十二月に入ると、ネクストリンク本社を包む空気は、事件の渦中にあった頃とは明らかに違うものへ変わっていた。 裁判が終わった。 判決が出た。 桐谷健吾、黒川亮介、青柳拓人には実刑判決が言い渡され、西岡大輔、山城直人、小田切修には執行猶予が付いた。 別件で審理されていた高瀬美咲も、特別背任罪で執行猶予付きの有罪判決を受けている。 ニュースだけを追っていた人間から見れば、それで一つの事件が終わったように見えるかもしれない。 逮捕された。 起訴された。 法廷で争った。 判決が出た。 物語なら、そこで幕を下ろすこともできる。 しかし、高瀬悠真は一度もそう考えなかった。 裁判は区切りであって、終点ではない。 ネクストリンクにとっては、壊された信用を作り直し、事件がなくても必要だったはずの統治を、事件を経験した会社としてさらに強固なものへ組み直す仕事が始まっただけだ。 社員に対して。 取引先に対して。 金融機関に対して。 監査法人に対して。 そして、将来この会社の株式を買うかもしれない投資家に対して。 自分たちが何を失い、何を直し、今はどのような会社になっているのかを、数字と制度で説明しなければならない。 一方、桐谷たちにとっても判決は終点ではなかった。 刑を受ければ損害賠償が消えるわけではない。 会社へ金を返せば、税金が消えるわけでもない。 離婚すれば養育費がなくなるわけでもない。 生活費も必要になる。
Huling Na-update : 2026-08-25 Magbasa pa