3層目の空気はまた違った。 暖かかった。松明の数が増えていた。廊下が広くなった。 だがモンスターがいなかった。「……静かすぎる」 レイナが言った。「看破は反応しているか」「していません。モンスターもいない」 小鈴が辺りを見回した。 廊下を進んだ。曲がった。また進んだ。 行き止まりだった。 だが扉ではなかった。 広間だった。◆ 広間の中央に、椅子があった。 そこに座っていた。 人だった。 長身の男だった。白い衣を纏っていた。目を閉じていた。顔が整っていた。歳は分からなかった。 頭上に表示が出た。【番人】 NPCだった。「倒せるか」 俺は小鈴に聞いた。「看破が……反応していません。弱点が見えません」「攻撃は通らない、ということか」「恐らく」 番人は目を閉じたまま動かなかった。 だが口が開いた。「来たか」 声は穏やかだった。「通りたければ、私を満足させろ」 広間が静まりかえった。◆ 孫尚香が前に出た。 誰も止めなかった。 孫尚香は番人を見た。番人は孫尚香を見た。「私がやる」 声は静かだった。 レイナが横から囁いた。「……本当にいいのか」「ええ」 孫尚香は振り返らなかった。「7階で、ただ組み敷かれた。今度は自分から挑む。それだけのことです」 全員が後ろを向いた。◆ 孫尚香は番人の前に静かに進み出た。 7階で酔わされて、何度もイカされた記憶が脳裏をよぎる。あの時はただ組み敷かれる
Dernière mise à jour : 2026-07-10 Read More