神代涼真(かみしろ りょうま)が全てを失ったとき、私は逃げ出した。彼が再起を果たしてから、毎年欠かさず訪ねた。一年目ーー娘を連れて行くと、涼真は100万円を投げつけた。「消えろ」と。二年目ーー末期がんの診断書を手に現れると、涼真は一瞥もせず、200万円を突きつけた。「二度と来るな」と。三年目、四年目ーー私は彼の望み通り、消えた。そして五年目。涼真のもとに、娘から電話がかかってきた。「ママ、ごはんいつ持ってきてくれるの?おなかすいちゃった」施設から抜け出してきた娘・久世恩美(くぜ めぐみ)は、私が使っていたスマホを探し出し、充電してから、私がよくやっていたように電話をかけようとしていた。病気が悪化してからというもの、Uber Eatsで一番安いメニューしか頼めなかった。配達員はいつも私の注文を後回しにした。恩美がお腹を空かせると、私は配達員に電話して催促したものだった。だから恩美は、電話をかければ何か食べられると思っているのだ。そして今、私の真似をして緊急連絡先の人物——涼真へと電話をかけた。何度も、何度も。薄明かりの画面が、幼い顔を照らしていた。止めようとしたが、手は恩美の体をすり抜けてしまう。少し情けなかった。三年も経つのに、どうして自分がただの魂だということを忘れてしまうのだろう。「恩美、もうかけないで。あの人は出ないから」きっと涼真は今でも、私のことをただの金の亡者だと思っているのだろう。「テーブルの上の小箱を開けてみて。中にお金を入れてあるから」涼真から受け取ったお金のほとんどは、恩美が学校に通い始めた後の生活費として、信託に預けられた。箱にはいざというときのために、2万円入れてある。テレパシーが通じたのかどうか、恩美はその小箱を抱き上げた。そのとき、受話器の向こうから澄んだ低い声が聞こえてきた。「朝妃(あさひ)?」はっとして画面を見ると、通話はすでに1分以上続いていた。「消えろって言ったよな?」穏やかで、相変わらず冷酷な声だった。指先をきつく握りしめながら、恩美の目の前で涼真にそんなことを言われて、少し気まずかった。お互いの存在を知らないとはいえ。嘲るような口調が続く。「また金が欲しいのか?いいぞ、頭でも下げに来いよ」恩美は嬉しそうに
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