All Chapters of 無価値スキル【価格表示】が覚醒したら、ガラクタで最強になった。: Chapter 21 - Chapter 28

28 Chapters

第21話 ソレゾレの目標

 人は、本当にどうしようもなくなると静かになるらしい。 泣き喚いたり、暴れたり、そういった元気すらなくなるんだろう。 豪華なスイートルームの天井を見上げながら、俺は浅く息を吐く。 柔らかいソファ。高そうな絨毯。夜景の見える大窓。 俺なんか、一生縁がないような場所だ。 なのに。その全部が、棺桶の内装のようにしか見えなかった。 撃ち抜かれた膝が、心臓のように脈打っている。 ズクン。ズクン。 生きていることを、痛みで教えてくる。「…………」 部屋の空気は重かった。 カグヤは壁にもたれたまま目を閉じていた。 時折、悔しそうに拳だけが震えている。 ミザールとの戦いで受けた傷も、まだ全然癒えていない。 ミリスも無言だった。 何を考えているのか、それとも何も考えられなくなっているのか、俺には分からない。 そして――。「んっ、んっ……ぷはぁ~」 一人だけ。本当に一人だけ。 いつも通りの顔で酒を飲む奴がいた。 この人は、本当に……。「なに呑気に飲んでんだよ!」 気付けば俺はそう吐き捨てていた。 思ったよりも声が響いた。ミリスとカグヤが、ビクッとこちらを振り返る。 けれど、ヴェルカは何食わぬ顔でグラスのワインを飲み干した。「まあ落ち着けよクラド。焦ったってどうにもならねえんだ」 休んでろ。とまでは言わなかったが、ひらひらと振った手をツマミの皿へ伸ばす。 焦ったって無駄。そんなこと、頭では分かっている。 実際、俺たちが受けた傷は深い。 立ち上がるだけで膝が軋む。 カグヤだって、まだまともに呼吸すら出来ていない。「でも、明日だぞ? それにヴェルカ一人でどうにかできる問題じゃないだろ」「それはそうだな。流石の私でも、一人でカグヤの貨物を落札するのは難しい」「じゃあ――」 と、身を乗り出した俺に手を伸ばし、言葉を遮られた。「まさかクラド、この私がタダで諦めると思ってんのか?」 言って、ニヤリと笑う。 しかしその目だけは笑っていなかった。「気持ちは分からなくもねえけどさ」 そう言いながら、ヴェルカは入口を一瞥して、大きな舌打ちをした。 部屋の外では黒服が待機している。 俺たちの監視役、といった所だろう。「一発ぶん殴りて
last updateLast Updated : 2026-07-02
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第22話 遊び遊ばせ、アナタを喰う

 夜天競売会まで残り三時間を切った。 部屋の空気は、昨日よりずっと重い。 時間というのは不思議なもので、待っている時は長いくせに、終わりが近付くと急に足が速くなる。 それが死刑執行の時間なら、尚更だ。 ガチャリ、と。ノックもなしに扉が開かれた。 入ってきたのは、黒服だった。 許可を求める必要もない。 ここは客室であっても、俺たちの部屋じゃないからだ。「ジェーン様、こちら夜天競売会の招待カードでございます」 丁寧な口調だった。 けれど歓迎されている気はしない。 まるで処刑台へ案内する看守みたいだった。 ヴェルカが封筒を開くと、中から黒いカードが現れた。「ほぉ、今年はデザインが凝ってんなぁ」 思ってもないことを言いながら、満面の笑みを黒服に向ける。「それと再度お伝えいたします」 黒服は前置きをして、俺たちを一瞥した。 サングラス越しに、ナイフのような視線が胸を突き刺す。「どのような理由であれ、部外者の侵入が確認された場合――即刻始末いたします」 始末。本当に便利な言葉だと思った。 殺す。たったの二文字を、ずいぶん綺麗に言い換えたものだ。 黒服はそれ以上説明しなかった。 いや、説明する必要がなかった。「物騒だねえ、相変わらず」 ヴェルカは黒服の襟元を整えるように手を伸ばした。 次の瞬間には、その指が胸ポケットから離れている。 金属の触れ合う小さな音だけが残った。「でもよォ、私の母性本能が子供は遊ばせるべきだと叫んでんだ」「……何が言いたい?」「カジノで遊ばせるくらいは見逃してくれよ」 黒服の眉がほんの少しだけ動いた。 再び俺たちを一瞥してから、「カジノへの入場自体は問題ありません」 男は胸ポケットに手を当てながら続ける。「ただし、万が一問題が発生した場合、責任は全てジェーン様に」 そう言い残すと、そのまま部屋を後にした。 扉が閉まり、静寂が走る。「……今の」 俺は黒服が消えた扉を指した。「賄賂じゃ――」「交渉成立、だな」 俺の言葉を遮って、ヴェルカは悪びれもせずに笑った。「ヴェルカ殿、本当にこれで大丈夫なのですか?」「大丈夫、心配するな」 カグヤの問いに肩を竦めながら、
last updateLast Updated : 2026-07-02
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第23話 運はワタシに味方する

 ラグナは指先でチップを弄びながら、巨大ルーレットを振り返った。「それじゃあ、早速始めましょ?」「その前に、一つだけ聞かせてくれ」「なんでもどうぞ?」「このゲーム、本当にただのルーレットなのか?」 俺が睨むと、ラグナは楽しそうに肩を震わせた。「疑り深い男の子は嫌われるわよ?」 余計なお世話だ。「仮にもここはアンタの領域。事前に何かイカサマを仕組んでいたっておかしくないだろ」「まあ、不安に思われても仕方ないわよね」 クスクスと笑ってから、ラグナは軽く二回、手を叩く。 すると突然、仮面を被った屈強なスーツ男が現れた。「私がこのゲームの進行役を担当いたします」 撫で付けたオールバックの頭を深々と下げ、男はゆっくりと口を開く。「ルールは簡単。先に全てのチップを失った方が敗北。原則相手と同じマスへ賭けることはできません」「……それだけなのですか?」 カグヤが訝しむと、男は「ええ」と頷いた。 いかにもラグナと裏で組んでいそうだが、彼女は男に見向きもしない。「但し、いくつか罰がございます」「ぺなるてぃ?」「禁止事項ってことだよ」 首を傾げるミリスにそう説明しつつ、男の言葉を待つ。「まず、この卓から半径二メートル――目安としてビリヤード、ダーツ、カードゲームエリアから出た際、罰としてチップ十枚没収いたします」「随分と軽いんだな」「途中で怖じ気付いて逃げる子が多いもの」 ラグナは笑う。その微笑が妙に気に障った。「次に、賭けた後のマスの変更をした場合、罰として三十枚没収いたします」 抑揚のない声で男が告げる。 一度決めたら移動はできない、ということだろうか。 だがラグナは、ワイングラスを揺らしながら企みの微笑を浮かべている。「そして最後。あちらのルーレットでございますが――」 と、男は奥の巨大なルーレットを見やり、「物理的な干渉を行った場合、罰として百枚没収いたします」「ひゃ、百枚⁉」「ゲームの進行を妨げる行為、故に最も重い罰を課させ
last updateLast Updated : 2026-07-02
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第24話 アナタが欲しいの

 ――他人の幸運を奪う。 ラグナは確かにそう言った。 けれど、運なんてそんな曖昧な説明だけで納得などできなかった。「運が良くなるってことか?」「いいえ、もっと単純よ」 ラグナは笑い、不気味に口を開く。 まるで恋人へ話しかけるような優しい口調で。「アナタたちが不幸になるの」 言いながら鉄扇を開く。 同時に俺は床を蹴り、槍の要領でキューを放った。 先端は確かにラグナの鳩尾を捉えていた。 あと数センチ――そのはずだった。 足裏に硬い感触が走る。 カチリ。 いつの間にか転がっていたチップを踏み抜き、身体が僅かに傾いた。「ッ⁉」「あら、危ないわねえ」 ラグナは鉄扇で口許を隠した。 驚いたような声音だったが、その紫色の瞳には欠片ほどの焦りも浮かんでいない。 まるで最初から結果を知っていた観客みたいに。 俺が外すことも。 この攻撃が届かないことも、全部。「そんな長いものを振り回していたら、怪我をするじゃない」 恍惚とした表情を浮かべ、ラグナは鉄扇を振り下ろす。 銀閃。瞬きする暇もなく、キューはバラバラに切り刻まれていた。「それじゃあ――次はどこを壊そうかしら」 鉄扇の先が、俺の首筋をなぞる。 恋人に触れるみたいに優しく。 なのに背筋には冷たいものが走った。「手足からがいい? それとも、その生意気な目から?」「どっちも、嫌だッ!」 俺はその場から逃げ出すように床を蹴る。 そしてダーツに興じていた淑女から矢を拝借した。「すみません、借ります!」 《競技用ダーツ:500G → 魔鋼穿孔針:8,000G》 三本同時に投げ放つ。 顔、喉、胸。 三方向から放たれた鋼の針は、獲物を追う猛禽のような速度でラグナへ迫った。  避けられるはずがない。 なのに。 ――ガシャン。 頭上で甲高い音が響く。 シャンデリアを支えていた鎖が突然外れ、垂れ下がった装飾が針に絡み付いた。「なっ――」 三本の軌道が同時に逸れる。 誰一人傷付けないまま。 まるで最初から
last updateLast Updated : 2026-07-02
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第25話 運がないなら、オレは実力を掴む!

 この後の話は、後でミリスとカグヤから聞いた話だ。 俺がルーレットの卓から飛び出したせいで、所持枚数は残り十枚。「クラド殿は、必ず帰ってきます」「この状況でも信頼できるの? どう見たって、二人を身代わりに逃げたとしか思えないわ」 ラグナは目を細め、クスクスと声を殺しながら嘲笑する。 皮肉だが、そう取られても仕方がなかった。 きっと周りで倒れていた客たちも、同じ状況で絶望して逃げた結果、こうなったのだろう。 それでも、ミリスとカグヤは希望を捨てなかった。「クラドは、そんな人じゃない」「ミリスちゃんまで。あんな意気地なしな男、やめた方がいいわよ?」 話もそこそこに、ラグナはすぐさまチップの山を卓に載せる。「二番に百枚」 またしても迷いなく予想する。 しかしこれまでとは違って、カグヤたちは即決することなどできなかった。 理由は至極単純だ。 今までは、彼女が賭けた数字に便乗して、それに合わせた色か偶奇に賭けていた。 けれど、ラグナが途中で予想を変えて来た以上、同じ手はもう使えない。 かといって、賭けなければ負けを認めることになる。「……八方塞がり、ですね」 どれだけ考えても突破口が見つからない。 カグヤでさえ、勝ち筋を描けなかった。「でも、やるしかない」 ミリスは震える指でチップを押し出した。 置いた先の数字が何だったのか、彼女自身も覚えていなかった。「ミリス殿?」「せめて、クラドが帰って来るまで持ち堪えなきゃ」 ラグナの予想は絶対。負け確実の捨て戦。「あらあら、ここで大逆転を狙わなくて本当にいいの?」「生憎、身を滅ぼす賭けに出るほど早計じゃありませんから」「ふぅん、可愛くないの」 徐に足を組み直し、ラグナは深いため息を吐く。 果たして結果は、言わずもがなだった。「結果は二番。ラグナ様、八百枚の獲得です」 追い打ちをかけるように、ディーラーが告げる。 こうして残りは五枚。最初の状況に逆戻りしてしまった。 もう後がない。 たとえ一枚ずつ賭けたところで、結果は同じこと。「もう終わり? 子供のわりに、結構頑張ったんじゃないかしら?」「…………っ」 カグヤの額から冷や汗が垂れる。 
last updateLast Updated : 2026-07-02
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第26話 ソノ名、ゼロ

 ラグナはしばらく、呆然と掌を見つめていた。 まるで、そこにあるはずの何かを探すように。 その視界の先で、倒れていた客たちが次々と目を覚ましていく。 失われていた価値が戻っていく。 《貴族令嬢:0G → 30,000,000G》 《魔道商会長:0G → 2,620,000G》 《王国騎士団員:0G → 1,980,000G》 価値は俺にしか見えないが、ラグナは悟ったのだろう。 肩から力が抜け、彼女の口から自嘲するような笑いが漏れた。「……負けたわ」 ラグナは深く息を吐く。 その息には、負けた悔しさが滲んでいた。 それでも、彼女の顔はどこか晴れやかだった。「……約束は約束よ。何でも言うことを聞いてあげる」 言って、ラグナは床へ背を預けた。 手足を大の字に開いて、ゆっくりと目を瞑る。「煮るなり焼くなり、ペットにするなり好きにしなさい」 それはそれで、潔すぎてちょっと不気味だった。 けれど俺は、持っていたキューを棄てて、その場にしゃがみ込んだ。 まだ膝がビリビリする。 痛みを押し殺して、ゆっくりと口を開く。「夜天競売会の会場、その裏口の鍵をくれ」 俺の言葉に、ラグナは目を見開いた。「それと、裏口まで案内してほしい」「……アナタ、本気で言ってるの? 私はアナタたちの敵なのよ?」「何でも言うこと聞くって約束だろ?」 当然のように答えると、ラグナは呆れたように額を押さえた。「普通お金とかじゃないの? そもそも、そんなこと言われて易々渡す奴が――」 その時、後ろから慌ただしい足音が聞こえてきた。「クラドー!」 振り返ると、ミリスがルーレットの盤上を走ってこちらに駆け寄ってくる。 続いてカグヤも、スカートの裾を押さえながら盤上に降りてきた。「無事で良かった」「いや、結構痛い。膝が……」「それは自業自得です。クラド殿はもう少し、計画的に無茶をしてください」「なんか冷たくない⁉」「作戦とはいえ、私たちを冷や冷やさせた罰です」 早速覚えた言葉で刺された。ちょっと傷付く。 ミリスは子供をあやすように俺の膝を撫で、クスクスと笑っている。「あのー、痛いからやめて」 そんな
last updateLast Updated : 2026-07-02
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第27話 惨劇の華はソコに咲く

 ――パチ。パチ。パチ。 その音が、いつまでも鼓膜にこびりついて離れなかった。 ゼロと名乗った男は、ナイフを軽く弾ませながらラグナへ歩み寄る。「さて。裏切り者には、相応の罰が必要だよね」「やめ――」 ラグナが声を上げるより前に、ゼロの指が動いた。 何も握っていない。何も振っていない。 それなのに、ラグナの右腕が突然、真横に裂けた。「ぁああああッ‼」 悲鳴が響く。 血が壁に飛び散る。 ラグナは腕を押さえて転がりながら、それでも声だけは抑えようとしていた。「面白いね、その我慢」 ゼロは無感情に笑う。 まるで虫の足をもぐように、何の感慨もなく。「でももう少し、苦しむ顔が見たいな」 次の瞬間、今度はラグナの足が裂けた。「あ――っ‼」 その光景に、頭の奥で何かが弾けた。 ガキン、と音がするくらい強く、歯を噛み締める。 考えるより先に、足が動いていた。「――やめろ!!」 拳を握って、思い切り叩き込む。 ゴッ――。 手応えがあった。確かに、殴ったはずだ。 だがゼロは、表情一つ変えなかった。「……今、ぼくのこと殴った?」 殴られた頬を指先でなぞりながら、ゼロは首を傾げた。 本当に不思議そうだった。 怒りも敵意もない。 道端で犬に吠えられた人間の方が、まだ感情を動かす。 そう思うくらいに、表情には感情の色がなかった。「ミリス、カグヤ……今だ!」 叫ぶと同時に、二人が動く。 ミリスの周囲で、瓦礫が一斉に浮き上がる。「――飛べッ!」 砲弾のように加速した瓦礫が、ゼロへ殺到する。 同時に、カグヤの札が舞った。 《斬》 紫の斬撃が空気を裂き、ゼロの足元から這い上がる。 完璧な挟撃――そのはずだった。 しかしゼロは、軽く跳んだだけだった。 まるで散歩でもしているように、瓦礫の隙間を抜け、斬撃の上を踏み越える。 今の連撃を、紙一重で、しかも片手すら使わずに避けた。「ねえ、どうして?」 ゼロは本当に不思議そうな顔をしていた。 怒っているわけでもない。 挑発しているわけでもない。 まるで子供が当たり前の疑問を口にするみ
last updateLast Updated : 2026-07-02
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第28話 コレがワタシの恩返し

「クラド、カグヤ。ここは任せて、先に行って」 ミリスの言葉を聞いた瞬間、二人は何を言われたのか理解できず、ただ呆然と彼女の顔を見返した。 ここへ残るということは、三人がかりでも勝てなかったゼロを相手に、たった一人で時間を稼ぐという意味に他ならない。「それはダメだ!」 真っ先に声を荒げたクラドは痛みも忘れたように身を乗り出し、今にも倒れそうなミリスの肩を掴もうと手を伸ばした。「そんなの絶対ダメだ! お前一人残ったら――」「クラド」 だがミリスが静かに名前を呼ぶと、それだけで続きの言葉は喉の奥へ引っ込んでしまう。「時間がないの」 ミリスは裏口へ視線を向けた。 遠くで鳴り続ける鐘の余韻が、まだ地下倉庫の空気を震わせている。 夜天競売会は、既に始まっている。「でも!」「それに、今下手に動くのも悪手です」 今度はカグヤが口を開いた。 普段通り落ち着いた声だったが、その指先は小さく震えている。「この空間には奴の能力がまだあります。下手に移動すれば、会場へ向かうより先に切り刻まれます!」 カグヤの言葉に反論できる者はいなかった。 実際、こんな地雷原の中を駆けるのは、無茶というより自殺行為に等しい。 それでもミリスだけは首を横へ振った。「だからミリスが残る」「いけません」 即座にカグヤが否定する。 その反応は、いつもよりずっと強かった。「ミリス殿が残る必要なんてありません」 カグヤは俯き、唇を強く噛み締める。 そして、そっとミリスの肩に手を触れた。「貨物なんて、もうどうだっていいんです。私の目的なんかより、ミリス殿の命の方がずっと大事です!」 その場に沈黙が落ちた。 ミリスは目を見開く。「だから、お願いです」 カグヤはゆっくりと顔を上げた。 いつも冷静な紫の瞳が、今だけは少し潤んでいる。「一緒に、乗り切りましょう」 その言葉に、ミリスは小さく目を伏せた。 少しだけ。 本当に少しだけ、迷うように。 けれど次の瞬間には、もう答えを決めていた。「やっぱり、二人とも優しいね」 そう呟いた瞬間、クラドたちの身体がふわりと宙を舞った。「おいミリス! やめろ!」「ダメです! 降ろしてください!」 クラドが必死に腕を伸ばす。 カグヤも空
last updateLast Updated : 2026-07-02
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