「システム――私は所有者ナンバー12138の娘です。この世界からの離脱を申請します」真冬の夜、暖炉の炎がぱちぱちと音を立て、白い壁に揺れる影を残す。伊賀崎千春(いがさき ちはる)は、窓の外で降り積もる雪を見つめながら、首元のシルバーのネックレスを静かに外し、小さく呟いた。しばらくすると、静まり返った寝室に無機質な機械音が響いた。「申請を受理しました。処理を開始します。15日後、あなたを本世界から離脱させます」その声が消えた瞬間、手のひらに乗せていたはずのネックレスが、跡形もなく消えていることに、千春は気づいた。そのとき、テレビではちょうど伊賀崎透真(いがさき とうま)のインタビューが始まっている。「今回発表された新作ジュエリーシリーズ『スプリング・ラブ』ですが、この名前には特別な意味があるのでしょうか?」司会者の問いに、メインゲストの透真は柔らかく微笑む。その眼差しには、惜しみない愛情が宿っている。「『スプリング』はすなわち『春』。妻の名前から取っています。このシリーズには、『一生彼女だけを愛し続ける』という想いを込めました」あまりにも自然な惚気に、司会者は思わず頬を緩める。「お二人は初恋同士で、大学卒業後、すぐにご結婚されたそうですね。結婚4周年を迎えようとした今も変わらず仲睦まじいご夫婦ですが、その秘訣は何でしょう?」「秘訣ですか……強いて言うなら、何でも妻を優先することですね。連絡は必ずすぐ返しますし、毎日何かしら喜んでもらえることを考えるようにしています」その答えに、会場から羨望のため息と歓声が一斉に上がる。「ああ、神様、こんなに一途な旦那さん、私にもください!」「伊賀崎さんみたいな男って本当に珍しい!私も伊賀崎さんの心を攫ってしまいたいわ!」いつまでも鳴り止まない歓声を聞きながら、透真は穏やかに笑って言った。「すみません。私の心は、いつだって千春だけのものです」割れんばかりの拍手が会場を包み込み、インタビューは終了した。透真の姿が消えるのを見届けると、千春は静かにテレビの電源を切り、自嘲するように口元を歪めた。――「私の心は、いつだって千春だけのものです」って?昔は、そうだったかもしれない。二人は幼なじみとして育ち、15歳で恋人になり、22歳で結婚した。制服を着ていた頃
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