 レイナは視線を外さなかった。「それだけで十分だ」 セシルは唇を噛んだ。 声を殺して、泣いた。 レイナは何も言わなかった。ただ傍に立っていた。◆ 俺は小鈴に声をかけた。「小鈴」 小鈴が顔を上げた。「無理するな。今日は休め」 小鈴は少し黙った。「……申し訳ありません」「謝るな」 小鈴は俯いた。「また……弱いところを見せてしまいました」「弱くない」 俺は少し間を置いた。「あの状況で誰でも同じになる。お前だけじゃない」 小鈴は答えなかった。 だが肩の力が、少し抜けた。◆ 7階の敗因を整理した。 三つあった。 一つ目。ダルダニヤンがサキュバスの魔力に絡め取られた。精神系の魔法への耐性がなかった。 二つ目。セシルが力勝負で負けた。今のレベルでは純粋な筋力差を覆せない。 三つ目。小鈴が色魔師のトラウマ攻撃に崩された。精神防御が必要だ。 だが問題はそこだけではなかった。 7階の対戦相手はランダムだ。次の挑戦で同じ相手が来る保証はない。ダルダニヤンが再びサキュバスと当たるとは限らない。小鈴が再び色魔師と当たるとも限らない。「全員が全方位の耐性を持つ必要がある」 俺は呟いた。 魔法耐性。精神防御。物理耐久。回復手段。 五人全員に対して、それぞれの弱点を補う準備が必要だった。 だが今、セシルと小鈴は戦線を離脱している。 戦える者はレイナ、ダルダニヤン、孫尚香、そして秦良玉の四人だけだ。 7階は五つの闘技場がある。四人では一戦
Dernière mise à jour : 2026-07-02 Read More