「あとで、そちらの部屋へ行く」部屋の前に着くと、セオドアがローティシアの表情を探るように見つめてそう告げた。胸の内を読まれたようで、思わず息を呑む。「はい、承知しました」膝を折って一礼し、自室へ戻る。扉を閉じると、思わずその場にへたり込みたくなったが、メイアがそばにいるのでそうもいかない。用意された夜着に袖を通し、ガウンを羽織ってソファに身を沈めた。前回の記憶が蘇り、下腹が重く引き攣れる。どうすれば、耐えられるのだろう。あんな激しい興奮に、声を出さずただじっとしているなんて……そうだ、「祈りの書」を心の中で暗唱していれば、平静を保てるかもしれない。最近読んでいなかったが、今夜のために改めて目を通しておこう。荷物の中から、教会でもらった古びた一冊を取り出す。「奥さま、お茶をお持ちしました」メイアが静かに声をかけ、ソファテーブルにカップを置く。「ありがとうございます……」また礼を言ってしまった。けれど、メイアは何も言わず、穏やかに微笑んで膝を折る。その姿に、自分はやはり淑女向きではないのだと、ひしひしと感じる。祈りの書を開き、「救いの女神”アエラ”への祈り」の章に目を落とす。---慈しみ深き女神よ すべての命に光を与える御方よ あなたの御心は大地に満ち 風に、木々に、水の流れに宿るあなたに選ばれし使徒たちは―――---この祈りを心の中で唱えていれば、きっと落ち着いて臨めるはず。淑女らしく振る舞うことができないのなら、せめて求められている務めくらいは、まともに果たさなければ。◇◇◇セオドアは夜着に着替えた後、しばらく隣室の扉の前で逡巡していた。「行く」とは言ったものの、彼女は怖がっているのではないか——だが、このまま何もなかったことにはできない。それに……正直なところ、旅の間、初夜の記憶が頭から離れた日はなかった。泣かせてしまった彼女の表情、それでもシーツに広がっていた銀の髪、触
Last Updated : 2026-07-29 Read more